関西の書店

No.78 ジュンク堂書店 三宮店(神戸市中央区)

Img_1188 さて、神戸と言えばジュンク堂発祥の地。そのなかでも三宮店こそ本丸中の本丸。海文堂書店と並んで、ここがあったから神戸行きを選んだのである。
三宮センター街という、おしゃれな店が軒を連ねるアーケード街の中に、その店はあった。
4フロアが書店だという大書店ビル。でも、1階はHMVの方がやたら主張しているので、入り口はうっかりすると見落としそうです。でもまあ、エスカレーターで2階に入ってみると、さすがの本と人の量。話題書だけをずらりと並Img_1197 べて面陳した棚がお出迎え。
実は到着時間がわからなかったし、担当者の名前も知らなかったので、アポなしの直撃でした。もし担当者がいなければ、翌日で直せばいいや、などと姑息なことを考えていたのですが、文芸書担当の楠本杏子さんが、にこやかに迎えてくださいました。
おりしも「1Q84」の展開が花盛り。こちらでも、もちろん一番目立つところにコーナーができている。
Img_1192 「こちらでは、どれくらい売れたんですか?」
「1巻で類型3000冊くらいですか。3巻も1500を超えました」
と、こともなげに楠本さんはおっしゃる。
3000ですか。普通の(といっても、その地域の上位店)と一桁以上違う。さすが、ジュンクの本丸だ。と言いつつ、私が気になったのは「1Q84」のコーナーのど真ん中に、アイザック・ディネーセンの「アフリカの日々」(晶文社)が置かれていたこと。
Img_1196_2 「これはどうしてなんですか?」
「本の中にこの小説の紹介が出てくるので、問い合わせがあったんです。それで、並べて置いてみました」
とのこと。なんて芸が細かい。ただたくさん売るだけでなく、こうした細やかな心遣いが本屋の心意気だよね。
ところで、このディネーセン、私の憧れの作家である。「アフリカの日々」みたいな作品が書けたら、絶筆してもいいな、と思うくらい(そんなことはありえないので、じたばた書き続けるしかないのですが)。晶文社のディネーセンコレクションは絶版になったはずだけど、「1Q84」効果で復刊したのだろうか、などと考えたりした。どうでもいいけど。
Img_1200_2 ところで、こちらのお店、やはりジュンクの棚らしくない。3階4階は違うみたいなのですが、文芸の置かれている2階は昔のままの什器、つまり、あまり背が高 くない。おまけに、棚の前の平台が、一列だけしか並べられないようになっている。
で、この平台がなかなか面白い。レジ近くに話題書の大きなコーナーがあるので、押さえるべきものはそっちで押さえ、ここは治外法権というか、思い切り担当者の個性が出ている。ノンカフェ・ブックスの「ジェリー・ビーンズが落ちてくる」なんて本、見たことなかった。神戸が本拠地の出Img_1201_2 版社だというから、それも無理はないけど。 そのシリーズの横に有吉玉青さんの「三度目のフェルメール」(小学館)、「営業零課接待班」(講談社)なんて、意表をつく流れ。
「ここは、ちょっとこだわりがあるけど、話題書の棚には置けないものを並べています。ほんとは2列に置けるといいんですけどね」
楠本さんはそうおっしゃるが、実は1列の平台の方が目立つと思いました。2列よりも視線が分散せず、本の1冊づつが際立って見える。それに、面白い。実はこの店の2階で、個々が一番面白いんじゃないか、と私は思った。
Img_1189 さらに、このお店の意外な見所は、文庫売り場の奥にもあった。なんと、2メートル以上幅のある棚にぎっしり面陳で矢崎在美さんの「ぶたぶた」シリーズ(光文社文庫)が、関連のコミックスとあわせて面陳されている。おまけに、棚の上にぶたのぬいぐるみや紙粘土で作ったピンクのぶたぶたキャラまである。
これがほかの店なら驚かない。だけどジュンク堂だよ。「ぶたぶた」のような知る人ぞ知る作品を、コーナー作って、しかもキャラグッズ(しかも手作り)といっしょに並べるなんてことはやらないものだと思っていた。しかも、この三宮店で。
「そうですね。ほんとはうちではあまりやらないんですけど、これくらいならいいかな、と少しずつ売り場を増やしていったら、今みたいになってしまいました」
と文庫担当の方は笑っておっしゃった。きっと売り上げがついてきているから、上司の方も文句が言えないんでしょうね。あるいは、密かに「ぶたぶた」のファンだったりして。
「若い女性向けかと思っていたら、意外とサラリーマンの方にも受けているんですよ」
とのことだ。
いやいや、奥が深いぞジュンク堂。とにかく一冊でも多くの本を並べる、図書館のような本屋というイメージを、まさかこの三宮店で裏切られるとは。これだから、書店周りは愉快だな、と思いながらお店を後にした。

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NO.77 海文堂書店(神戸市中央区)

Img_1132 海文堂。
音だけで聞いたら、怪文堂。いや快文堂でもいいが。
ジュンク堂と並んで、神戸では超有名書店である。
といっても、私が知ったのは、名古屋の正文館のキュートな女子書店員、清水和子さんに教えてもらったから。「私の理想の書店なんです!」と、目をきらきらさせながら言われた日には、行かないわけにはいかないでしょう。行く直前に清水さんにメールしたら、さっそく返事が来た。「海文堂さんはとても素敵な書店さんだと思います。店内にいると嬉しくて羽がバタバタする感じです」だって。なんて可愛いんだ、清水さん。
んなわけで、清水さんをバタバタさせる海文堂の正体を見極めるべく、海文堂に乗り込む。

Img_1134 アーケードのある元町商店街、街の本屋というにはちと規模がでかいが、まあ一見、普通の外観。だが、一歩足を踏み入れると、何か空気の色が違う。全体がセピア色がかっている。
これ、なんだろう。本とか本読みの念が長い年月の間に結晶化して空気中に漂っている感じ。名古屋のちくさ正文館とかでも同じ匂いがあった。お洒落な新刊書店では絶対出せない空気感。むしろ古本屋のそれに近い。

Img_1135_3 で、清水さんから紹介された平野義昌さんと、店長の福岡宏泰さんにご挨拶をする。で、話を伺おうとすると、平野さんからばさっと資料一式を渡された。
こちら、取材が多いので、よく聞かれる質問を文章にまとめてあるのだ。せっかくだから、以下に一部引用する。

  ・1914年、海事書の専門出版社として創業。その後、海事専門の小売書店を経て、総合書店に。
・海文堂通信として「月刊海会(カイエ)」を発行。A41ページ、両面印刷。3000部発行。4月号で通巻81号。
・「海会」別冊として「神戸と本」をテーマに、年2回「ほんまに」という雑誌を発行。500部。通巻11号。
・1階に「神戸の本」コーナーを充実。商業出版以外のもの、阪神・淡路大震災を語り継ぐ棚も継続。
・2階の海事書ゾーンに「港町グッズ」コーナーを精力的に展開。
Img_1152_2 ・児童書コーナーの品揃えと担当者の児童書に対する熱意は、他書店と一線を画す。
・2階奥のギャラリースペース”Sea Space”で、随時イベントを開催。
・神戸の古本屋とタッグを組み、店内に3つの古本屋の棚を常設。多数の古本屋の協力を得て、「海文堂の古本市」も定期的に開催。
・毎月、スタッフが入れ替わりで「海文堂オリジナルブックフェア」を行う。

Img_1157_2 あえて、海文堂の活動についてのみ引用したのは、これを見ただけで海文堂のスタンスがわかると思ったから。普通に本を仕入れて売る、以上のさまざまな試みをやっている。おそらくここまでの活動をしている書店は、全国でも類を見ないだろう。
あ、これ以外にも、もちろんHPはやっていますし、

http://www.kaibundo.co.jp/honyanome/honyanome.htm

Img_1173_2 そのほかにも、平野さんはお手製のフリーペーパー「週刊奥の院」も出しておられます。こちら手書きでA4両面コピー。その週目に付いた本を平野さん流の独特の語り口で紹介するもの。紹介というよりエッセイのようだ。平野さん曰く「すけべ通信」。でも、そんなにやばいペーパーではありません。新刊情報に、ちょっとだけ平野さんの趣味丸出しの本コーナーがあるだけで。「今週のもっと奥まで」って、コーナータイトルもいかしてる。
それから、この平野さん、海会に連載した「本屋の眼」をまとめた同名タイトルの本をみずのわ出版から上梓されている。その番外編とも言うべき「神戸本屋漂流記」を同社のHPに連載している。

http://www.mizunowa.com/soushin/honya.html

どんだけ書くのが好きなんだ、平野さん。私より書いているんじゃないか。実に精力的に活動を行っている書店だし、スタッフでもある。
まあ、これだけで圧倒されてしまって、もう聞くことなどなくなってしまった感じ。それに、この平野さん、ひと癖もふた癖もある方だから、こちらが投げた質問に、ストレートでは返してこないしな。
というわけで、質問は早々に切り上げ、店内を案内してもらうことにした。

Img_1185 まあ、そこここにこだわりが詰まっている。
まず、入ったところに、「中村佑介グッズと本フェア」として、セーラー服の少女が印象的な兵庫出身のイラストレーター中村佑介の画集やトランプ、絵葉書を置いたコーナーがある。
休刊の危機にある古書専門誌「彷書月刊」を応援するためのバックナンバーのコーナーがある。
「本の雑誌」の編集スタッフがお奨めする日記本フェアをやっている。
「海文堂店長身辺整理の蔵書放出100円均一フェア」もある。
柱のところのImg_1141 書棚はちんき堂という古本屋の本が並んでいる。上記5つのことが、入り口からわずか3、4メートルくらいまでのところで、展開されているのだ。
古本コーナーがある、というのは最初にいただいたレジメにも書いてあったけど、古本屋が提供した本だけでなく、スタッフが持ち込んだものもこっそり隅っこに隠れて売っているんだそうな(店長のは、堂々と出していましたけど)。
もちろん、新刊書、話題書は普通のベストセラーも並んでいるし(平Img_1140 野さんの「本屋の眼」も、もちろん新聞の切り抜きといっしょに平積みで飾ってある)、売れ筋は「1Q84」だったりもするけれど、週間ベスト10の2位に「こうべ文学散歩」(神戸新聞総合出版センター)が来ていたり、梅原猛の「葬られた王朝」(新潮社)や井上ひさし「ふふふふ」(講談社)もランキングに入っていたり。新書とはいえ岩波が3冊も入っているんだな。岩波書店の品揃えがいいことも、この店の自慢のひとつだったりする。このベストセラーリストからわかるように、お客は男性の中高年が多いのだが、
「清水さんではないですけど、意外と若い女性のファンもうちは多いんですよ」
と、ちょっと得意げな平野さん。わかるわかる、文系女子の心をひきつけるような知的な雰囲気があるもんな。レトロな感じも女子好みだし、女子の好きな児童書 のコーナーも充実しているし。
Img_1156 女子ウケはどうかわからないが、音楽・映画・芸能関係の本は、文庫も単行本もいっしょに並べた文脈棚。文庫まで混ぜて、というのはちょっと珍しい。でまあ、音楽についてだけいうと、妙に60年代70年代が妙に充実している。はっぴいえんどだの、岡林信康、友部正人、吉田拓郎といっしょに、クレージーケンやECDの本がいっしょに並ぶ。どっちにしろ、渋い選定だが。忌野清志郎が平積みになっているのはともかく、高田渡関係が2冊も平になっているのはなぜ? いまだに追悼特集が続いているのか。そりゃ、60年代フォークをレスペクトする人には、絶対的な存在の人ですけど。
Img_1144 ほかにも、天井や壁のところに来店した有名作家のサインがあったり、古本コーナーとか、神戸本コーナーとか、ちょっとしたところに、オリジナルなコーナーがあるので、見ていて飽きない。もちろん、ふつうに棚に並んでいる本だって面白いし。各棚、きっちり担当者がいて管理されているからこその、ユニークな品揃え。へー、こんな本があるんだ、という発見も多く、時間が経つのを忘れる。いろんな説明の言葉よりも、幾多の活動よりも、この棚こそが海文堂の存在そのもの。
あ、2階には海文堂の海文堂たる由縁、海事書専門コーナーもあるし、ギャラリーもあるし。これでカフェとトイレが併設されていれば、丸一日、いられるだろうな、と思う。
とにかくもう、圧倒的な存在感、圧倒的な棚。書店の決まりごとなど取っ払ってしまったような自由さ。
「いえ、うちは普通の町の本屋ですよ」
Img_1178_2 と、レジに立った平野さんに替わって説明してくださった北村友之さんも言う。この人が、芸能関係の棚を作っている。年齢はまだ30代か。60年代は絶対、知らないよね。で、「町の本屋」というのが、この店のポリシーであるらしい。最初にいただいたレジメでもそこを強調していたし、平野さんもそう言った。町にある本屋なのは間違いないが、これだけ棚が個性を主張している本屋はそんなに見たことがない。あの、芸能関係だったら、アムロちゃんとかエグザイルとか、嵐やAKB48でコーナーを作るのがいまどきの町の本屋さんだと思うんですけど。あの渋い並びは何? 芸能に限らずそれぞれのコーナーが声高に主張しているんだけど、それでも、海文堂という器がそれをしっくりひとつにまとめているような気がする。何をやっても、この空間だったらOK、みたいな。
Img_1153 「でも、たとえば京都の恵文社さんなんかは全部自分で注文して仕入れているわけですから、そっちの方がすごいと思いますよ」
それはもちろんそうですけどね。恵文社と違ってこちらには付録つきの雑誌もありましたよ。でも、両方あることが、よけいおかしい。そのアンバランスさにパワーを感じる。私の羽はバタバタしませんでしたけど、ずどーんと穴の深いところに引っ張られたような気持ち。賑やかな普通の商店街の中に、あるはずがないものを見たような。

店を出たら妙に空が明るかった。いや、まだ4時だ。明るいのは当たり前。だけど、店のImg_1179 中は、別の時間が流れている。とっくに夜になっているかと思っていた。だまされたような気持ちになった。海文堂という時間を超越した異空間にいると、平穏な日常の方がなんか不思議に思えた。

やっぱり怪文堂だ。
だけど、すんげえ面白い、と思ったのは、私もその毒にやられたからかも。
快文堂でもいいや。
海文堂の衝撃を、自分の中でうまく消化できないまま、元町商店街を後にした。

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No.76 ジュンク堂書店 神戸住吉店(神戸市東灘区)

Img_1129 さて、版元の久保田さんに勧められていた神戸の書店巡りは、西宮→芦屋→住吉→三宮

というルートでそれぞれのジュンク堂を周ること。残念ながら海文堂さんのアポが3時に取れていたので、この順番で周ることはできなかったが、せっかくのアドバイスなので、せめて周れるジュンクだけでも周ってみようと思って、こちらも訪ねてみた。
なるほど、芦屋→住吉→三宮と、駆け足で周ってみると違いがよくわかる。芦屋も三宮も昔の名残を残していて、私の知っているジュンク堂とはちょっと違うImg_1131 のだが、この神戸住吉店は、いわゆるジュンク堂だ。800坪とか1000坪とかある広さで、背の高い書棚がずらりと並んでいる。ある意味、ほっとする。
しかも、昼にいったせいなのか、もともとここがそうなのか、売り場は混雑している。しかも、文芸担当者の方は、何かトラブルがあったとみえて、電話応対に掛かりきりだ。
さすがにこの状況で取材はできないな、と思い、営業セットだけ渡しImg_1130 て退散しました。
もっとも、さすがにジュンク堂、「銀盤のトレース」は、ちゃんと棚差しになっていましたけどね。

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No.75 ジュンク堂書店 芦屋店(芦屋市大原町)

Img_1119 芦屋。
素敵な響き。関東在住の自分でも知っている超高級住宅地。
「細雪」「華麗なる一族」「ミーナの行進」それに、田辺聖子さんの小説にもよく出てくるしな。
なんてミーハーな動機でここを選んでみる。
だが、訪れたジュンク堂芦屋店は、駅前のラポルテ東館というビルの3階。同じフロアにはCOOPのショップがある。はなはだ庶民的な場所に位置している。それも、COOPとの境目があいまいなので、知らない人が見たら、COOPの書籍売り場と勘違いするかもしれない。
Img_1120 店自体もちょっと古い感じがするし、芦屋だから特別という感じではない。同じジュンク堂だったら、たとえば梅田のヒルトンプラザ店とか、堂島の大阪本店の方がお洒落な店構えだ。
なんだ、フツーじゃん、と第一印象で思ったのは、間違いだったとすぐにわかることになる。

西畑誠店長によれば、この店はジュンク堂チェーン全体でも4番目に古いお店で、その時から同じ場所にあるそうだ。什器も初期のものなので、150 センチかそれくらいの高さで、前には平台もある。ジュンクのほとんどのお店でおなじみの、平台のない図書館のような高さの棚とは異なっている。いや、正確には2年ほど前に増床した部分については、いわゆるジュンク棚なのだが、メインの部分はそうではない。
店全体が少し古い感じの印象を受けたのは、そのせいかもしれない。
「売れ筋は、やはり女性客向けのものです。平日のお客様は、やImg_1121 はり圧倒的に女性が多い。それで、目立つところにはビジネスマン向けの本を置いています」
なるほど、店の一番外側の部分、目立つところには、ビジネス書やスポーツ関係の本など、男性向けの本が置いてある。ところが、一歩裏に周ると、両サイドに女性向けの料理書や実用書が並んでいたりして。
「土日に奥様といらっしゃった男性のお客様に、こういう品揃えの店Img_1123 だと印象づけていただいて、また来てくださるようになれば」
ヒット作についても、ほかのお店とそれほど大きな差は見られない。池上彰さんのミニフェアをやっていたり、地元出身の内田樹さんの本も面陳していたり、それはそれでお客様の知的レベルの高さが感じられるが、すごく特別というわけでもない。
だが、ふとお店を見回していて、違和感を覚えた。なんだろう、と思ってよくよく考えると、店の奥の棚の一番上に、本がまったく差さっていないのだ。閉店近くの店でもない限り、そんな状態の書店は見たことがない。それImg_1124 で、その理由を尋ねると、
「うちのお店は年齢の高いお客様が多いので、あの場所はなかなか手が届きにくいと思うんです。2年ほど前に増床して、すこしゆとりができたので、あそこを空けたんです」
うわ、太っ腹。大型書店ならいざ知らず、ここは200坪もないようなお店である。それで、やっていけるのか、と思うが、このお店、増床した影響もあって、ここ数年の売り上げは毎年20%増なのだそう。たいていの店はリーマンショック、それからここ半年の政権交替以降の政情不安定で売り上げが伸び悩んでいるのだが、こちらのお客様は、
「こんな時代だからこそ、勉強せにゃあかん」
と、本をお買い上げくださるのだそうだ。家に書庫があるような、蔵書をたくさん持っているお客様も少なくないし、値段も見ずに何万円もする専門書を買っていかれるお客様もいる。
「クリスマス前に仕掛け絵本を並べておいて置いたら、親子連れのお客様がいらっしゃって、見ておられたんですよ。お子様がそれを気に入られたのを見て、お母様が『それなら全部いただいておきなさい』とおっしゃって、1冊三千円もするような本を何冊もお買い上げくださって」
Img_1122_2 さすが、芦屋。そうでなくっちゃ。
だが、そんなお金持ちのお客様では、接客に気を遣うのではないだろうか。お金持ちほど、細かいところにうるさいというイメージがあるのだが。
「いえ、本物のお金持ちのお客様は優しいです。こちらがミスをしても、『いいよ、いいよ』と笑って許してくださる。気持ちにゆとりがあるんですね」
むしろ、お金持ちを目指して頑張っている人の方が、書店員に対しても厳しいらしい。
なるほどなあ、と感心するが、一方で、それだけこのお店が顧客といい関係を結んでいるということも、あるからなんじゃないか、と思う。わざわざ一番高い棚を空けるなどということは、お客様に対する配慮がなければできないことだし、そういう店だからこそ、いい顧客がついているのだろう。
Img_1127 不況知らずの芦屋の店。西畑店長のお話を聞いていてほのぼのした気持ちになりましたが、ひとつだけ、はっとしたことを。
このお店、95年の阪神淡路大震災の時に被災したのだそうです。幸い、震災後、一週間で店を開けられたのだそうですが、店の床には亀裂の後がそのまま残っていました。以前とは決して同じではないのです。西畑店長は、亀裂の跡を私に見せながら、
「あれは多くの人の運命を変えた出来事でしたね、ほんとうに。ジュンク堂の経営陣も、あの震災があってから、関西だけの商売ではダメだということで、全国展開するようになったんですよ」
と、しみじみと語られていた。
ああそうだったのか。確かに、我々関東在住の人間にとっては、ジュンク堂の東京進出、それに全国展開というのは唐突な気がした。バブルもはじけたあとに、なんで、と思っていたくらいだ。震災がそのきっかけだったとは。
この店でも、後に周るほかの神戸のお店でも、「ご当地本」のところには、震災関係の本が並んでいた。我々、被害にあわなかった人間はすぐに忘れてしまうけど、阪神淡路地区の人たちにとっては決して忘れられない出来事だし、忘れてはいけないことなのだ。
たぶん私も、これからジュンク堂を見るたびに、このことを思い出すだろう、と思った。

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NO50.大垣書店四条店(京都市中京区)

Img_0781 さて、京都最後のお店は、ここ大垣書店四条店。京都を中心に展開している大垣書店グループの中でも、まだ新しい店だ。こちらの店長の赤井良隆さんを訪ねることを、版元の営業の方に薦められる。

ガケ書房、恵文社一乗寺店を巡った後、都心部に戻ってくると、ここが同じ京都とはとても思えません。四条は銀座とか新宿とあまり雰囲気が変わらない。新宿区の住人としては、こっちの方が馴染み深い感じなのですが。
こちら大垣四条店も、完全にビジネスマン対応。中に入って、ざっと見渡しただけでわかりました。文芸書のスペースよりも、ビジネス関連の棚の充実ぶりがすごいんだもん。

で。こちらの赤井さんにご挨拶して取材をお願いする。
1.こちらの客層は?
やはり四条通りというビジネス街に面しているので、ビジネスマンが多いです。それを想定して作られたお店なのですが、女性のお客様も意外と多いですし、そういうお客様は全然、違うな、と思います。文庫、文芸、語学、料理など3,4冊買われる方が多いです。昔はビジネスマンの方もビジネス書を1度に5冊買うような方も多かったのですが、今は買い上げ単価も低いですし、点数も少ない。女性のお客様の方が熱心ですね。
でも、女性の目は厳しいです。うちの場合、可愛い可愛いものはむしろ駄目。付録付きの雑誌にしても、ほかの書店でよく売れるようなものが駄目だったり。ありふれたものは駄目なんですね。それより、たとえばスタイリストさんの本でも、一般的には有名じゃないけど、業界ではカリスマ的な存在の人、というものが売れる。ファッションにも詳しい方が多いし、目が肥えていらっしゃる。
それに、問い合わせについても厳しいですね。在庫がないとお答えすると「入っていたの?」と聞き返される。自分の好きな本を入荷する店かそうでないか、見極めようとされるのですね。だから「入ったけど、すごく売れてなくなってしまったんですよ」と、お答えすると、「そうでしょ」と満足される。その辺は京都らしい、と言えるかもしれません。
ときには「何冊入ったの?」と聞き返されることもあります。それで入荷した点数が少ないと、駄目。入荷数については、こちらもコントロールできないことがあるのですが、その辺はなかなかご理解はいただけないですね。
2.ほかに京都らしさ、というのはどういうところだと思いますか?
京都は都会ですけど、案外狭い。知り合いの知り合いが知り合いだったり、とか人間関係が密だと思います。だから、いろんな目で見られていると思うと、気が抜けないですね。
それから、京都の書店は仲がいい、と思います。とくに、うちとふたば書房さんとは社長同士が仲がいいので、20年くらい前からいっしょに版元さんを招いて和しょう会ということをやっております。かわりばんこに主催して、くつろぎながら企画の話をしたり、交流を深めたりします。それぞれがフェアなどにどういう取り組みをするのか、今回は勝った、負けた、と切磋琢磨して面白いです。
3.仕事をやっていて楽しいと思うことは?
そうですね。各ジャンルの担当ですとパズルのピースという感じになりますが、店長ですと好き勝手に棚が作れるということでしょうか。これだけスペースがあると、いろんな組み合わせができますしね。
4.こちらのお店の特徴とか、自慢はありますか?
うちは路面店ではなく、ビルの2階にあるのですが、入ってすぐのところに雑誌がない、ということでしょうか。一番奥の、窓際のところにあるんです。普通は専門書を置く場所なので、この配置を決めた時には、馬鹿か、とも言われました。でも、わざわざ2階まで上がってきてくださるお客様ですから、奥に雑誌があったとしても、そちらまで行ってくださるだろう、と思いました。雑誌コーナーには人が多く集まりますから、通りからうちの店を見上げた時、人が多そこそこ入っているように見えるだろう、と思ったのです。そうするとお客様を呼びますから。
ほんとはもっと棚とか動線どかいろいろ手を入れたいのですけど、まだオープンしたばかりですし、その時期ではない、と思います。
5.将来的にやってみたいことは?
街中で変わったことをやっている店というのが、京都にもあっていいんじゃないかな、と思っています。たとえば東京の「BOOK246」のように、旅の本だけ集めて一軒作るとか、コンセプトの強い店をやってみたいですね。
実はこの店を作る時、世界各国を俯瞰して見るような棚作りをしたかったんです。アジアのゾーンとかヨーロッパのゾーンとか、そこにはその関連の本がなんでもある、というような。だけど、企画段階で残念ながらボツになりました。
でも、たとえばせっかく京都なんだから、京都関連の本だけ集めてもいいんじゃないか、と思います。京都のガイドブックやグルメブック、京都について書かれたエッセイ、京都在住の作家の本など、京都本だけの本屋があったら楽しいんじゃないでしょうかねえ。

京都の本だけを集めたお店。確かにあり、だと思います。というか、今までないというのがむしろ不思議。ガイドブックだけでなく、京都について書かれた本はとても多いし、在住の作家も多い。京都本の本屋ができれば、地元の人はもちろん、観光客にも喜ばれるんじゃないでしょうかね。
突然、伺って、そんな話を楽しくしておりました。赤井店長、楽しい方です。それに、お店も新しくてぴかぴか。ビジネス書関係は半端なく充実していますので、近隣のビジネスマンの方たちは、ビジネスウーマンに負けないように、こちらでお買い物してくださいね。

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No.49 恵文社 一乗寺店(京都市左京区)

Img_0766_3 さて、ガケ書房を辞する時、山下さんに「これからどこの店に行くの?」と聞かれた。とくに決まっていない、と言うと、恵文社に行くことを薦められた。実は、恵文社については、最初から営業をあきらめていた。およそ私の本を置いてくれるタイプの書店じゃないな、と、ネットなどの前情報から判断していたのだ。営業に来られても、先方も困惑するんじゃないだろうか(ガケ書房も、最初に店の詳細を知っていたら、訪ねなかったかもしれない)。
だから、恵文社の場所さえチェックしていなかったのだが、ガケ書房からバス停三つほどしか離れていないというし、アルバイトの方が親切に地図まで書いてくださったので、行くことにしました。まあいいや。営業にならなくても、素敵な本屋を見学するだけでも。
そう開き直って出発した。

Img_0767_2 バス停を降りて、てくてく歩いていると、電車の駅のホームのところに、恵文社の看板を発見。いやー、可愛い。心踊りますね。
さらに歩いていくと、恵文社を無事発見。ありがとう、ガケ書房さん。わかりやすい地図でした。
で、外見を見てふと思ったのが、「私、この店に来たことがある」
かれこれ7,8年前にファンブックを作るために綾辻行人さんのお宅を一乗寺を訪れた(現在は別の場所に引っ越されています)。そImg_0769_2 の帰りに目について、ふらりと立ち寄ったお店が、確かにここだった。まだセレクト書店として有名になる前で、素敵な本屋を発見した喜びにテンションが上がって、3冊くらい買い込んだ記憶がある。綾辻さんも常連だそうだが「あそこには僕の本は置いてないんですよ」と言って笑っておられたっけ。
にもかかわらず、恵文社を訪ねたことがない、と思い込んでいたのは、その時、ギャラリーを見た記憶がなかったから。恵文社=ギャラリーのある書店ですもんね。その時は急いでいたので、奥の入り口を見落としていたらしい。改めて訪ねると、どうしてあんなに広い入り口を見落としていたのか、理解に苦しむのだが。

Img_0774 ともかく、ここは絵になる店だ。どこを切り取っても素敵だ。古民家を改造した店内。漆喰の壁、暖炉、アンティークの家具。奥にはギャラリー。訪れた時は「たくさんのふしぎ」(福音館)の表紙イラストの展示をしていた。売っているのも、本だけでなく、CDや雑貨、アクセサリーもある。ただ置いてあるだけでなく、ひとつひとつがセンスがいいし、置き方にも工夫がある。書店というよりは、美術館に併設されたショップのようです。
それで、ちょっとだけでも話が聞きたい、と思って、店長の堀部篤史さんにご挨拶しました。わざわざ遠くから来たのを不憫だと思われたのか、レジをやりながら、少しだけ取材に応じていただけることになりました。

Img_0776 1.仕事で気をつけていることは?
基本的なことです。いろいろ仕事が多い店なので、掃除とか片付けとかをスタッフが欠かさないように注意しています。
2.仕事をしていて楽しいと思うときは?
いろいろ企画したり、よそで推していない本を紹介して喜ばれたりする時ですね。
3.印象に残る企画は?
いま開催している「たくさんのふしぎ」です。いつも最新の企画が一番だと思っていますから。
Img_0777 4.この店ならではのヒットは?
のばら社の「図案辞典」です。かなり古いタイトルで、本来は実用書なんだけど、若い人向けに「レトロなイラスト集」としてご紹介したところ、たくさんの反響があった。もともとの文脈と違うご紹介をして売れたということで、印象に残っています。
それから、デザイン絵本やアーティストの絵本を大人向けに売るということも、うちではかなり早い時期からやっていますし、うちの店の定番になっています。
5.これからやってみたいと思うことは?
時代の流れにあわせて存在していくこと、それ自体が目標です。

Img_0778 200坪ほどのお店はお客さんでいっぱい。ガイドブックにも載っているお店だから、観光客も多いようだ。お忙しそうなので、ほどほどで切り上げる。「事前に連絡いただけたら」と、堀部さんには言われたが、確かにそうでした。飛び込みで行くようなお店ではありませんでした。すみません。
でも、楽しい店でした。配本がなく、全部注文して本を仕入れるというだけに、一点一点が考えられた品揃え。確かに、わざわざ足を伸ばして来る価値のある店だと思いました。下手な美術館や観光名所よりよほど面白い。
今度は観光ついでにここに来たいと思いました。

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No.48 ガケ書房(京都市左京区)

ツイッターで「京都のよい書店を知らないか?」と投げたところ、返ってきたのがこのガケ書房。名前しかわからないが、推薦されたので行ってみることにする。そういうノリの軽さがこの営業では大事なのよ、と思いつつ、調べてみるとバス便しかない。銀閣寺の近くの、白川高校前というバス停だそうだ。
うーむ、これだけのために半日潰すことになるか。わざわざ出掛けて、空振りだったらたまらないな。
で、とりあえず電話で営業の予約を取りつけた。自分で事前にアポをとったのは初めてですよ。ほとんどが飛び込みか、それができないお店には版元にアポを頼んでいるので。なんとなく飛び込みよりも、アポ取りの方がやりにくいと思ってしまうのです。

Img_0752_2 で、白川高校前。ガケ書房は見るからに変わったお店だった。壁は一面こぶし大の石がびっしり並べられ、ネットフェンスで覆われている。窓は無い。そして壁から赤い車が半分飛び出ているのだ。
「なんじゃ、こりゃ」
と普通は思うよね。外からは中の様子が全然見えないし、およそ本屋らしくない。事前に営業の予約をしていたので、私はずんずん中に入っていけましたけど、普通の人はためらうだろうな、と思う。

で、いきなりレジへは向かわず、一通り店内を偵察してみる。40坪くらいだから、そんなに時間は掛からない。予想通りの凝った品揃え。ビジネス書だの参考書の類はなく、小説、漫画、絵本、写真集などが充実している。絵本や写真集は、レコードのジャケットのように一冊一冊離して面出しされている。もちろん、いまどきのベストセラーは置いていない、というか、むしろなつかしい本が並んでいる。古本の棚もあるしね。掛かっている曲はビートルズのカバーバージョンだし、全体にレトロな空気が漂っているのだ。
こういう店を作るのは、フラワーチルドレンとかそういう世代の人かと思ったら、店長の山下賢二さんがお若いのに驚いた。どう見てもまだ30代、こういう仕事をしている人は年齢より若く見えることもあるが、それでもまだ40にはなっていないだろう。

Img_0754_2 1.ガケ書房という名前はどうして名づけられたのですか?
20代の頃は関東の出版社で編集の仕事をしていました。その頃、プライベートで雑誌を作っていてんです。いろんな人の作品を、写真とコピーで紹介して1冊にまとめたものですが、その名前がガケ書房だった。それをそのまま使っています。
雑誌に名前をつけた90年代前半頃は横文字の名前が流行っていました。だからこそ片仮名の、ユーモアはあるけど意味がないような名前にした方がインパクトがある、と思った。それで、ガケ書房。
2.編集者からなぜ書店主に変わったのですか?
出版社の後、印刷所とか古本屋、新刊書店と、本に関係する仕事にいろいろ就いたのですが、本を売る行程の時に僕の中で幸せな瞬間があることを確認したんです。それで、物を書いてまとめるより、面白い空間を作ってみんなで共有できるようにしたい、と思うようになったんです。
Img_0764_3 僕は子供の頃、本屋という空間が好きで、並んでいる本を次々立ち読みして、文字通り本屋のおじさんにハタキを掛けられるような子供だった。全部を見ないと気がすまなくて、ずっといましたから。だから、そういう場所を自分で作りたかった。
テーマパークのような、そこに行くと心が半音上がる瞬間を感じられるような場所。小さい頃、僕にとって本屋はそういう場所だったし、ここもそういう場所であってほしい。
3.この場所を選んだ理由は?
もともとが京都出身なので、京都に店を開くのは決まっていたんですが、僕は若い人に来てもらいたかった。そうなると、中心部の繁華街か、大学の多いこの辺 りか、という選択になった。中心部に居る若者は流行を追いかけるだろうけど、僕は自分の生活を追いかける若者に来て欲しかった。そういう店がここなら可能 だろうと思って、この場所を選びました。
こういう外観にしたのは、店の名前ではなく、建築物として覚えてもらいたかったから。車を付けたのは、窓のない閉鎖的な外観なので、あれがないとますます 閉鎖的になるだろうと思ったから。あれがあることで、外からの突っ込みどころがある。話題にも出来るし、コミニュケーションの手段として有効だと思ってい ます。
4.どういう規準で本を選んでいるんですか?
店を始めて7年間のデータから、客の嗜好を想定して選んでいます。老若男女を問わず、来るお客さんに喜んでもらえる品揃えにしたい。僕自身の好みというわけではありません。
Img_0761_2 でも、最初からこの状態だったのではなく、取次ぎの人と相談をして、オープン当初はわかりやすい商品も半分くらい入れていたんです。雑誌で言えば「anan」とか「JJ」とかね。そっちの方がお客さんにも喜んでもらえるだろう、と思ったんです。
ところが、開店してみると、それが不評だった。この店構えなので、お客さんは店に入るのに覚悟がいるし、その分、期待もする。それなのに、普通の書店に置いてある本を見ると、がっかりするんだそうです。それで、わかりやすい本はやめてしまいました。
こういう店をやっていると、セレクト書店と言われるんですけど、そのつもりはありません。自分の店で売る商品を選ぶのは小売の基本ですから。本の場合は取り次ぎが入るので自分でイニシアティブを取るとセレクトショップと 言われてしまいますが、八百屋とか魚屋とか、みんなやっていることだと思います。
Img_0759_3 5.商売としての書店経営はいかがですか?
生きていくのはたいへんだなあ、と思います。だけど、奇跡が起こるんですよ。365日のうち360日くらいは何か奇跡が起きる。それで、なんとか続けていられる。
6.店を見ると、どこかレトロな感じがしますね。本もなつかしいものが多いですし。
そう言っていただけると嬉しいですね。僕は実は昭和という時代が好きなんですよ。戦前から戦後の復興期の混沌も、経済成長の前向きな時代、バブル期のギラギラした時代も、みんな好きなんです。昭和好きというのが自分にとってのキーワードになっていて、音楽とかアートとか食べ物とかも昭和を意識している。携帯電話やファックスが嫌いで、仕事の連絡も電話だけにしてほしい、とか。この店には、そういうフィルターが掛かっているかもしれません。
7.書店をやってよかったと思うことは?
いろんな人に出会えたことですね。ここで出会った人の90%は勤め人をしていた頃には出会わないようなタイプの人たちです。いろんな人と話をすると考え方も広くなるし、学ぶことも多い。もともとはあまり社交的じゃなくて友人も少なかったんですが、店を始めて友達も増えました。それが一番いいことですね。
Img_0758_2 それに、先の読めない面白い出会いもある。うちの店には小さな庭があって亀が放し飼いになっています。あれは最初からそうするつもりだったわけではなく、「作らせてください」と、飛び込みで来た人がいたんです。僕は面白いと思っ たら「いいよ」となんでも言ってしまうので、その人に任せてみた。それでああいう形になったんです。
この店を始めたことで、著名なミュージシャンや作家の人も来てくれる。昔ファンだったような人にも来て貰えるのは、書店冥利につきますね。

リアル書店の、ネットにはない強みとは何か。
それは”場”だと思う。
ただ商品が並んでいるだけでなく、自分の好きなものが集まっている。そこに、会って楽しい人がいる。行くたびに、面白いことが起こっている。新しい発見や刺激がある。
Img_0763 自分の行動範囲の中にそんな店が一軒あったとすれば、本を買うという消費目的がなくても、そこに足を向けるだろう。
ガケ書房とはそういう店だ。セレクトされた商品も魅力的だが、空間としても面白い。車の突き出た外観もいいが、天井に少女の絵が書かれていたり、窓に作家の即興の短編が書かれていたり。
書店なのに、店内でライブをやったり、店の一部を占いやカフェに貸し出したり。
面白いことがあれば、やっていくというお店の姿勢がある。それに共鳴する人たちがいる。そうして作り上げたのが、このガケ書房という場なのだ。

Img_0765_2 だから、ここは面白い。店が何かを提供してくれる、というだけでなく、自分たちもこの場に何かを加えられる、そんな気持ちを起こさせる。そして、それが叶えられるから、この店は新鮮なのだ。

それが成立可能なのは山下さんという店主の人柄によるものであり、京都という土地柄もある。最近では東京にもセレクト書店は増えているが、知識人やミュージシャンをも集める魅力的な”場”になっているところは、どれくらいあるだろうか。
代理店の仕掛けではなく、個人の息遣いが感じられるような、その土地に根付いて、周りの人々の好意で発展しているような店がどれだけあるだろうか。

こんな店が、うちの近所にも欲しい。
強烈に思いました。

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No.47 三省堂書店京都駅店(京都市下京区)

Img_0738 「京都に行くなら、三省堂の中澤さんを紹介しますよ」と、ありがたいことに、以前取材したトキワ書房の宇田川さんに言われていた。紀伊國屋書店梅田本店の百々さんも、京都ならここ、と言っていたし、ツイッターでもこちらの店は評判がいい。伺うことを楽しみにしていたのだが、版元経由で連絡でもなかなか連絡がつかない。ぎりぎりになって発覚したのは、私が京都に着くその日に三省堂京都駅店が新装オープンだということ(正確には、京都駅店の入っているザ・キューブという地下街全体がリニューアル・オープン)。
なんというタイミング。新装開店なんて数年に一回、あるかないかの時期にぶつかるなんて。私自身はすっかり営業をあきらめていたが、版元の方たちが粘ってくださって、リニューアル翌朝に中澤さんに挨拶に伺う約束をとりつけてくださった。ありがたいことである。

Img_0740 で、文芸売り場をひと目みて「これはすごい」と理解した。とにかくPOPが多い。それも、細かい字でみっちり文章の入った長文のPOP。その本をちゃんと読んでいなければ、気に入っていなければ、絶対かけないPOPです。書いた人の熱意がびんびん伝わってきます。いろいろ書店を見ているけど、ここまでしっかり紹介が書かれたPOPはちょっと見たことがない。
挨拶してすぐそのことを中澤さんに伝えると、
Img_0741_3 「社内規定では、書店POPの文字は大きく、はっきりと、と決まっているらしいんです。で も、それを私が知らなくて、最初からこう書いてしまった。それが評判がよかったので、それ以 来、このやり方で作っています。その本に関心があれば、字が細かくても読んでもらえますし、お客様が買おうかどうか判断する材料にもなると思うんです」
それがきっかけで、このお店はPOPが売りになった。文芸だけではない、たとえば実用書のお弁当本のコーナーのところに、フェルトで手作りしたPOPや、紙を二重に重ねて作った立体POPが飾られている。
Img_0748 「サブのアルバイトの人にも、うちではPOPのイロハから教えます。それで褒めて伸ばす。 うちはバイトの子たちがいい形で育っているので、助かっています」
実は、新装開店のために、急遽、間に合わせで作ったPOPもあるというくらい、この店はPOPで売ることが定着している。
「版元で作られたものは、きれいだから目立たせるのにはいいけど、どこにでもある。著者POPは、その人が店に来たという証拠にはなるけど、それでお客様が買うきっかけになるとは思えないんです」
Img_0749 だから、あくまで手書きにこだわるが、自分たちがちゃんと読んだもの、気に入ったものしか書かない、という点も徹底している。実際、そうでなければ、あんなに詳細なコメントは書けないし、説得力のある文章にもならないだろう。
「人気作家の話題作のように、ほっといても売れるものはあまりPOPはいらない。売れる場所に置けば、自然に売れていく。だから、なるべく日の目を見ないような作家さんの方を推したい、と思います。幸い、うちには小説好きの、本読みのお客様がついていてくださるので、文芸比率も高いですし、新しい作家も仕掛けやすいですから」
Img_0744_2 POP以外にも、こちらでは「文芸書オススメ通信」と題された独自のフリーペーパーを作っ ている。A4の紙を二つ折りにしてA5版4ページにした、手書きのコピーのものだ。それ自体は珍しいことではない。ごくまれに、熱心な書店員さんがこうしたものを作ることはある。売れ筋やお薦め本の紹介、注目作の刊行予定、フェアの予定などを、こうした手段で伝えようとするのだ。だが、驚いたのは、こちらの第56号、朝井リョウさんの「桐島、部活やめるってよ」(集英社)を大きく取り上げているのだが、ただの紹介文だけでなく、朝井リョウさん本人への質疑応答も掲載しているのだ。記事から察するに、こちらから投げた10の質問について、作家本人から文章で回答を得たものらしい。直接作家とやりとりしたのではなく、版元の営業や編集が仲介しているのは間違いない。
朝井さんがデビュー直後の新人とはいえ、フリーペーパーだけのためにコメントがもらえるということは、普通の書店では考えられない。そこまでの協力を版元に取り付けられるという事実が、こちらの店の実力を物語る。そこまでしても版元にメリットがある、つまりその店がそれだけ売る力があるということの証明だ。
このお店はいつからこういう状況になったのだろうか。オープンして、ここはまだ10年も経っていないはずだが。
「そうですね。こんなふうにコメントをお願いできるようになるまでに、5年は掛かったんじゃないでしょうか。最初はこちらの店は配本も少なかったし、サイン本などもお願いできる状況ではなかった。だから、既刊の掘り起こしからはじめて、売れたらしつこく営業の人にアピールするということをやったんです」
Img_0746_2 それを聞いて、やっぱりそうか、と思った。いかに三省堂といえ、最初からいい条件だったわけではない。オープンした時の条件はほかと変わらないのだ。だが、そこであきらめず、できることをやっていく。既刊の掘り起こしということは、たいていの書店ならやれることだったりするのだ。これだと思う本を見つけPOPをつける、目立つ場所に置く、すぐに売れなくても、ずっと置き続ける。おそらく、当たり前の努力を積み重ねたのだろう。そうして既刊で実績を作ると、だんだん新刊の配本にも影響が出てくる。そうして増えた新刊を、さらに売り伸ばす。地味で当たり前のことを続けることで、いつのまにか「京都にこの店あり」と言われる状況を作り上げたのだ。
「もちろん、ナショナルチェーンの強みはありますよね。地方でも三省堂ということで営業の方が来てくださるし、場所も京都駅前の便利なところですから」
それでも、版元と強い関係を築くのには5年掛かった。すぐに結果が出るものではないのだ。そうして花開いたのが、今の結果なのだ。そして、版元も営業だけでない、商品管理や編集などいろんな人との関わりがあり、それが今の仕事に繋がっている。作家の来訪も多い。京都在住の作家も多いし、東京在住の作家でも、京都だったら、と営業に来てくださる方も多いのだと言う。
Img_0751_2 「結局は人の問題だと思うんです。営業の方はどんどん変わるし、どれくらい前の方の仕事を引き継いでくださるか、というのも、その人次第ですから」
そう言って、中澤さんは微笑んだ。

挨拶だけのつもりだったのに、中澤さんの話は面白く、結局ノートを出してメモを取っていました。書店のことだけでなく、自分自身の仕事についても、いろいろ考えさせられました。
たとえば、仕事も5年頑張り続ければ状況が変わる。否、5年くらい続けないと、形にはならない、ということ。自分たちの仕事がいろんな人に伝わり、認められるのには、それくらい時間が掛かるのだ、ということでもある。
それともうひとつ、実は私の本も置いてくださってはいたけれど、POPがついていませんでした。読んでくださっていない、あるいは読んでもPOPを書きたいという熱意がおこらなかった、ということか。
うーむ、まだまだだ、自分。頑張って、中澤さんがPOPをつけてくれるような本を書かなければ、と決意を新たにしたことでした。

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No.46 旭屋書店天王寺MIO店(大阪府市天王寺区)

Img_0732 さて、こちらも紀伊國屋書店梅田本店の百々さんたちのお薦め書店。こちらの西山さんにはぜひ、会っておけ、とのお言葉を受けてやってきた。
こちら天王寺MIOというファッションビルの中にある400坪のどのお店。旭屋さんはお洒落なインテリアのお店が多いと思うが、こちらはブティックの集まるビルにあるという立地条件から、お洒落度がより高く、奥にデザイン関係の本や洋書を集めたコーナーがあったりする。だが、西山さんはざっくばらんな、初対面でもすぐに打ち解けてくださる、いい意味で大阪人らしい方でした。

1・こちらのお店の売れ筋は?
Img_0721 以前、私は本店にいたのですけど、その時のイメージではここは若い女性向けのお店。だけど、実際入ってみると年齢の高い方、ビジネスマンのお客様も多いんですね。天王寺の駅を降りてすぐ、エレベーターでぱっと上がって来れるので便利なんです。だから、そうした年齢層の高い方や男性向けの商品のニーズも高いです。
女性客対象の美容ものはよく売れます。たとえば「バンテージ・ダイエット」(フォレスト出版)は全国2位の売り上げです。男性客にはビジネスもの、東野圭吾さんをはじめとするミステリとか時代小説とか、「もういちど読む山川の日本史」(山川出版社)のような本もよく動きます。
2.仕事で気をつけていることは?
Img_0722 具体的なことで言えば、レジ前の展開を大事にするということですね。うちの場合、ワンフロアなので左端と右端では売ってるものが違います。距離的にも離れているので、それぞれの売れ筋を、小説とか新書とかジャンルに関係なくレジ前に集めて展開してみました。そうすることによって、売れ行きも上がりました。「日本人の知らない日本語」(メディアファクトリー)などは、それで動いた商品ですね。
それから、人気商品の品切れが起きた場合、「○○日に入荷をします」ということを明示することです。以前、綿矢りささんが芥川賞を受賞した後、商品を切らしてしまった。だけど「○月×日に入荷します」と書いておいたら、再入荷後、初回の時よりお客様が来てくださった。そうやってアピールしておくとお客様も気に留めてくださるし、ちゃんと入荷するところにお客様は来てくださるんだな、と思いました。
Img_0735 アピールということで言えば、大きな手書きPOPなどは、後ろの本の邪魔だとか、不統一だとか言われたりもしますけど、整然と置いたらこちらのお客様には、活気がないと感じられてしまうようなのです。梅田とかではまた違うのですが、土地柄なんでしょうね。それで、こちらのお店では、POPで派手に見せることが必要だと思っています。
そうしたことは、お客様にじかに対応してわかることですね。この時間にこの商品の売り上げが急に伸びたのは、ここでDVDを流したからだ、というようなことは売り場に出ていなければわからない。いまでは自動発注とかネットオーダーとかで、誰でも注文ができるシステムですが、やはり人の目とか人の気持ちが大事だと思います。
3.今まで仕掛けたもので、印象に残っている本は?
いろいろありますけど、旭屋全体のデータを見て、ほかより負けているものがあると、置き直しをしたり、並べるものを変えたりしてみます。そういうことで、売れ行きが伸びたり、並べたものが相乗効果で売れたりすることがありますから。
4.印象に残る営業マンは?
Img_0736 みなさん、よくしてくださいますけど、ひとり上げるとすれば新潮社の古沢さんですね。新刊会議の内容をちゃんと説明していただきますし、忙しくても電話をしてきてくださる。ありがたいです。
最近では仕事も機械化されている部分も多いですけど、いざという時は版元も相手を見て判断するんじゃないでしょうか。私はまったく知らない版元でも、直接何度も電話して交渉するようにしています。そういうことをやって、繋がりを作っておくと、ほかの書店にはない状況の時でも、うちだけ入れてもらえたりしますから。
それに、私は版元の方に「やってみてくれない?」といわれた時、あまりことわらないようにしています。スペースがきついな、と思っても、なんとかやりくりしてみる。やってみないといいか悪いかはわかりませんし、こちらもお願いする時がありますからね。
5.接客で印象に残ることは?
本店に居た頃、1階に「おすすめ本どころ」という書評コーナを作っていたんです。いろんなジャンルの本をそこで紹介していたのですが、それをまとめて注文されて、宅急便で送るように手配されるお客様がいました。そういうお客様は印象に残っています。
6.これからやってみたいことは?
もっとPOPを書きたい。全部は無理だとしても、できるだけ紹介していきたいですね。版元からもPOPは送られてきたりしますが、手書きの方がリアルだし、インパクトもあるし。
それから、本店でやっていた「おすすめ本どころ」をこちらでもやってみたいですね。本店の場合は、本好きの5,6人が集まって、小冊子まで作ったりしていたのですが、そこまでいかなくても、天王寺MIO点のお薦めを紹介するコーナーを作ってみたい。新聞で取り上げられたもので、一般に読めそうな本とかを紹介していきたいです。入ったものをただ並べるだけでは、つまらないですから。

熱い方である。こちらに紹介したのは、ほんの一部。仕事のことを語り出したら、いくらでも話が出てくる。ややくたびれ気味だったこちらは、そのパワーに終始圧倒されていた。それに人情味のある方である。ふらっと訪ねてきた作家にできるだけ協力してあげようという気持ちがびんびん伝わってきた。その温かさが、見知らぬ土地で心細い思いをしている私には、すごく嬉しかった。
おそらくこの姿勢のまま、西山さんはお客様に対応したり、棚を作ったり、営業さんに話しをつけたりされるのだろう。「人の目や気持ちが大事」だという西山さんのお話からもそれは伺えた。だからこそ、ほかの書店チェーンの方からも、「大阪で会うべき人」と推薦される人なのだ、と思う。
彼女も店長さんも天王寺MIO店に来てまだ間もないそうだ。主要スタッフがふたりも変わるというのは、お店のてこ入れのためではないか、と部外者は勝手に推測するが(そうでなかったら、すみません)、このパワーがあればお店はどんどん変わっていくのではないか、と思った。今でもお洒落で素敵なお店だが、西山さんやほかのスタッフの個性がこれからどう反映されていくのか、楽しみである。

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No.45 紀伊國屋書店堺北花田店(境市北区)

Img_0708 さて、北花田。ここはとっても遠かった。地下鉄をうんと乗り継いで、ようやく到着した。地下鉄の駅を降りて地上に出ると、青い空、大きなショッピングモール。ここは明らかに郊外。難波だの本町だの梅田だのとは空気が違う。それはそれで、ちょっと不安。このショッピングモールの中に目的の書店はあるのですが。
で、なぜこんなはずれまで来たのかというと、紀伊國屋書店梅田本店の百々さんたちから、「大阪で一番、面白いのは堺北花田の堀江」と聞いたから。何がImg_0709 どう面白いのかわからなかったが、聞いたからには行かないわけにはいかないでしょう。
で、面白い以外ノーヒントだったので、堀江さんが女性だったことに驚いてしまったよ。
なんとなく、男性の、言いたい放題言うちょっと変人。だけど熱意があって面白い。酒を呑むと愉快、みたいな方を勝手にイメージしていたから。失礼しました。
でも、堀江和子さん、こちらが来意をつげると、すぐに了解してくださって、バックヤードの案内してくださった。

1.こちらのお店の客層は?
ニューファミリーと呼ばれる家族層中心です。児童書、コミック、雑誌などを中心によく売れています。売り上げ的には順調です。
Img_0715 2.仕事で気をつけていることは?
商品の回転を速くしたい、ということです。比較的若いお客様が多いので、あまり同じものが置いてあると、飽きられてしまう。来るたびに違ったものを置いてある、と思っていただけるように、と思ってやっています。
ですが、坪面積にも限りがありますし、品揃えを多くすることはできません。必要とされるもの、売れ筋が揃っているように、ということを意識しています。
Img_0719_2 3.仕掛けて成功したこと、こちらで日本一、売ったものとかはありますか?
こちらのお店に来てからですと、「くらべる図鑑」(小学館)です。担当者がオリジナルのポスターを作ったり、版元と相談して当店限定の予約特典をつけたり。安くない本ですけど、1000冊くらい売れました。
あと、うちが一番売った本といえるのは「怖いくらいあたる血液型の本」ですね。こういう実用書系もうちは結構、強いんです。
あとは「AERA BABY」も1636冊売ったので、おそらく日本一だと思います。
Img_0711 現在展開しているのは、「100かいだてのいえ」です。こちらも、担当者が手作りのポスターを作ったりして、大きく展開していますので、よく動いています。
4.接客で印象に残ることは?
以前、こちらでに海堂尊さん、和田竜さんが来てくださったことがあって、サイン本を作っていただいたんです。そうしたら、あきらかに作家の本を持っているお客様が、一種類づつサイン本を買ってくださった。本がお好きな方なんだなあ、と思って嬉しかったです。
5.堀江さんが書店員になったきっかけは?
Img_0712 そうですね。きっかけというより、なぜやり続けているか、という理由は「情報を欲しい人にちゃんと届けたい」という思いがあるからです。社会学部出身ということもあるのですが、かつて阪神大震災を経験したのですが、そのあとの土地とか家とかの関係でいろんなトラブルが起こった。建て替えのこととか、定置借地権とかで揉め事がたくさんあったんです。当時はあまり大きなお店がなくて、私がいた梅田店までわざわざ遠くからそうした関係の本を求めていらっImg_0713 しゃる方がいた。それなのに、求められる本が揃ってなかったりすると、心苦しかった。求められる本をちゃんと揃えるのは私たちの責任だと思っています。
6.書店員になってよかったと思うことは?
こうして著者の方に来ていただけるのも楽しいですし、お客さんに自分で面白かったと思う本をお客さんにも買って欲しい。これ、と思って推した本を買っていただけると嬉しいですね。
7.印象に残る営業マンは?
お世話になっていると言ったら、やはり小学館の方かな。「くらべる図鑑」の時も予約特典など無理を聞いていただいたし。でも、こちらに限らず、営業のみなさんには、いつも無理 を聞いていただいています。ありがたいことですね。
いろんな営業の方を拝見していて、会社の数字に直結するような仕事をしてくださる方がもちろんいいのですけど、こだわりを持って仕事をされる方も魅力的だと思います。
8.自分の書店以外でよく行く店、意識しているお店は?
Img_0716 数字では、やはり(紀伊國屋書店の)本町店や京橋店を意識しています。追いつけ、追い越せ、と思っていますので。
でも、それ以外のことは、そほかの店のことやほかの書店員はあまり意識しないようにしています。ひとりを意識すると、いろんな情報を取れない気がすると思うので。
9.これからやってみたいことは?
立場上、だんだん管理の仕事ばかりになってしまうのですが、現場の仕事がやりたいなあ。自分でもっと本を探したい、アンテナを張っていたい、と思います。

堀江さん、実に頭の回転が速い。こちらの意図をすぐに汲んで、的確な返事を返してくださる。話も面白いし、プロフェッショナルな姿勢も伝わってくる。さらに、せっかく来られたのだから、と拙著のデータを検索 してくださって、堺北花田店での売れ行き状況や、他店での状況を教えてくださる。そこまでしてくださったのは、こちらが初めて。さすが。大阪一おもしろいというのはこういうこ とか、と理解する。
つまり、面白いのでなく興味深いとか、そっちのおもしろいということですね。話していて、すごくおもしろい。全然、飽きない。
こちらのお店が郊外にあるにもかかわらず、京橋や本町にも迫る売り上げを出しているというのは、こうした堀江さんをはじめとするスタッフのプロフェッショナルな姿勢の賜物だろうと思います。
とくに児童書や家族向けの商品の充実、それに見合った展開。店内いたるところにポスターとか、書店なりの工夫が見られます。こちらの近所に住んでいるファミリーは幸せだな、と思いました。

ところで、堀江さんが検索してくださったおかげで、拙著が売れているのは紀伊國屋書店新宿南 店だと知る。「おそらく固定ファンがいますね」と言ってもらえてうれしくなる。これはぜひ、新宿南店にも行かねば、と密かに決意する。

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