関西の書店

NO.77 海文堂書店(神戸市中央区)

Img_1132 海文堂。
音だけで聞いたら、怪文堂。いや快文堂でもいいが。
ジュンク堂と並んで、神戸では超有名書店である。
といっても、私が知ったのは、名古屋の正文館のキュートな女子書店員、清水和子さんに教えてもらったから。「私の理想の書店なんです!」と、目をきらきらさせながら言われた日には、行かないわけにはいかないでしょう。行く直前に清水さんにメールしたら、さっそく返事が来た。「海文堂さんはとても素敵な書店さんだと思います。店内にいると嬉しくて羽がバタバタする感じです」だって。なんて可愛いんだ、清水さん。
んなわけで、清水さんをバタバタさせる海文堂の正体を見極めるべく、海文堂に乗り込む。

Img_1134 アーケードのある元町商店街、街の本屋というにはちと規模がでかいが、まあ一見、普通の外観。だが、一歩足を踏み入れると、何か空気の色が違う。全体がセピア色がかっている。
これ、なんだろう。本とか本読みの念が長い年月の間に結晶化して空気中に漂っている感じ。名古屋のちくさ正文館とかでも同じ匂いがあった。お洒落な新刊書店では絶対出せない空気感。むしろ古本屋のそれに近い。

Img_1135_3 で、清水さんから紹介された平野義昌さんと、店長の福岡宏泰さんにご挨拶をする。で、話を伺おうとすると、平野さんからばさっと資料一式を渡された。
こちら、取材が多いので、よく聞かれる質問を文章にまとめてあるのだ。せっかくだから、以下に一部引用する。

  ・1914年、海事書の専門出版社として創業。その後、海事専門の小売書店を経て、総合書店に。
・海文堂通信として「月刊海会(カイエ)」を発行。A41ページ、両面印刷。3000部発行。4月号で通巻81号。
・「海会」別冊として「神戸と本」をテーマに、年2回「ほんまに」という雑誌を発行。500部。通巻11号。
・1階に「神戸の本」コーナーを充実。商業出版以外のもの、阪神・淡路大震災を語り継ぐ棚も継続。
・2階の海事書ゾーンに「港町グッズ」コーナーを精力的に展開。
Img_1152_2 ・児童書コーナーの品揃えと担当者の児童書に対する熱意は、他書店と一線を画す。
・2階奥のギャラリースペース”Sea Space”で、随時イベントを開催。
・神戸の古本屋とタッグを組み、店内に3つの古本屋の棚を常設。多数の古本屋の協力を得て、「海文堂の古本市」も定期的に開催。
・毎月、スタッフが入れ替わりで「海文堂オリジナルブックフェア」を行う。

Img_1157_2 あえて、海文堂の活動についてのみ引用したのは、これを見ただけで海文堂のスタンスがわかると思ったから。普通に本を仕入れて売る、以上のさまざまな試みをやっている。おそらくここまでの活動をしている書店は、全国でも類を見ないだろう。
あ、これ以外にも、もちろんHPはやっていますし、

http://www.kaibundo.co.jp/honyanome/honyanome.htm

Img_1173_2 そのほかにも、平野さんはお手製のフリーペーパー「週刊奥の院」も出しておられます。こちら手書きでA4両面コピー。その週目に付いた本を平野さん流の独特の語り口で紹介するもの。紹介というよりエッセイのようだ。平野さん曰く「すけべ通信」。でも、そんなにやばいペーパーではありません。新刊情報に、ちょっとだけ平野さんの趣味丸出しの本コーナーがあるだけで。「今週のもっと奥まで」って、コーナータイトルもいかしてる。
それから、この平野さん、海会に連載した「本屋の眼」をまとめた同名タイトルの本をみずのわ出版から上梓されている。その番外編とも言うべき「神戸本屋漂流記」を同社のHPに連載している。

http://www.mizunowa.com/soushin/honya.html

どんだけ書くのが好きなんだ、平野さん。私より書いているんじゃないか。実に精力的に活動を行っている書店だし、スタッフでもある。
まあ、これだけで圧倒されてしまって、もう聞くことなどなくなってしまった感じ。それに、この平野さん、ひと癖もふた癖もある方だから、こちらが投げた質問に、ストレートでは返してこないしな。
というわけで、質問は早々に切り上げ、店内を案内してもらうことにした。

Img_1185 まあ、そこここにこだわりが詰まっている。
まず、入ったところに、「中村佑介グッズと本フェア」として、セーラー服の少女が印象的な兵庫出身のイラストレーター中村佑介の画集やトランプ、絵葉書を置いたコーナーがある。
休刊の危機にある古書専門誌「彷書月刊」を応援するためのバックナンバーのコーナーがある。
「本の雑誌」の編集スタッフがお奨めする日記本フェアをやっている。
「海文堂店長身辺整理の蔵書放出100円均一フェア」もある。
柱のところのImg_1141 書棚はちんき堂という古本屋の本が並んでいる。上記5つのことが、入り口からわずか3、4メートルくらいまでのところで、展開されているのだ。
古本コーナーがある、というのは最初にいただいたレジメにも書いてあったけど、古本屋が提供した本だけでなく、スタッフが持ち込んだものもこっそり隅っこに隠れて売っているんだそうな(店長のは、堂々と出していましたけど)。
もちろん、新刊書、話題書は普通のベストセラーも並んでいるし(平Img_1140 野さんの「本屋の眼」も、もちろん新聞の切り抜きといっしょに平積みで飾ってある)、売れ筋は「1Q84」だったりもするけれど、週間ベスト10の2位に「こうべ文学散歩」(神戸新聞総合出版センター)が来ていたり、梅原猛の「葬られた王朝」(新潮社)や井上ひさし「ふふふふ」(講談社)もランキングに入っていたり。新書とはいえ岩波が3冊も入っているんだな。岩波書店の品揃えがいいことも、この店の自慢のひとつだったりする。このベストセラーリストからわかるように、お客は男性の中高年が多いのだが、
「清水さんではないですけど、意外と若い女性のファンもうちは多いんですよ」
と、ちょっと得意げな平野さん。わかるわかる、文系女子の心をひきつけるような知的な雰囲気があるもんな。レトロな感じも女子好みだし、女子の好きな児童書 のコーナーも充実しているし。
Img_1156 女子ウケはどうかわからないが、音楽・映画・芸能関係の本は、文庫も単行本もいっしょに並べた文脈棚。文庫まで混ぜて、というのはちょっと珍しい。でまあ、音楽についてだけいうと、妙に60年代70年代が妙に充実している。はっぴいえんどだの、岡林信康、友部正人、吉田拓郎といっしょに、クレージーケンやECDの本がいっしょに並ぶ。どっちにしろ、渋い選定だが。忌野清志郎が平積みになっているのはともかく、高田渡関係が2冊も平になっているのはなぜ? いまだに追悼特集が続いているのか。そりゃ、60年代フォークをレスペクトする人には、絶対的な存在の人ですけど。
Img_1144 ほかにも、天井や壁のところに来店した有名作家のサインがあったり、古本コーナーとか、神戸本コーナーとか、ちょっとしたところに、オリジナルなコーナーがあるので、見ていて飽きない。もちろん、ふつうに棚に並んでいる本だって面白いし。各棚、きっちり担当者がいて管理されているからこその、ユニークな品揃え。へー、こんな本があるんだ、という発見も多く、時間が経つのを忘れる。いろんな説明の言葉よりも、幾多の活動よりも、この棚こそが海文堂の存在そのもの。
あ、2階には海文堂の海文堂たる由縁、海事書専門コーナーもあるし、ギャラリーもあるし。これでカフェとトイレが併設されていれば、丸一日、いられるだろうな、と思う。
とにかくもう、圧倒的な存在感、圧倒的な棚。書店の決まりごとなど取っ払ってしまったような自由さ。
「いえ、うちは普通の町の本屋ですよ」
Img_1178_2 と、レジに立った平野さんに替わって説明してくださった北村友之さんも言う。この人が、芸能関係の棚を作っている。年齢はまだ30代か。60年代は絶対、知らないよね。で、「町の本屋」というのが、この店のポリシーであるらしい。最初にいただいたレジメでもそこを強調していたし、平野さんもそう言った。町にある本屋なのは間違いないが、これだけ棚が個性を主張している本屋はそんなに見たことがない。あの、芸能関係だったら、アムロちゃんとかエグザイルとか、嵐やAKB48でコーナーを作るのがいまどきの町の本屋さんだと思うんですけど。あの渋い並びは何? 芸能に限らずそれぞれのコーナーが声高に主張しているんだけど、それでも、海文堂という器がそれをしっくりひとつにまとめているような気がする。何をやっても、この空間だったらOK、みたいな。
Img_1153 「でも、たとえば京都の恵文社さんなんかは全部自分で注文して仕入れているわけですから、そっちの方がすごいと思いますよ」
それはもちろんそうですけどね。恵文社と違ってこちらには付録つきの雑誌もありましたよ。でも、両方あることが、よけいおかしい。そのアンバランスさにパワーを感じる。私の羽はバタバタしませんでしたけど、ずどーんと穴の深いところに引っ張られたような気持ち。賑やかな普通の商店街の中に、あるはずがないものを見たような。

店を出たら妙に空が明るかった。いや、まだ4時だ。明るいのは当たり前。だけど、店のImg_1179 中は、別の時間が流れている。とっくに夜になっているかと思っていた。だまされたような気持ちになった。海文堂という時間を超越した異空間にいると、平穏な日常の方がなんか不思議に思えた。

やっぱり怪文堂だ。
だけど、すんげえ面白い、と思ったのは、私もその毒にやられたからかも。
快文堂でもいいや。
海文堂の衝撃を、自分の中でうまく消化できないまま、元町商店街を後にした。

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No.49 恵文社 一乗寺店(京都市左京区)

Img_0766_3 さて、ガケ書房を辞する時、山下さんに「これからどこの店に行くの?」と聞かれた。とくに決まっていない、と言うと、恵文社に行くことを薦められた。実は、恵文社については、最初から営業をあきらめていた。およそ私の本を置いてくれるタイプの書店じゃないな、と、ネットなどの前情報から判断していたのだ。営業に来られても、先方も困惑するんじゃないだろうか(ガケ書房も、最初に店の詳細を知っていたら、訪ねなかったかもしれない)。
だから、恵文社の場所さえチェックしていなかったのだが、ガケ書房からバス停三つほどしか離れていないというし、アルバイトの方が親切に地図まで書いてくださったので、行くことにしました。まあいいや。営業にならなくても、素敵な本屋を見学するだけでも。
そう開き直って出発した。

Img_0767_2 バス停を降りて、てくてく歩いていると、電車の駅のホームのところに、恵文社の看板を発見。いやー、可愛い。心踊りますね。
さらに歩いていくと、恵文社を無事発見。ありがとう、ガケ書房さん。わかりやすい地図でした。
で、外見を見てふと思ったのが、「私、この店に来たことがある」
かれこれ7,8年前にファンブックを作るために綾辻行人さんのお宅を一乗寺を訪れた(現在は別の場所に引っ越されています)。そImg_0769_2 の帰りに目について、ふらりと立ち寄ったお店が、確かにここだった。まだセレクト書店として有名になる前で、素敵な本屋を発見した喜びにテンションが上がって、3冊くらい買い込んだ記憶がある。綾辻さんも常連だそうだが「あそこには僕の本は置いてないんですよ」と言って笑っておられたっけ。
にもかかわらず、恵文社を訪ねたことがない、と思い込んでいたのは、その時、ギャラリーを見た記憶がなかったから。恵文社=ギャラリーのある書店ですもんね。その時は急いでいたので、奥の入り口を見落としていたらしい。改めて訪ねると、どうしてあんなに広い入り口を見落としていたのか、理解に苦しむのだが。

Img_0774 ともかく、ここは絵になる店だ。どこを切り取っても素敵だ。古民家を改造した店内。漆喰の壁、暖炉、アンティークの家具。奥にはギャラリー。訪れた時は「たくさんのふしぎ」(福音館)の表紙イラストの展示をしていた。売っているのも、本だけでなく、CDや雑貨、アクセサリーもある。ただ置いてあるだけでなく、ひとつひとつがセンスがいいし、置き方にも工夫がある。書店というよりは、美術館に併設されたショップのようです。
それで、ちょっとだけでも話が聞きたい、と思って、店長の堀部篤史さんにご挨拶しました。わざわざ遠くから来たのを不憫だと思われたのか、レジをやりながら、少しだけ取材に応じていただけることになりました。

Img_0776 1.仕事で気をつけていることは?
基本的なことです。いろいろ仕事が多い店なので、掃除とか片付けとかをスタッフが欠かさないように注意しています。
2.仕事をしていて楽しいと思うときは?
いろいろ企画したり、よそで推していない本を紹介して喜ばれたりする時ですね。
3.印象に残る企画は?
いま開催している「たくさんのふしぎ」です。いつも最新の企画が一番だと思っていますから。
Img_0777 4.この店ならではのヒットは?
のばら社の「図案辞典」です。かなり古いタイトルで、本来は実用書なんだけど、若い人向けに「レトロなイラスト集」としてご紹介したところ、たくさんの反響があった。もともとの文脈と違うご紹介をして売れたということで、印象に残っています。
それから、デザイン絵本やアーティストの絵本を大人向けに売るということも、うちではかなり早い時期からやっていますし、うちの店の定番になっています。
5.これからやってみたいと思うことは?
時代の流れにあわせて存在していくこと、それ自体が目標です。

Img_0778 200坪ほどのお店はお客さんでいっぱい。ガイドブックにも載っているお店だから、観光客も多いようだ。お忙しそうなので、ほどほどで切り上げる。「事前に連絡いただけたら」と、堀部さんには言われたが、確かにそうでした。飛び込みで行くようなお店ではありませんでした。すみません。
でも、楽しい店でした。配本がなく、全部注文して本を仕入れるというだけに、一点一点が考えられた品揃え。確かに、わざわざ足を伸ばして来る価値のある店だと思いました。下手な美術館や観光名所よりよほど面白い。
今度は観光ついでにここに来たいと思いました。

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No.48 ガケ書房(京都市左京区)

ツイッターで「京都のよい書店を知らないか?」と投げたところ、返ってきたのがこのガケ書房。名前しかわからないが、推薦されたので行ってみることにする。そういうノリの軽さがこの営業では大事なのよ、と思いつつ、調べてみるとバス便しかない。銀閣寺の近くの、白川高校前というバス停だそうだ。
うーむ、これだけのために半日潰すことになるか。わざわざ出掛けて、空振りだったらたまらないな。
で、とりあえず電話で営業の予約を取りつけた。自分で事前にアポをとったのは初めてですよ。ほとんどが飛び込みか、それができないお店には版元にアポを頼んでいるので。なんとなく飛び込みよりも、アポ取りの方がやりにくいと思ってしまうのです。

Img_0752_2 で、白川高校前。ガケ書房は見るからに変わったお店だった。壁は一面こぶし大の石がびっしり並べられ、ネットフェンスで覆われている。窓は無い。そして壁から赤い車が半分飛び出ているのだ。
「なんじゃ、こりゃ」
と普通は思うよね。外からは中の様子が全然見えないし、およそ本屋らしくない。事前に営業の予約をしていたので、私はずんずん中に入っていけましたけど、普通の人はためらうだろうな、と思う。

で、いきなりレジへは向かわず、一通り店内を偵察してみる。40坪くらいだから、そんなに時間は掛からない。予想通りの凝った品揃え。ビジネス書だの参考書の類はなく、小説、漫画、絵本、写真集などが充実している。絵本や写真集は、レコードのジャケットのように一冊一冊離して面出しされている。もちろん、いまどきのベストセラーは置いていない、というか、むしろなつかしい本が並んでいる。古本の棚もあるしね。掛かっている曲はビートルズのカバーバージョンだし、全体にレトロな空気が漂っているのだ。
こういう店を作るのは、フラワーチルドレンとかそういう世代の人かと思ったら、店長の山下賢二さんがお若いのに驚いた。どう見てもまだ30代、こういう仕事をしている人は年齢より若く見えることもあるが、それでもまだ40にはなっていないだろう。

Img_0754_2 1.ガケ書房という名前はどうして名づけられたのですか?
20代の頃は関東の出版社で編集の仕事をしていました。その頃、プライベートで雑誌を作っていてんです。いろんな人の作品を、写真とコピーで紹介して1冊にまとめたものですが、その名前がガケ書房だった。それをそのまま使っています。
雑誌に名前をつけた90年代前半頃は横文字の名前が流行っていました。だからこそ片仮名の、ユーモアはあるけど意味がないような名前にした方がインパクトがある、と思った。それで、ガケ書房。
2.編集者からなぜ書店主に変わったのですか?
出版社の後、印刷所とか古本屋、新刊書店と、本に関係する仕事にいろいろ就いたのですが、本を売る行程の時に僕の中で幸せな瞬間があることを確認したんです。それで、物を書いてまとめるより、面白い空間を作ってみんなで共有できるようにしたい、と思うようになったんです。
Img_0764_3 僕は子供の頃、本屋という空間が好きで、並んでいる本を次々立ち読みして、文字通り本屋のおじさんにハタキを掛けられるような子供だった。全部を見ないと気がすまなくて、ずっといましたから。だから、そういう場所を自分で作りたかった。
テーマパークのような、そこに行くと心が半音上がる瞬間を感じられるような場所。小さい頃、僕にとって本屋はそういう場所だったし、ここもそういう場所であってほしい。
3.この場所を選んだ理由は?
もともとが京都出身なので、京都に店を開くのは決まっていたんですが、僕は若い人に来てもらいたかった。そうなると、中心部の繁華街か、大学の多いこの辺 りか、という選択になった。中心部に居る若者は流行を追いかけるだろうけど、僕は自分の生活を追いかける若者に来て欲しかった。そういう店がここなら可能 だろうと思って、この場所を選びました。
こういう外観にしたのは、店の名前ではなく、建築物として覚えてもらいたかったから。車を付けたのは、窓のない閉鎖的な外観なので、あれがないとますます 閉鎖的になるだろうと思ったから。あれがあることで、外からの突っ込みどころがある。話題にも出来るし、コミニュケーションの手段として有効だと思ってい ます。
4.どういう規準で本を選んでいるんですか?
店を始めて7年間のデータから、客の嗜好を想定して選んでいます。老若男女を問わず、来るお客さんに喜んでもらえる品揃えにしたい。僕自身の好みというわけではありません。
Img_0761_2 でも、最初からこの状態だったのではなく、取次ぎの人と相談をして、オープン当初はわかりやすい商品も半分くらい入れていたんです。雑誌で言えば「anan」とか「JJ」とかね。そっちの方がお客さんにも喜んでもらえるだろう、と思ったんです。
ところが、開店してみると、それが不評だった。この店構えなので、お客さんは店に入るのに覚悟がいるし、その分、期待もする。それなのに、普通の書店に置いてある本を見ると、がっかりするんだそうです。それで、わかりやすい本はやめてしまいました。
こういう店をやっていると、セレクト書店と言われるんですけど、そのつもりはありません。自分の店で売る商品を選ぶのは小売の基本ですから。本の場合は取り次ぎが入るので自分でイニシアティブを取るとセレクトショップと 言われてしまいますが、八百屋とか魚屋とか、みんなやっていることだと思います。
Img_0759_3 5.商売としての書店経営はいかがですか?
生きていくのはたいへんだなあ、と思います。だけど、奇跡が起こるんですよ。365日のうち360日くらいは何か奇跡が起きる。それで、なんとか続けていられる。
6.店を見ると、どこかレトロな感じがしますね。本もなつかしいものが多いですし。
そう言っていただけると嬉しいですね。僕は実は昭和という時代が好きなんですよ。戦前から戦後の復興期の混沌も、経済成長の前向きな時代、バブル期のギラギラした時代も、みんな好きなんです。昭和好きというのが自分にとってのキーワードになっていて、音楽とかアートとか食べ物とかも昭和を意識している。携帯電話やファックスが嫌いで、仕事の連絡も電話だけにしてほしい、とか。この店には、そういうフィルターが掛かっているかもしれません。
7.書店をやってよかったと思うことは?
いろんな人に出会えたことですね。ここで出会った人の90%は勤め人をしていた頃には出会わないようなタイプの人たちです。いろんな人と話をすると考え方も広くなるし、学ぶことも多い。もともとはあまり社交的じゃなくて友人も少なかったんですが、店を始めて友達も増えました。それが一番いいことですね。
Img_0758_2 それに、先の読めない面白い出会いもある。うちの店には小さな庭があって亀が放し飼いになっています。あれは最初からそうするつもりだったわけではなく、「作らせてください」と、飛び込みで来た人がいたんです。僕は面白いと思っ たら「いいよ」となんでも言ってしまうので、その人に任せてみた。それでああいう形になったんです。
この店を始めたことで、著名なミュージシャンや作家の人も来てくれる。昔ファンだったような人にも来て貰えるのは、書店冥利につきますね。

リアル書店の、ネットにはない強みとは何か。
それは”場”だと思う。
ただ商品が並んでいるだけでなく、自分の好きなものが集まっている。そこに、会って楽しい人がいる。行くたびに、面白いことが起こっている。新しい発見や刺激がある。
Img_0763 自分の行動範囲の中にそんな店が一軒あったとすれば、本を買うという消費目的がなくても、そこに足を向けるだろう。
ガケ書房とはそういう店だ。セレクトされた商品も魅力的だが、空間としても面白い。車の突き出た外観もいいが、天井に少女の絵が書かれていたり、窓に作家の即興の短編が書かれていたり。
書店なのに、店内でライブをやったり、店の一部を占いやカフェに貸し出したり。
面白いことがあれば、やっていくというお店の姿勢がある。それに共鳴する人たちがいる。そうして作り上げたのが、このガケ書房という場なのだ。

Img_0765_2 だから、ここは面白い。店が何かを提供してくれる、というだけでなく、自分たちもこの場に何かを加えられる、そんな気持ちを起こさせる。そして、それが叶えられるから、この店は新鮮なのだ。

それが成立可能なのは山下さんという店主の人柄によるものであり、京都という土地柄もある。最近では東京にもセレクト書店は増えているが、知識人やミュージシャンをも集める魅力的な”場”になっているところは、どれくらいあるだろうか。
代理店の仕掛けではなく、個人の息遣いが感じられるような、その土地に根付いて、周りの人々の好意で発展しているような店がどれだけあるだろうか。

こんな店が、うちの近所にも欲しい。
強烈に思いました。

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No.47 三省堂書店京都駅店(京都市下京区)

Img_0738 「京都に行くなら、三省堂の中澤さんを紹介しますよ」と、ありがたいことに、以前取材したトキワ書房の宇田川さんに言われていた。紀伊國屋書店梅田本店の百々さんも、京都ならここ、と言っていたし、ツイッターでもこちらの店は評判がいい。伺うことを楽しみにしていたのだが、版元経由で連絡でもなかなか連絡がつかない。ぎりぎりになって発覚したのは、私が京都に着くその日に三省堂京都駅店が新装オープンだということ(正確には、京都駅店の入っているザ・キューブという地下街全体がリニューアル・オープン)。
なんというタイミング。新装開店なんて数年に一回、あるかないかの時期にぶつかるなんて。私自身はすっかり営業をあきらめていたが、版元の方たちが粘ってくださって、リニューアル翌朝に中澤さんに挨拶に伺う約束をとりつけてくださった。ありがたいことである。

Img_0740 で、文芸売り場をひと目みて「これはすごい」と理解した。とにかくPOPが多い。それも、細かい字でみっちり文章の入った長文のPOP。その本をちゃんと読んでいなければ、気に入っていなければ、絶対かけないPOPです。書いた人の熱意がびんびん伝わってきます。いろいろ書店を見ているけど、ここまでしっかり紹介が書かれたPOPはちょっと見たことがない。
挨拶してすぐそのことを中澤さんに伝えると、
Img_0741_3 「社内規定では、書店POPの文字は大きく、はっきりと、と決まっているらしいんです。で も、それを私が知らなくて、最初からこう書いてしまった。それが評判がよかったので、それ以 来、このやり方で作っています。その本に関心があれば、字が細かくても読んでもらえますし、お客様が買おうかどうか判断する材料にもなると思うんです」
それがきっかけで、このお店はPOPが売りになった。文芸だけではない、たとえば実用書のお弁当本のコーナーのところに、フェルトで手作りしたPOPや、紙を二重に重ねて作った立体POPが飾られている。
Img_0748 「サブのアルバイトの人にも、うちではPOPのイロハから教えます。それで褒めて伸ばす。 うちはバイトの子たちがいい形で育っているので、助かっています」
実は、新装開店のために、急遽、間に合わせで作ったPOPもあるというくらい、この店はPOPで売ることが定着している。
「版元で作られたものは、きれいだから目立たせるのにはいいけど、どこにでもある。著者POPは、その人が店に来たという証拠にはなるけど、それでお客様が買うきっかけになるとは思えないんです」
Img_0749 だから、あくまで手書きにこだわるが、自分たちがちゃんと読んだもの、気に入ったものしか書かない、という点も徹底している。実際、そうでなければ、あんなに詳細なコメントは書けないし、説得力のある文章にもならないだろう。
「人気作家の話題作のように、ほっといても売れるものはあまりPOPはいらない。売れる場所に置けば、自然に売れていく。だから、なるべく日の目を見ないような作家さんの方を推したい、と思います。幸い、うちには小説好きの、本読みのお客様がついていてくださるので、文芸比率も高いですし、新しい作家も仕掛けやすいですから」
Img_0744_2 POP以外にも、こちらでは「文芸書オススメ通信」と題された独自のフリーペーパーを作っ ている。A4の紙を二つ折りにしてA5版4ページにした、手書きのコピーのものだ。それ自体は珍しいことではない。ごくまれに、熱心な書店員さんがこうしたものを作ることはある。売れ筋やお薦め本の紹介、注目作の刊行予定、フェアの予定などを、こうした手段で伝えようとするのだ。だが、驚いたのは、こちらの第56号、朝井リョウさんの「桐島、部活やめるってよ」(集英社)を大きく取り上げているのだが、ただの紹介文だけでなく、朝井リョウさん本人への質疑応答も掲載しているのだ。記事から察するに、こちらから投げた10の質問について、作家本人から文章で回答を得たものらしい。直接作家とやりとりしたのではなく、版元の営業や編集が仲介しているのは間違いない。
朝井さんがデビュー直後の新人とはいえ、フリーペーパーだけのためにコメントがもらえるということは、普通の書店では考えられない。そこまでの協力を版元に取り付けられるという事実が、こちらの店の実力を物語る。そこまでしても版元にメリットがある、つまりその店がそれだけ売る力があるということの証明だ。
このお店はいつからこういう状況になったのだろうか。オープンして、ここはまだ10年も経っていないはずだが。
「そうですね。こんなふうにコメントをお願いできるようになるまでに、5年は掛かったんじゃないでしょうか。最初はこちらの店は配本も少なかったし、サイン本などもお願いできる状況ではなかった。だから、既刊の掘り起こしからはじめて、売れたらしつこく営業の人にアピールするということをやったんです」
Img_0746_2 それを聞いて、やっぱりそうか、と思った。いかに三省堂といえ、最初からいい条件だったわけではない。オープンした時の条件はほかと変わらないのだ。だが、そこであきらめず、できることをやっていく。既刊の掘り起こしということは、たいていの書店ならやれることだったりするのだ。これだと思う本を見つけPOPをつける、目立つ場所に置く、すぐに売れなくても、ずっと置き続ける。おそらく、当たり前の努力を積み重ねたのだろう。そうして既刊で実績を作ると、だんだん新刊の配本にも影響が出てくる。そうして増えた新刊を、さらに売り伸ばす。地味で当たり前のことを続けることで、いつのまにか「京都にこの店あり」と言われる状況を作り上げたのだ。
「もちろん、ナショナルチェーンの強みはありますよね。地方でも三省堂ということで営業の方が来てくださるし、場所も京都駅前の便利なところですから」
それでも、版元と強い関係を築くのには5年掛かった。すぐに結果が出るものではないのだ。そうして花開いたのが、今の結果なのだ。そして、版元も営業だけでない、商品管理や編集などいろんな人との関わりがあり、それが今の仕事に繋がっている。作家の来訪も多い。京都在住の作家も多いし、東京在住の作家でも、京都だったら、と営業に来てくださる方も多いのだと言う。
Img_0751_2 「結局は人の問題だと思うんです。営業の方はどんどん変わるし、どれくらい前の方の仕事を引き継いでくださるか、というのも、その人次第ですから」
そう言って、中澤さんは微笑んだ。

挨拶だけのつもりだったのに、中澤さんの話は面白く、結局ノートを出してメモを取っていました。書店のことだけでなく、自分自身の仕事についても、いろいろ考えさせられました。
たとえば、仕事も5年頑張り続ければ状況が変わる。否、5年くらい続けないと、形にはならない、ということ。自分たちの仕事がいろんな人に伝わり、認められるのには、それくらい時間が掛かるのだ、ということでもある。
それともうひとつ、実は私の本も置いてくださってはいたけれど、POPがついていませんでした。読んでくださっていない、あるいは読んでもPOPを書きたいという熱意がおこらなかった、ということか。
うーむ、まだまだだ、自分。頑張って、中澤さんがPOPをつけてくれるような本を書かなければ、と決意を新たにしたことでした。

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No.46 旭屋書店天王寺MIO店(大阪府市天王寺区)

Img_0732 さて、こちらも紀伊國屋書店梅田本店の百々さんたちのお薦め書店。こちらの西山さんにはぜひ、会っておけ、とのお言葉を受けてやってきた。
こちら天王寺MIOというファッションビルの中にある400坪のどのお店。旭屋さんはお洒落なインテリアのお店が多いと思うが、こちらはブティックの集まるビルにあるという立地条件から、お洒落度がより高く、奥にデザイン関係の本や洋書を集めたコーナーがあったりする。だが、西山さんはざっくばらんな、初対面でもすぐに打ち解けてくださる、いい意味で大阪人らしい方でした。

1・こちらのお店の売れ筋は?
Img_0721 以前、私は本店にいたのですけど、その時のイメージではここは若い女性向けのお店。だけど、実際入ってみると年齢の高い方、ビジネスマンのお客様も多いんですね。天王寺の駅を降りてすぐ、エレベーターでぱっと上がって来れるので便利なんです。だから、そうした年齢層の高い方や男性向けの商品のニーズも高いです。
女性客対象の美容ものはよく売れます。たとえば「バンテージ・ダイエット」(フォレスト出版)は全国2位の売り上げです。男性客にはビジネスもの、東野圭吾さんをはじめとするミステリとか時代小説とか、「もういちど読む山川の日本史」(山川出版社)のような本もよく動きます。
2.仕事で気をつけていることは?
Img_0722 具体的なことで言えば、レジ前の展開を大事にするということですね。うちの場合、ワンフロアなので左端と右端では売ってるものが違います。距離的にも離れているので、それぞれの売れ筋を、小説とか新書とかジャンルに関係なくレジ前に集めて展開してみました。そうすることによって、売れ行きも上がりました。「日本人の知らない日本語」(メディアファクトリー)などは、それで動いた商品ですね。
それから、人気商品の品切れが起きた場合、「○○日に入荷をします」ということを明示することです。以前、綿矢りささんが芥川賞を受賞した後、商品を切らしてしまった。だけど「○月×日に入荷します」と書いておいたら、再入荷後、初回の時よりお客様が来てくださった。そうやってアピールしておくとお客様も気に留めてくださるし、ちゃんと入荷するところにお客様は来てくださるんだな、と思いました。
Img_0735 アピールということで言えば、大きな手書きPOPなどは、後ろの本の邪魔だとか、不統一だとか言われたりもしますけど、整然と置いたらこちらのお客様には、活気がないと感じられてしまうようなのです。梅田とかではまた違うのですが、土地柄なんでしょうね。それで、こちらのお店では、POPで派手に見せることが必要だと思っています。
そうしたことは、お客様にじかに対応してわかることですね。この時間にこの商品の売り上げが急に伸びたのは、ここでDVDを流したからだ、というようなことは売り場に出ていなければわからない。いまでは自動発注とかネットオーダーとかで、誰でも注文ができるシステムですが、やはり人の目とか人の気持ちが大事だと思います。
3.今まで仕掛けたもので、印象に残っている本は?
いろいろありますけど、旭屋全体のデータを見て、ほかより負けているものがあると、置き直しをしたり、並べるものを変えたりしてみます。そういうことで、売れ行きが伸びたり、並べたものが相乗効果で売れたりすることがありますから。
4.印象に残る営業マンは?
Img_0736 みなさん、よくしてくださいますけど、ひとり上げるとすれば新潮社の古沢さんですね。新刊会議の内容をちゃんと説明していただきますし、忙しくても電話をしてきてくださる。ありがたいです。
最近では仕事も機械化されている部分も多いですけど、いざという時は版元も相手を見て判断するんじゃないでしょうか。私はまったく知らない版元でも、直接何度も電話して交渉するようにしています。そういうことをやって、繋がりを作っておくと、ほかの書店にはない状況の時でも、うちだけ入れてもらえたりしますから。
それに、私は版元の方に「やってみてくれない?」といわれた時、あまりことわらないようにしています。スペースがきついな、と思っても、なんとかやりくりしてみる。やってみないといいか悪いかはわかりませんし、こちらもお願いする時がありますからね。
5.接客で印象に残ることは?
本店に居た頃、1階に「おすすめ本どころ」という書評コーナを作っていたんです。いろんなジャンルの本をそこで紹介していたのですが、それをまとめて注文されて、宅急便で送るように手配されるお客様がいました。そういうお客様は印象に残っています。
6.これからやってみたいことは?
もっとPOPを書きたい。全部は無理だとしても、できるだけ紹介していきたいですね。版元からもPOPは送られてきたりしますが、手書きの方がリアルだし、インパクトもあるし。
それから、本店でやっていた「おすすめ本どころ」をこちらでもやってみたいですね。本店の場合は、本好きの5,6人が集まって、小冊子まで作ったりしていたのですが、そこまでいかなくても、天王寺MIO点のお薦めを紹介するコーナーを作ってみたい。新聞で取り上げられたもので、一般に読めそうな本とかを紹介していきたいです。入ったものをただ並べるだけでは、つまらないですから。

熱い方である。こちらに紹介したのは、ほんの一部。仕事のことを語り出したら、いくらでも話が出てくる。ややくたびれ気味だったこちらは、そのパワーに終始圧倒されていた。それに人情味のある方である。ふらっと訪ねてきた作家にできるだけ協力してあげようという気持ちがびんびん伝わってきた。その温かさが、見知らぬ土地で心細い思いをしている私には、すごく嬉しかった。
おそらくこの姿勢のまま、西山さんはお客様に対応したり、棚を作ったり、営業さんに話しをつけたりされるのだろう。「人の目や気持ちが大事」だという西山さんのお話からもそれは伺えた。だからこそ、ほかの書店チェーンの方からも、「大阪で会うべき人」と推薦される人なのだ、と思う。
彼女も店長さんも天王寺MIO店に来てまだ間もないそうだ。主要スタッフがふたりも変わるというのは、お店のてこ入れのためではないか、と部外者は勝手に推測するが(そうでなかったら、すみません)、このパワーがあればお店はどんどん変わっていくのではないか、と思った。今でもお洒落で素敵なお店だが、西山さんやほかのスタッフの個性がこれからどう反映されていくのか、楽しみである。

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No.45 紀伊國屋書店堺北花田店(境市北区)

Img_0708 さて、北花田。ここはとっても遠かった。地下鉄をうんと乗り継いで、ようやく到着した。地下鉄の駅を降りて地上に出ると、青い空、大きなショッピングモール。ここは明らかに郊外。難波だの本町だの梅田だのとは空気が違う。それはそれで、ちょっと不安。このショッピングモールの中に目的の書店はあるのですが。
で、なぜこんなはずれまで来たのかというと、紀伊國屋書店梅田本店の百々さんたちから、「大阪で一番、面白いのは堺北花田の堀江」と聞いたから。何がImg_0709 どう面白いのかわからなかったが、聞いたからには行かないわけにはいかないでしょう。
で、面白い以外ノーヒントだったので、堀江さんが女性だったことに驚いてしまったよ。
なんとなく、男性の、言いたい放題言うちょっと変人。だけど熱意があって面白い。酒を呑むと愉快、みたいな方を勝手にイメージしていたから。失礼しました。
でも、堀江和子さん、こちらが来意をつげると、すぐに了解してくださって、バックヤードの案内してくださった。

1.こちらのお店の客層は?
ニューファミリーと呼ばれる家族層中心です。児童書、コミック、雑誌などを中心によく売れています。売り上げ的には順調です。
Img_0715 2.仕事で気をつけていることは?
商品の回転を速くしたい、ということです。比較的若いお客様が多いので、あまり同じものが置いてあると、飽きられてしまう。来るたびに違ったものを置いてある、と思っていただけるように、と思ってやっています。
ですが、坪面積にも限りがありますし、品揃えを多くすることはできません。必要とされるもの、売れ筋が揃っているように、ということを意識しています。
Img_0719_2 3.仕掛けて成功したこと、こちらで日本一、売ったものとかはありますか?
こちらのお店に来てからですと、「くらべる図鑑」(小学館)です。担当者がオリジナルのポスターを作ったり、版元と相談して当店限定の予約特典をつけたり。安くない本ですけど、1000冊くらい売れました。
あと、うちが一番売った本といえるのは「怖いくらいあたる血液型の本」ですね。こういう実用書系もうちは結構、強いんです。
あとは「AERA BABY」も1636冊売ったので、おそらく日本一だと思います。
Img_0711 現在展開しているのは、「100かいだてのいえ」です。こちらも、担当者が手作りのポスターを作ったりして、大きく展開していますので、よく動いています。
4.接客で印象に残ることは?
以前、こちらでに海堂尊さん、和田竜さんが来てくださったことがあって、サイン本を作っていただいたんです。そうしたら、あきらかに作家の本を持っているお客様が、一種類づつサイン本を買ってくださった。本がお好きな方なんだなあ、と思って嬉しかったです。
5.堀江さんが書店員になったきっかけは?
Img_0712 そうですね。きっかけというより、なぜやり続けているか、という理由は「情報を欲しい人にちゃんと届けたい」という思いがあるからです。社会学部出身ということもあるのですが、かつて阪神大震災を経験したのですが、そのあとの土地とか家とかの関係でいろんなトラブルが起こった。建て替えのこととか、定置借地権とかで揉め事がたくさんあったんです。当時はあまり大きなお店がなくて、私がいた梅田店までわざわざ遠くからそうした関係の本を求めていらっImg_0713 しゃる方がいた。それなのに、求められる本が揃ってなかったりすると、心苦しかった。求められる本をちゃんと揃えるのは私たちの責任だと思っています。
6.書店員になってよかったと思うことは?
こうして著者の方に来ていただけるのも楽しいですし、お客さんに自分で面白かったと思う本をお客さんにも買って欲しい。これ、と思って推した本を買っていただけると嬉しいですね。
7.印象に残る営業マンは?
お世話になっていると言ったら、やはり小学館の方かな。「くらべる図鑑」の時も予約特典など無理を聞いていただいたし。でも、こちらに限らず、営業のみなさんには、いつも無理 を聞いていただいています。ありがたいことですね。
いろんな営業の方を拝見していて、会社の数字に直結するような仕事をしてくださる方がもちろんいいのですけど、こだわりを持って仕事をされる方も魅力的だと思います。
8.自分の書店以外でよく行く店、意識しているお店は?
Img_0716 数字では、やはり(紀伊國屋書店の)本町店や京橋店を意識しています。追いつけ、追い越せ、と思っていますので。
でも、それ以外のことは、そほかの店のことやほかの書店員はあまり意識しないようにしています。ひとりを意識すると、いろんな情報を取れない気がすると思うので。
9.これからやってみたいことは?
立場上、だんだん管理の仕事ばかりになってしまうのですが、現場の仕事がやりたいなあ。自分でもっと本を探したい、アンテナを張っていたい、と思います。

堀江さん、実に頭の回転が速い。こちらの意図をすぐに汲んで、的確な返事を返してくださる。話も面白いし、プロフェッショナルな姿勢も伝わってくる。さらに、せっかく来られたのだから、と拙著のデータを検索 してくださって、堺北花田店での売れ行き状況や、他店での状況を教えてくださる。そこまでしてくださったのは、こちらが初めて。さすが。大阪一おもしろいというのはこういうこ とか、と理解する。
つまり、面白いのでなく興味深いとか、そっちのおもしろいということですね。話していて、すごくおもしろい。全然、飽きない。
こちらのお店が郊外にあるにもかかわらず、京橋や本町にも迫る売り上げを出しているというのは、こうした堀江さんをはじめとするスタッフのプロフェッショナルな姿勢の賜物だろうと思います。
とくに児童書や家族向けの商品の充実、それに見合った展開。店内いたるところにポスターとか、書店なりの工夫が見られます。こちらの近所に住んでいるファミリーは幸せだな、と思いました。

ところで、堀江さんが検索してくださったおかげで、拙著が売れているのは紀伊國屋書店新宿南 店だと知る。「おそらく固定ファンがいますね」と言ってもらえてうれしくなる。これはぜひ、新宿南店にも行かねば、と密かに決意する。

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No.44 旭屋書店堂島地下街店(大阪市北区)

Img_0703 こちらは、ジュンク堂に行く途中に見つけたお店。目の前を通りかかったからにはご挨拶を、と思ったのですが、お昼どきで文芸担当の方はいらっしゃいませんでした。残念。
なので、いつもの営業セットを置いて帰りました。
お店は地下街にあるのでそれほど広くはないのですが、ミステリとか時代物、SFなども充実していました。伊藤計劃さんの「虐殺器官」(早川書房)に手書きPOPがついていたりして、こだわりを感じ ました。お話を伺いたかったなあ。
やっぱり、飛び込み営業は空振りも多いですね。

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No.43 ジュンク堂書店大阪本店(大阪市北区)

場所は堂島。そう聞くと、梅田からは遠い気がするが、なんのことはない、梅田からも歩いて10分掛からないくらいの場所。なんだ、紀伊國屋の梅田本店のついでに、ここを周ればよかったよ、と後から思ったよ(こちらは、紀伊國屋の翌日に訪れた)。でもまあ、素人営業だから、その程度の無駄足は仕方ないけどね。

Img_0688 大阪本店。1480坪。いかにも本店らしい落ち着いた佇まい。本店と聞くとやっぱり身構えてしまいますね。お洒落なビルの中にあって格調高い雰囲気だし、ジュンク堂は関西が本場だし。
さて、こちらでお会いしたのは文芸書担当の一柳友希さん。一柳さんの服を近くで見ると、胸にジュンク堂のマークがついている。会社支給のポロシャツだそうなのだが、いままで気づかなかった。案外着ている人は少ないんじゃないだろうか。でも、「ここ以外では着れないし、せっかく支給されるものだから」と、一柳さんは二日に一度は身につけているそうだ。笑顔の可愛い一柳さんだから、地味な制服もちゃんとさまになっているのだけど。

1.こちら特徴は?
Img_0690 場所柄、ビジネスマンの方が多いです。ですからビジネス関係の本を積んだり、ビジネスマン対象のトークイベントなどをやることもあります。電通が近いので広告関係もいろいろ揃えています。
文芸では、関西の著者の方で年齢層の高い方に人気のある作品、たとえば開高健さんとか吉村昭さんを切らさないようにしています。近くにサントリーもあるので、開高さんはとくに。
2.仕掛けてうまくいったことは?
平台を使う大きな新刊のフェアより、棚の間の小さなフェアの方が好きですね。新刊と古いImg_0697 本との併せで組み立てるものですけど。今は「怪獣たちのいるところ」の映画公開に引っ掛けて、漂流フェアをやっています。
3.接客で印象に残ることは?
うちは社長の印象が強いのか、お客様が「テレビでおたくの社長がこんなことを言っていたよ」と教えてくれるんです。東京では多分、無いことなんじゃないでしょうか。
それから、うちの場合、お客様が椅子に座って本を読むことができImg_0699 るスタイルを取っているのですが、年配のお客様が心配されて「座って読んでいる人がいるけど、いいの?」と心配してくださることもあるんです。そういうことがあると、ちょっと嬉しいですね。
4.書店員になった理由は?
本って、全ジャンルにいろんなことが詰まっているでしょう。このジャンルだけが好きというのでなく、いろんなものをもっと見たい、と思っていたんです。接客も好きだけど、タイトルでキーワードを掴んで興味を持ったり、お客様にも興味をもっていただけるようにできると嬉しいと思ったんです。
だから、仕事は楽しいですよ。今は情報を得るためにパソコンも使うけど、書店の仕事はずっと昔から伝わっている古臭い部分も多い。そこが好きなんです。ほかの業種ではメールでやりとりするのが当たり前のことでも、こちらではファックスとか手書きのことが多いし、手書きの方がぐっとくる。画像で読んだ文字より、手書きや印刷の文字の方が印象に残ると思いますしね。
Img_0694 それに、本の場合、電話での営業も多いけど、実際に本を手にとってみないと頑張りたいか決まらない。装丁とか紙とか出版社や著者の雰囲気で感じるものを大事にしたいと思います。
5.自分の店以外に興味のある書店は?
書店に終日いると、あまりほかの店には行けないのですけど、同じ本でも置いてある場所が違って見えたりするのが楽しいですね。スタンダードブックストア心斎橋店など、書店だけでなく、カフェも併設されていて、雑貨も置いてあって、面白いです。
それから、京都の大垣書店にも時々、行きます。
6.これからやってみたいことは?
Img_0693 できれば自分の趣味だけの棚を作りたい。小説に限らず、動物とか地球とか自然に関する本を並べたい。あべ弘士さんの「どうぶつ友情辞典」(クレヨンハウス)のような。それで、見る人が平和な気持ちになれる棚が作れるといいな、と思います。

取材が終わった後、一柳さんが店内を案内してくださったのだが、「実はこれ」と見せてくださったのが、「働く女子へ読書のススメ OL Book Fair」というフェア棚。実はこれ、シティリビングの関西版とこのお店が組んで開催しているフェアなのだ。独自のフェア帯も掛けられ、3/.5号のシティリビングの一面にフェアImg_0695 棚の写真が掲載されている。驚いたことに、働く女子に薦める40冊のセレクトの中に、拙著「辞めない理由」の文庫も飾ってあるのだ!
これを選んだのは一柳さん自身なので、実は私のこともご存知だったのですね。いや驚いた。自分を知っている書店員さんがそんなにいるとは思わなかったので。
そうか、それでいきなりの取材でも、一柳さんは快く引き受けてくださったんだ。それに気づいて、あとからどきどきしました。
いえ、自分のことを知らない相手と思うから、平気で取材とかもできたりするものなので。なんか冷や汗が出た。
でも、すごい嬉しかった。こんな出会いがあると、営業やっててよかった、と思います。
ありがとう、ジュンク堂。それに一柳さん。
入店した時の緊張とは一転、足取り軽やかに店を後にした。

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No.42 紀伊国屋書店梅田本店(大阪市北区)

Img_0685 さて、紀伊國屋書店梅田本店。
ここはとにかく人が多い。阪急梅田駅のすぐ傍、しかも路面店ということもあってとにかくすごい人、人、人。店舗面積も相当なものだ。700坪?800坪?
キオスク的な便利さと、品揃えのよさを兼ね備えているお店、というわけで、人が多いのも当然といえば当然のこと。そんなわけで、新刊の売れ行きの初速がいい。日本一を記録するものも少なくない、と一課の課長の坂谷嘉久さんは言う。ただ、後伸びするのは仕入れ力で勝る東京・新宿本店の方だったりするらしいが。
だから、仕掛けてじっくり売るというより、新刊を集めて一度にたくさん売る、というやり方があっているお店なのだろう。夕方のレジ前は人が通れないほど混雑するという活況に、こちらもただ圧倒されてしまった。

こちらのお店、実は以前、本町店で文芸を担当されていた百々典孝さん(現・梅田本店仕入課課長)にお会いするために伺ったのだった。百々さんは「辞めない理由」を20冊仕入れてくださったり、前作「雪白の月」の帯を書いていただいたり、と何かとお世話になっている書店員さんである。そのお礼を兼ねての営業だ。地下にあるバックヤードでは百々さんのほか、先の坂谷さん、それにたまたま居合わせた文芸の星真一さんも同席してくださった。
私ひとりに課長3人。なんとゴージャスな営業でしょうか。
自己紹介を兼ねた営業トークをひとしきりしゃべった後、ブログのための取材をお願いしたのだが、百々さんは「文芸担当ではないので」とお断りになり、文芸の星さんも遠慮されたので、取材はできず。だが、これから周るべき大阪・京都の書店については、いろいろアドバイスをしてくださった。
慣れない大阪で気弱になっていたので、このアドバイスはとても心強かった。関西の書店事情のあれこれを伺って楽しかった。関西営業に光が見えた気がした。大げさでなく、ほんとに(実際、周ってみて、それがすごく的確であることが、後にわかるのだけど)。
やっぱり、初日にここに来られればよかったなあ、と思いつつ、帰途についた。

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NO41.ジュンク堂梅田ヒルトンプラザ店(大阪市北区)

さて、ここもかつて「辞めない理由」で大阪営業した時、たいへんいい印象を持った一軒でImg_0673 ある。ヒルトンプラザの中にあり、入るとすぐに大きな吹き抜けがある。そこに設置されたエスカレーターを使い、大きなガラス張りの壁面ごしに外の景色を見ながら、ゆっくり5階へと上がっていく。このゆったりとした雰囲気が、そのままお店のカラーを決めている。エレベーターの先にあるこのお店も、きれいで、静かで、どことなく上品だ。
昔、訪れた時の文芸担当の方は、やはり転勤されていたけれど、文芸担当の藤田さんが快く応対してくださいました。

1.お店の特徴は?
Img_0675 こちらは600坪ほど、ワンフロアーのお店です。ヒルトンプラザの中にあるということで、やはり女性のお客様、それも30代くらいの方が多いですね。ですから、自己啓発ものとか、ライトエッセイ、とくに恋愛エッセイがよく売れます。
2.仕事で気をつけていることは?
売れ筋の新刊や話題の本に偏らず、自分が読んで面白かったものを、なるべく場所をとって展開して行こうと思っています。
3.仕掛けて、印象に残ったことは?
まだ入社して1年ですし、こちらは大々的なフェアをやる方針ではないのですが、現在、レジ前で展開中の「新生活フェア」は、立ち読みされているお客様も多いし、反響があるので、ちょっと嬉しいですね。
4.接客で心がけていることは?
Img_0676 問い合わせに応えるというのが、接客のメインの仕事だと思うのですが、データを叩いても出てこなかったりする時でも、ネットなどで調べてなるべくお応えしたい、と思っています。それで、少しでも注文に結び付けられれば、と思います。
5.書店員になってよかったことは?
実は別のことがやりたくて、書店員は繋ぎの仕事のつもりだったのですが、やってみると面白くて続いています。
書店員は自分で本を仕入れて仕掛けることができる。どれを注文するというきまりがないし、棚つくりも自分の担当に関しては、やりたいようにさせてもらえるのが楽しいです。
6.自分の担当の棚で、ここにこだわっている、というところはありますか?
Img_0677 ライトノベルの単行本で、エタニティブックスという恋愛物のシリーズがあるのですが、こちらはうちの客層にあっているのではないかと思って棚に置いてみました。反響がよかったので、さらにスペースを増やしてみました。さらに手ごたえを感じています。
7.これからやってみたいことは?
やはり、うち発のヒットを作りたいですねえ。なかなか大きな仕掛けがやりにくいのですけど、やはり発信する側になりたいです。

こちら、ジュンク堂ということで、やはり本の冊数が多い。私のようなマイナー作家の作品もImg_0678 全部(といっても、たった4冊ですけど)、揃っておりました。いままで全冊揃っているのは見たことが無かったので(もしかしたら、立川オリオンさんとかにはあるかもしれないけど)、ちょっと感動してしまいました。ジュンク堂としては決して大規模ではないけど、さすがの品揃えです。店内、あちこちにベンチもあるし、静かだし、落ち着いて本を探したい時に、やっぱりここは外せないお店です。

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