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No.136 大洋堂書店

久しぶりにココログにログインしたら、リニューアルされていた。なので、私の方も、これからはスマホで書いて投稿してみようと思う。そちらの方が、写真をアップしやすいからね。

さて、大洋堂。

1fd944a490214e2d92dd6223307ba45dこうして見ると、普通の町の本屋さん。実際、中央線の東小金井駅北口から徒歩3分くらいのところにあり、この地で50年以上の長きにわたって頑張ってきた町の本屋さんである。

しかし、この書店、入り口を別の角度から見ると、こんな風。

03acb85e0f46466a9984e4e1efb31877先ほどの入り口の左側を見ると、こんな風になっているのだ。

つまり、ここ、ひとつの店舗で本屋だけではなく、カフェとタイ式マッサージやオイルトリートメントなどのヒーリングスペース、それにカフェの三つの役割を持つお店なのだ(ヒーリングサロンとカフェはocioという)。

カフェを併設しているお店は増えてきたが、こんな風にヒーリングサロンも兼ねているお店は全国的にも珍しい。

そして、そのカフェの部分も、コーヒーは一杯ずつドリップする本格派だし、焼き菓子のレベルも高い。片手間で、流行りだからカフェをやっています、という店とは一線を画している。どうしてこういうお店になったかを知りたくて、訪ねることにした。

入り口を入ると、右手に本屋のレジカウンターがあるが、その奥がカフェスペース。さらに奥がマッサージルームになっている。

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本屋部分は入って左側の方。本屋部分はだいたい20坪くらいか。半分近くは雑誌。そして、残りはコミック、文庫、単行本に絵本もあるという展開的な町の本屋さん。いちばん目立つ平台に、小金井市の写真集があったり、タウン情報誌があるところに、地域性を感じる。

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平台にこの日いたのは、店のオーナーの弟さんの一色義人さん。もともとこの店は義人さんと現オーナー清志さんのお父様の明さんが創始者である。参考書で知られる旺文社に勤めていらしたのだが、脱サラして始めたのがこのお店。名前も、旺文社時代お世話になった品川の書店の名前をもらったのだそうである。明さんのあとを義人さん清志さんご兄弟が継ぎ、この店を盛り立てきた。今も昔も、この店は外商が主力。昭和の頃は小学校で学研の科学と学習を売っていたし(かつてこの二誌は、月に一度学校内で販売があった。事前に金額を書いた封筒を先生が配り、希望者は当日売りに来た雑誌を並んで購入する、という方式を取っていた)。亜細亜大の教科書販売も行っていた(現在では、美容院や個人野お宅に定期購読を届けることが中心である)。

店売りの方では、子どもがよく買いに来てくれたし、銭湯帰りの人や、かつて近隣にあったマルイの独身寮の人たちが仕事帰りに立ち寄ってくれたりもしたという。

「その当時は、黙っていても本が売れた時代。それに比べると、いまの売り上げは半分以下、かなり落ちましたねえ」

と、義人さん。

「ネットショップもあるけど、昔は本が娯楽の王様だった。いまはいろいろ楽しいものが増えましたからね」

そんな時代の変化を受けて、何か新しいことをやらなければ、と考えたオーナーの清志さん。息子さんの淳さんに

「ブックカフェをやらないか?」

と、持ちかけたことが、この店の改革の始まりだった。

実はその当時、淳さんはマッサージサロンで働いており、独立を考えていた。カフェというのは想定外だったが、本屋にカフェだけでなくマッサージサロンも併設してしまえば、店舗としてうまくまとまるのではないか、と考えた。

そして、実際にカフェを開く前に、まずは東京で勉強し、さらにワーキングホリデーを利用してカナダにカフェ修行に行った。運良く知り合った日本人のカリスマコーヒー職人のもとでコーヒーの淹れ方をみっちり鍛えられ、東京に戻ってくる(この辺のお話はドラマチックで面白いのだが、詳細はいつか別の機会に)。東京でまた焙煎についても学び、晴れて店のリニューアルに取り掛かる。

カナダ時代の上司から、「出来るだけ店は自分自身で作った方がいい」と、アドバイスされ、感性のあう大工さんに手伝ってもらいながら、出来るところは自分たちの手で仕上げた。カフェのタイルを張ったり、建具を葉山まで買いに行ったり。一部テーブルも自作している。

そうして、2016年の10月21日にリニューアルオープンにこぎつけた。

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現在はパートナーで、セラピストでもある真未さんが、カフェの焼き菓子も担当している。この焼き菓子もカナダ仕込みのレシピを使いつつ、真未さんが研究を重ねたもの。甘すぎず、上品な味わい。一口サイズの焼き菓子もあるのが嬉しい。

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カフェだけ、あるいはマッサージとカフェを利用する人で店に人が戻ってきた。また、焼き菓子目当てで訪れる人もいる。

本屋としての売り上げはどうか、と義人さんに尋ねると、

「売り場面積は減ったのに、売り上げは下がってはいません。何より、お客さんが増えて店が賑やかになったのが嬉しいですね」

店はまだまだ手を入れているところ。淳さんと真未さんの2人でカフェとマッサージの両方をオペレーションするのは大変で、

「まだocioの方は看板も作ってないんですよ」

このスペースを使ってイベントや瞑想会を行うなど、新しい試みにトライしている。

「いずれテーマを決めて本棚を作ってみたい」

と、淳さんは言う。そうなれば、もっと本屋との連動がうまくいくだろうし、ブックカフェとしての役割もさらに深まるだろう。

家族で50年以上支えてきた本屋。こういう形で進化し、また未来へと繋がっていく。本屋というスペース、地域との繋がりをうまく活かせば、まだまだ可能性はある。

実は、拙著「書店ガール」シリーズで、登場人物の1人彩加が沼津に開こうとしていたお店は、こういう形を想定していた。現実の、私の身近なところにもこういうお店が出来ているというのはとても嬉しいし、肩肘張らずにそれを実現している一色さんご一家がとても頼もしい。

地域の新しい、くつろげる場所としてこの店が発展していくことを、心から願っている。

(訪問日2019.7.10)












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