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No.145.くまざわ書店アクアシティお台場店

新橋からゆりかもめに乗って台場駅下車。そのゆりかもめの中で聞こえる会話が中国語。
そう、台場近辺は観光名所になっている。なので、台場駅の目の前のアクアシティというショッピングモールの中に来るお客も、ほとんどが観光客。その4階にこの店はある。
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「場所柄リピーターは少ないですね。一見さんのお客さまがほとんどです」
と、相原聡子店長は言う。お客さまの8割くらいは観光客で、日本と海外のお客さまが半々くらい。ほかは湾岸のタワーマンションに住み人たちが外食したついでに立ち寄り、まとめ買いをするというケースが多い。ふつうの書店ではメイン層である高年齢のお客さまは、この店にはほとんど来ない。だから、ほかでは人気の健康系のベストセラーも、この店では動かない。店舗は120坪ほどだが、通路を隔てて3ヵ所に分かれている。本屋としたら条件がいいとはいいにくい。
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しかし、その店舗の形態を逆手にとって、一見さんにアピールする本ものを通路側に置く、というのがこの店の戦略だ。通路の目立つところに映像化関連の書籍を並べたり、人気芸能人の写真集を置いたり。フジテレビが近いのでその関係は外せないが、それ以外にも「筋肉体操」や「チコちゃんに叱られる」、「凪のお暇」など、話題になっているものはどんどん展開する。子どもが「あっ」と声をあげ、カップルが立ち止まってチェックするような、そういう展示を心掛けている。写真集では新垣結衣の二冊が真ん中に置かれている。これは海外のお客さまに人気だという。
観光地に来てまで本屋に行こうとするお客さまは少ないが、そういう方たちが思わず足を止めれば成功だ。なので、この店の展示はポップでとても楽しい。最近文具コーナーを新設したが、カラフルなシールやマスキングテープ、匂いのする時計など、小さくてかわいいものが通路脇に並んでいる。この辺は、海外からの観光客にアピールしそうだ。
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「イメージとしては、ふつうの新刊書店とヴィレッジバンガードの中間くらいかな。ほかのくまざわ書店の人間には『訳が分からない』と言われたりもしますが(笑)」
確かに、くまざわ書店と言えば、人文や社会などの本が厚いことで定評がある。もちろん、この店にもそうしたコーナーはちゃんとある。まとめ買いしに来られるお客さまたちには、店の奥に進めばしっかりした品揃えであることを示し、購入に繋がるようにしなければならない。新聞の書評コーナーもあるし、はじめての韓国文学というコーナーもある。早川書房のフェアもやっている。ディストピアもののミニフェアで、「1984」や「動物農場」のノートも置かれていて楽しい。だが、通路脇の展開が印象が強く、ぱっと見ではそういう心遣いは伝わりにくいのだろう。だが、こうした店舗にしたことで、以前より売り上げは上がった。固定観念にとらわれず、店のあるべき姿を模索していったことの成果なのではないだろうか。
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さらに、この店の立地で特徴的なのは、TAX FREEのカウンターのすぐ隣にあるということ、同じフロアにノイタミナショップ&カフェシアターがあること(ノイタミナとは、フジテレビ系列の深夜アニメ放送枠のこと)。そこを目指してくる海外のお客さまのハートをつかむのも大事な作戦。そのため昨年増床したのを機に、カウンターのすぐ手前の30坪ほどの売り場をコミック専門のコーナーとして独立させた。昨年は「バナナフィッシュ」関連書が爆発的に売れたそうだ。そういう店は全国探してもなかなかないだろう。いまはノイタミナシアターで「サイコパス」の先行上映をしているので、それを大きく展開している。
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「いまはネットですぐに日本のアニメのことが伝わるので、海外のお客さんでもとても詳しい。勉強しないとついていけないですね」
ちょうど訪れたアジア系の女性二人組に、相原さんが質問をされた。後で聞くと「アイドリッシュセブン」というスマホゲームから発生したコンテンツについての本だったそうだ。私は不勉強で知らなかったが、アイドル育成と音楽ものの要素を持ち、若い女性には人気があるアイテムらしい。
「東アジア系の方たちは、日本のお客さまたちとリアルタイムで好きなものを共有していますね」
やはり好きなものにも地域性が出る。おそらく価値観とか情のあり方が東アジアでは共有しやすいのだと思う。だから、韓流ドラマが日本でブームになるし、日本のアニメが韓国や中国で人気が出るのだろう。
新しいものだけでなく、意外なものを海外のお客さまに問合せされたりする。
「ヨーロッパ系のお客さまに『あずきちゃん』という作品について聞かれたので調べたら、95年からNHKのBSで放映されたアニメでした。なぜいまそれなのかは、わかりませんでしたが」
ほかにも、中国の方に伊藤潤二さんのことをよく聞かれるというし、ジブリ作品はロングセラー。なので、ほかの店では新作が公開された時にしか置かないジブリ関連書も、ここでは常備している。イラストや漫画の描き方なども、海外のお客さまはよく買って行かれる。漫画家やアニメーターの画集なども人気がある。
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「もちろん海外のお客さまも大事ですが、観光で来た日本のお客さまが『そういえばこの本、地元にはもうないよね』と思われるような(定番の)本をきちんと置くことが大事だと思っています」
また、通路側に置かれているコミック版「君の名は」や「シャーロック」のバイリンガル版も息長く売れている。やはりお土産として買って行かれる海外の方が多いそうだ。児童書コーナーでも、在留の方たちが子どもに日本語を教えるためにディズニーの絵本などを買って行かれるという。
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そうした海外のお客さまに応対するために、相原さんはラジオ講座などで英語の勉強をしているというが、中国語韓国語の学習も少しづつ始めている。たいへんと言えばたいへんだが、
「習ったことがすぐ実践で使えるというのは励みになりますね」
と、相原さんは前向きだ。実のところ、海外のお客さまを相手にすることで困惑することもあるだろし、ふつうの店ではない苦労もあると思う。しかし、相原さんの話からはそんなことはちっとも感じられない。ぱっと見、楽しいお店という印象だが、それは相原さん自身の前向きな姿勢にも影響されているんだろうな、と思った。

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