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No,131 文教堂書店中山とうきゅう店

そもそも中山という駅を知らなかった。横浜線って、どこを走ってる路線だっけ。Dscn0103
なんてところになぜ足を運んだか。
前回の紀伊國屋横浜店に行くついでに、もう一軒くらい横浜のお店を周ろうと思ったのだ。
この店を選んだのは、ツイッターでこちらの山口さんと何度か会話して、ユニークな方だな、と思っていたから。なんとなくの勘ですね。ええ。
このブログ、そんな感じの行き当たりばったりでお店を選ぶことが初期には多かったのだけど、ここのところ東京にいることもあり、ガチな選び方になっていたので、息抜きしたくなったんです、はい。

で、来てみたものの、中山は遠かった。神奈川ではどんな位置づけなのでしょう。東京でいえば国分寺くらDscn0067 い?それとも多摩ニュータウン?
「いわゆる郊外型のお店ですよ。文教堂っぽいというか。本部一括で仕入れているし、がさがさした店です」
とまあ謙遜だか投げやりだかわからないような紹介から入る山口さん。で、写真を撮りたいと頼んだら、右のようなポーズを取るし。ツイッターから想像するイメージとそんなに違わない。ちょっと曲者な感じ。
100坪くらい(?)のお店は確かに文教堂っぽい。駅前のショッピングセンターの中にあり、家族連れがよく行くお店なので文芸よりも実用書やコミック、児童書が充実している。ベストセラーが目立つところに置かれている。ジャンル別著者のあいうえお順に文Dscn0065 庫や本が並び、誰にでもわかりやすい棚。通路が広く、棚があまり高くなく、店内がすっきり見渡せるのも文教堂らしいところ。
ともあれ、口ではそう言いながら私を歓迎してくださってる証に、平積みになった「書店ガール」にPOPが付いている。そのコメントが面白い。
「自分も悪役なのだろうか。それとも、悪役に利用された挙句、途中で舞台から消える端役なのか(中略)困難を武器に変え巨人に立ちDscn0066 向かう現代のダビデに捧ぐ1冊!」
中略の前は拙著からの引用だ。今回は書店員さんのコメントやPOPをいくつもいただきましたが、ここを挙げた人は初めてですよ。それに「現代のダビデ」というのも独特な比喩。ほかにはない、山口さんらしいユニークさだ。
「実はこれ、リバーシブルなんですよ」
と、山口さんがPOPを裏返す。こちらにもコメントがある。
「お仕事がんばっている女子・書店や出版業界が気になるアナタ・本が大好きな方々、ぜひ読んでみてほしいです。元気がでます。勇気もでます。書店員いちおしの一冊です」
こちらは正統派POPのお手本のような出来。それに、ほんとに気に入ってくださったというこDscn0102 とが伝わってくる。著者としてはほんとに嬉しいPOPだ(PHPさん、ぜひどこかで使って下さい!)。
こちらのコメントを書いてくださったのは、パートの女性。児童書担当の方だそうだが、かなりの出来だと思う。ほかにも文芸本のそこここに手の込んだPOPが見られるが、こちらはやっぱりパートの方の作で、本屋大賞の投稿の常連の方らしい。なかなか人材豊富だ、中山とうきゅう店のパートさん。
それにしても、リバーシブルという発想が面白い。やるな、山口さん。

さて、児童書を担当している山口さんの棚を見せてもらう。
「文教堂だからベストセラーは入りやすいし、商品知識がなくても販売できるんですよ」Dscn0074
などと、またまた斜に構えたような説明をされるが、名作物売り場の棚を見てびっくり。まるで中原ブックランドTUTAYA小杉店のように、棚と棚の間の狭い隙間にテープが貼られている。
「完訳版のススメーー名作はだんぜん「完訳版」がオススメです。「要約版」は読書に慣れてない子には向いていますが、本来の物語を短くしてあるため、どうしても本来ある物語の力を失ってしまいます。名作は長くて読むのがたいへんと思われるかもしれませんが、ぜひ「本物の物語」にふれてみてください。きっと自分に大切な一冊に会えますよ」
うわー、なんて愛の溢れるコメント。
「この辺の本を売りたくてやってるけど、あんまり関係ないですね。なかなか売れませんよ」Dscn0084
なんて醒めたようなことを言いながら、なんだ、山口さん、やっぱり熱い人じゃない。さらにフェアコーナーを見ると「さんぽに出掛けたくなる絵本」というユニークなテーマで絵本を集めている。ひとつひとつ丁寧なコメントが書かれたPOPつきだ。
「出版社のセレクトではなく自分たちでフェアをやった方が動きがいいし、商品知識もつきますから。でも、手間のわりには売れゆきは伸びないけど。でもまあ仕掛けた本としては『ほげちゃん』(偕成社)がそこそこ行きました。文教堂チェーンでも1,2位になるくらい売れたかな」
「ほげちゃん」は目立つところに面陳で飾ってある。ぬいぐるみも併せて置かれているし、確Dscn0087 かに手に取りたくなるような表紙だ。

さらにユニークなのは、棚ざしの絵本が「1才6ヶ月~2才6ヶ月くらいまでの絵本」という具合に、年齢別に分けてあることだ。
「この分類は好評です。意外とお客様はどういう本がいいかわからなくて迷ったりされるようなので」
なるほど。大人の物ばかりを見ていると気づかないことだが、子供は一歳違うと理解力がぜんぜん違うから、その年齢に見合った本を与えるというのは大事なこDscn0093 とだ。児童書の場合は作家別に並べるよりずっと親切かもしれない。
ほかにもおすすめ本についてのコメントを集めたコーナーがあったり、「あそぼうたのしい男の子のおりがみ」「おしゃれでかわいい女の子のおりがみ」(ナツメ社)の横に、その本を見て作った折り紙の見本が展示されていたり。

児童書とはちょっと違うが、コミックの「ワンピース」売り場は全巻揃いだけど、売り場には本Dscn0097 はなく、巻の番号が書かれた紙が置かれている。それを持って、カウンターで引き換えてもらう方式。万引き対策で智恵を絞った結果だ。人気の高い「ワンピース」は新古書店でも高値で買い取りされるので、万引きに狙われやすいアイテム。それだけでもこうしてガードするというのは賢いやり方だ。

いいじゃん、文教堂中山とうきゅう店。
正直、郊外店というのはどこへ行っても同じだと思っていた。本部一括仕入れで、売れるものDscn0099 だけを置く。文芸よりも実用書メインで、凝った棚や変わった本は存在しない。
ぱっと見、この店もほかと大差ないと思っていた。
でもそれは間違いでした。どんなお店でも頑張っている人はいるし、工夫しているところはある。
そんな思いを新たにする店でした。
これだから、本屋は行ってみないとわからない。

本屋めぐりはやめられない、そう思うのはこんな時です。

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コメント

はじめまして。文教堂中山とうきゅう店、パートのCです。
先日は先生がお見えになる、との事でお待ちしていたのですが、すれ違いでお会いできず残念でした。
文庫にサイン、書いていただきありがとうございました!感激です!
書店ガールのポップ、見てくださったのですね。嬉しいです~
なんだか面白みのない文章だったかな?と心配でしたが・・・・
ほげちゃんのぬいぐるみ(私がよなべして縫いました)も写真に残していただき、こちらも嬉しかったです。
中山とうきゅう店では、児童書のお手伝いをしています。
子供の学校で読み聞かせをしていまして・・・自分が読んで面白かった本にポップをつけたり、楽しくお仕事させてもらっています。
私は出産前まで取次で営業をしていて、吉祥寺のP(先生もよく行かれてたお店のようですね!)書店の専任担当として週に3回、訪店していました。
あのお店は本当に素敵なお店ですよね。
店員の皆さんのセンス、フェア台や面陳の本のセレクトがたまらなく良く、いつもうっとりしていました。
吉祥寺好き、本屋好き、出版業界から離れられない私には、書店ガールが本当に大好きな一冊になりました。
読んでいる時、ワクワクがとまらず、テンション上がりっぱなしの小説に初めて出会いました。
是非とも続編待ってます!!
亜紀が出産してからも書店ガールとして頑張る!みたいな展開、期待しています。
コメント、長くなってしまい申し訳ありませんでした。

投稿: 中山とうきゅうパート | 2012年7月12日 (木) 22時22分

Cさま

先日は来店が遅くなってすみませんでした。慣れない路線でうろうろしてしまいました。待っていただけると知っていたら、もうちょっと頑張って早く伺ったのですが。
吉祥寺に営業にいらしていた時に話とか、いろいろ伺いたかったです。

そちらの児童書売り場、ほんとに素敵でしたね。吉祥寺のあのお店も素敵ですけど、地域に根ざしたそちらのようなお店で、こんなふうに頑張っていらっしゃるのを発見すると、本当に嬉しくなります。
もうちょっと近ければ、また行けるのですけど、なかなか行けないのが残念です。

「書店ガール」の続きは、機会があれば書きたいです。理子や亜紀がどんな書店員になっていくか、私も楽しみにしていますので。いつか、きっと書こうと思います。

投稿: 碧野 圭 | 2012年7月15日 (日) 22時01分

作家が本屋を訪ねた記録なんて!

几帳面と言いますか、さすがと言いますか。
ビックリしました~。

そういえば、「書店ガール」は面白かったです。
書店の一端を垣間見ているようで。
本屋さん好きにはたまらない作品です!
ネットでいろいろ書評を読んでいても、おおむね
良い感じでしたし。
birthday-energy.co.jp/
ってサイトは碧野さんの性格にまで踏み込んでましたし。

本屋さんも書店ガールも次が楽しみです!

投稿: 正信 | 2013年8月25日 (日) 02時29分

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