NO.84 廣文館 広島駅ビル店(広島市南区)
さて、廣文館金座街店の藤森さんから紹介された広島駅ビル店。
ここも金座街同様、女性にシフトしたお店だ。だが、お店が新しいこともあって、お洒落度が高い。入ってすぐのところに、廣文館の売り上げベスト10が飾られているのだが、その什器がガラスでできている。そこに置かれているだけで、本が2割り増しセンスよく見えますよ。お店のロゴ周りも黒字に白でセンスがいいし、売り場の一角でお洒落な雑貨を売っているのが、女ごころを引き付ける。
雑誌を担当されている桑原太加彦さんに伺うと、階下に女性ファッションの店が集中しているだけに、やはり若い女性客が多いのだそう。売れ筋は、やはり付録つきの女性雑誌。ずらりと並んで壮観です。自己啓発ものや心理分析ものもやはりよく売れるらしい。だがここは新潮クレスト・ブックフェアが成功したお店だ。ミーハー的なフリのお客様だけでなく、ちゃんと本好きの顧客もついているのだろう。文芸書売り場も充実しているし、話題書もただの売れ筋だけでなく、バラエティに富んだ内容のものを紹介していました。
そして「ここならではのヒットは?」
と、尋ねたところ、紹介してくださったのが、角川文庫の「長い腕」。ひときわ目立つ大きな赤いPOPと手作りの帯を巻いて平台で展開されている。第21回横溝正史ミステリ大賞を受賞した作品だが、世間的なベストセラーというのとはちょっと違う。04年、つまり6年も前に刊行されているものなので、こちらのお店の発掘本といってもいいだろう。廣文館ならではの紹介をしていこう、ということで仕掛けた本だそうだが、この店が、日本で一番売ったお店、ということになるらしい。その仕掛け
人がほかならぬ桑原さん。なかなか鋭いところを突いてくる。ほかに
も、06年の「ルームメイト」(今邑彩)「眩暈を愛して夢をみよ」(小川勝巳)「出口なし」(藤ダリオ)といった文庫が大きく展開されている。ほかではあまり見ない個性的なラインナップだ。
実は文庫の方が書店もオリジナルな展開を仕掛けやすいと思うのだが、新刊が多すぎるせいか、実はどこのお店でも思い切った展開はしにくいようだ。新刊書話題書だけで並べるので手一杯なのだろう。そのため文庫売り場はどこの店も同じ、という印象になりがちだが、ここの平台は面
白かった。でもそれを支えるのは、やはりお店の広さとお客さんの感度のいいおかげなんだろうな、と思う。
こんなお店が駅ビルにあるというのは、広島、なかなかあなどりがたし。便利な場所にあるお店はベストセラーをただ並べているだけ、というこちらの思い込みを気持ちよく裏切っている。楽しくなって、つい河出書房新社の「萩尾望都特集」を買ってしまいました。いえ、この本なら無理にここで買わなくても、東京のそこここのお店に
も売ってることは知ってるけど。でも、買いたくなるお店ってなんかあるよね。それって大事だよね。荷物が重くなるのは困るんだけど。
そんなわけで、ここを最後にしたおかげで、終わりよければすべてよし、という気持ちで広島営業を終わることにした。
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