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2013年10月

政文堂閉店

私はあちこち書店を周っているけど、それは営業というより取材の意味合いも強い。もし営業だけだったら、東京都心の大型店をしらみつぶしにまわるのが一番効率がいい。わざわざ福島の10坪ないような小さな書店に3度も4度も足を運ぶ必要はない。
営業もあるけど、それ以上にそこの店の人に会いたいから行くのだ。京都に行ったらガケ書房の山下さんに会おうとか、そんな店が全国に何軒もあるということを、私は幸せだと思う。

そんなひとつだった神戸の海文堂が、先月閉店した。これで神戸元町という場所に、もう2度と行くことがないかもしれない、と思うくらいがっかりした。
そしてそのショックが褪せないうちに、福島の政文堂から今月いっぱいで閉店する、という連絡をもらった。こちらもたいへんなショックだ。わずか10坪にも満たず、平積みになっている本でも一種類につき1冊か2冊しか置かない。まあ、よくある地方の小さな店だ。しかし、そこのおばさんとはとても気が合った。初対面で3時間も立ち話をした。書店員というだけでなく、人生の先輩として、いろんな話を聞かせてもらった。客商売は接客が基本ということを、身を持って教えてもらった。私にとってはそこを訪ねることが福島を訪れる大きな目的になっていたのだ。

こちら、ご主人の御病気というどうしようもない理由での閉店だ。しかし、撤退ではない。以前ブログでこの店のことを「家族経営で、持ち家だからやっていけるんじゃないか」と書いたが、そうではないそうだ。借家で、それでも身の丈にあった商売を何十年も続け、いまでも無借金経営なのだそうだ。訪れる客は少ないが、ここを贔屓にするお客も多く、一度に何冊も買う人もいる。また、そういう人が好むだろう本をあえて並べたりする。客の顔が見える商売を福島駅前で何十年もしてきたのだ。そうして、すでにサラリーマンなら定年の年を越えている。子供たちも独立している。健康のために区切りをつけるというのは無理のない話だし、書店員人生を無事全うされたと、店主夫妻を祝福したい。

海文堂のように有名なお店ではなく、閉店にあたって新聞で取り上げられたり、本が刊行されたりするようなことは決してない。
そこを愛した人たちにだけ惜しまれて、政文堂はひっそりと消えていくのだろう。

だけど、私は好きだったよ。
訪ねるのがいつも楽しみだったよ。
福島駅前の政文堂書店。
そこにあってくれて、ありがとう。
いつまでも忘れない。

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海文堂閉店

海文堂書店閉店。
にわかには信じられなかった。
まさかそんな日が来るとは、夢にも思わなかった。

「ここでも、駄目か」
広島の書店員がそうつぶやいた。
これほどの店でも駄目だったら、ほかの本屋はどうなってしまうのだろう。
それは海文堂という書店を知っている誰もが思ったことだろう。

海文堂については以前ブログにも書いたことがある。

http://aonokei.cocolog-nifty.com/syoten/2010/06/no80-1340.html

ほんとに素晴らしい書店だ。
魅力的な棚作り、情報発信力、個性的なフェア、そして地元との深いつながり。
どれをとっても、群を抜いている。町の本屋(チェーン店ではなく、インディペンデント系という意味で)の最高峰だと思う。
それだけじゃない、99年続いた老舗書店として、ここはよく紹介されている。発売されたばかりの夏葉社の「本屋図鑑」のような書店紹介本や、最近やたら多い雑誌の本屋特集はもちろん、お洒落系の神戸のガイドブックにまで載っている店。
いわば神戸の誇り、元町の顔なのだ。実のところ、神戸の書店と聞いて、ジュンク堂よりも海文堂を思い浮かべる人のほうが多いのではないだろうか。

ともあれ、閉店までにもう一度お店を見ておきたくて、9月上旬、無理やり用を作ってここを訪ねた。
もしかしたら、棚がすかすかなんじゃないか、と危惧していたが、前と変わらぬ充実ぶりだった。スタッフも、いつもどおりの接客をしている。
変わったのは、客の数。都心の店のような混雑だ。私同様、閉店を知って、最後にもう一度、と思った人たちが詰め掛けたのだろう。

実際、知り合いの書店員たちが何人もここを訪ねている。他店ウオッチが好きな人もそうでない人も。初めての人もそうでない人も。閉店前にひと目この棚を見ようと、東京から名古屋から広島から福岡から、わざわざ訪ねて行っている。
それだけの価値のある本屋だったのだ。
私は平野さんに挨拶し、買いそびれていた「本屋の眼」を買ってサインを入れてもらった。
実は、前に訪問してから後、平野さんは自作のフリーペーパーを毎週ファックスで送ってくれるようになった。それに、雑誌「ほんまに」では、震災後の書店訪問の記事を書かせてもらってもいる。そんなわけで、平野さんにお目にかかったのは二度目だが、それ以上の親しみを感じていた。
「これからどうなさるのですか?」
聞きたかったが、言葉を呑みこんだ。決まっていたとしても、まだ今後が決まっていないかもしれないほかのスタッフの前では言いにくいし、決まっていなかったらさらに気まずい。
サインをもらうことだけが、かろうじて私の示せる平野さんへの個人的な好意だった。

そして、昨日、閉店を迎えた。ネットに閉店の様子がアップされていた。
最後の客が店を出ると、閉店を惜しむ数百人のお客の前で、店長が挨拶をされていた。
「ネットではなく、本屋で本を買って下さい。そうでないとリアル書店がなくなってしまうかもしれません」
そうなのだ。閉店してからでは遅いのだ。
好きな店があったら、そこをちゃんと利用する。買えるものはそこで必ず買う。
お客の側も意識的にそう努力しないと、もはや書店というものを守れない時代なのかもしれない。

私は近所の本屋に行って、やみくもに5000円近く本を買い込んだ。
そうすることだけが、海文堂という類い稀な書店に関わってきた人たちに対する、わずかばかりのはなむけのような気がした。

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