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No.126 BOOKS 隆文堂(東京都国分寺市)

西国分寺は私にとって馴染み深い土地である。大学時代の下宿の最寄り駅だったのP4020423_2 だ。当時は電車の本数も少なく(中央線の14時台は4本しかなかった)、駅の周りにはビルのひとつもなく、ひたすら寂しい場所だった。
今の西国分寺と言えば、駅近くに大マンション群があり、大きなスーパーやお洒落な店も出来て、すっかりベッドタウンの駅に姿を変えている。その西国分寺の駅ビルの二階にあるのが、この隆文堂。以前は府中病院の近くに路面店を構えていたそうだが、ここ駅ビルに移ってすでに20数年経つという。

エスカレーターを上ってひと目見た途端、「感じのいい店」だと思った。P4020421
店の横に広い廊下があり、その廊下に面した什器の背が低いので、店内が容易に見渡せる。風通しがいい感じがするし、入りやすい印象を与える。
ワンフロアで150坪くらいなので、全貌が把握しやすく、親しみやすい感じがする。
そういう外的な要因だけでなく、お客の視線を意識した棚作りをしていることを感じる。エレベーターを上って二階に上がってくると、フェアのスペースが目に入る。来店した時は「宇宙兄弟」をやっていた。そのポスターやPOPの向き、貼る高さが、エレベーターを上がってきた人の目につきやすいように計算されている。

店内に入ると、そこここにPOP。面陳が多いのも特徴といえるかもしれない。本屋大賞のP4020416 フェアのコーナーでは、平台でなく、あえて棚で展開をしている。それぞれの候補作の表紙が見やすいし、内容がわかるPOPも多く展示できる。飾られているのが目に近い高さだから、POPの文字も見やすいし。小スP4020417 ペースを逆手にとったうまいやり方だと思う。
飾られているPOPのほとんどは版元の作ったものだが、ふたつだけ手描きPOPを作り、さりげなくお店のオススメもアピールしている。ちなみに、手描きのPOPがつけられているのは三浦しをんさんの「舟を編む」と宮下奈都さんの「誰かが足りない」だった。
これらはさらっと見れば、見逃してしまう。とりたててすごいやり方というわけではない。普通の店よりほんのちょっと工夫し、ほんのちょっと手を掛けている。そうした息遣いが店の隅々に感じられる。そこが、この本屋の「感じのよさ」に繋がっているのではないか、と思う。

文庫担当の上田砂由里さんに話を伺う。P4020413
上田さんはこちらの店で13年勤務しているベテラン書店員。
「『書店ガール』、売れてますよ」
と、文庫新刊台の前に案内してくださる。売り上げベスト10の、なんと四位だ。一位二位 が「1Q84」で、三位が有川浩さんの「三匹のおっさん」、それに続いて四位。
ありえない。「傍聞き」より上なんて。
こちらの店、私の地元ということで営業の方も動いてくださって、上田さんにお願いして私P4020424 の本を優遇してもらった。その成果が出ているのだろう。上田さんとしては、
「身内なんで、やはり書店員の話ということに興味を引かれました。それに、お仕事小説は池井戸潤さん以来、売れる流れがあるし、類書があるとコーナー展開もしやすいですから」
ありがたいことである。仕掛けて動くのは、それだけ本屋と顧客の信頼関係ができているからだろう。さらに、私が地元(正確には隣の小金井市在住)ということもプラス効果なのだろうか。紀伊國屋チェーンでも、一番売れているのは国分寺店だというし、本のたたずまいから地元臭が漂うのかもしれない。
なにげに、地元は強い。こちら、実は東川篤哉さんのお膝元。それで「謎解きはディナーのあとで」が出たとき、「地元作家」と小さく紹介したら、ばかばか売れた。いくら入れてもすぐになくなるほどだったという。
やはり、地元の支持は大事です。

なんて話は置いといて、上田さんに自分で気に入っている書棚を示していただいた。 P4020410
連れて行かれたのは、講談社のコーナー。さながら日明恩さんと高野和明さんのミニフェア状態。ふたりの本を何冊も平にして、手作りPOPを並べている。
「ここはずっとこういう状態です。このふたりの本は単行本で読んで面白かったので、こうして紹介しています」
こうした展開をしているのは、日本でもここだけだろう。高野さんは、もちろん「ジェノサイド」以前からの応援だ。いまや「ジェノサイド」で大ブレークした高野さんだが、それ以前からこうして応援する書店員が全国にいるから、いまの人気に繋がるのだろう、と思う。
ほかにも、上田さんが力を入れているものに、たとえば祥伝社文庫の「幕末 維新の暗 P4020426_2 号」(加治将一著)がある。歴史ミステリが好きで、単行本のときに読んで面白かったと思った本だ。文庫版も出たときから応援していて、いまでも新刊棚のすぐ横に、POPを立てて置いている。
それでいて、今一番売れている「1Q84」の文庫は、とくにPOPはつけていない。個人的にも関心のある本ではないし、P4020425
「私がPOPを書かなくても、これは売れるから」
と思うのだそうだ。そうした本より、版元が力を入れていない、配本も少ない、だけど自分が面白いと思った本、それが上田さんの書店員ごころに火をつけるのだという。
「これだけたくさんの本が出ていると、書店員が気づかないだけで、いい本、仕掛ければ動く本もたくさんあると思うんです。そういう本を少しでも探したいのだけど、時間もお金も限られていて、ほんと申し訳ない」

そんな熱い書店員の上田さん、書店員になってよかった、と思うのは、
「いろんなことを自由裁量でやらせてもらえるのが嬉しいですね。金銭的にはどうかな、とP4020409 思うこともあるし、責任があるから辛いと思うこともあるけど、やり甲斐はあります」
それに、やはりお客様に声を掛けてもらうのが嬉しい。
「あなたにカバーを掛けてもらうときれいだから、レジではいつもあなたの列に並ぶようにしてるのよ、とか、あなたのお薦めはどれも面白いから、買うようにしているのよ、と言われたりすると、ほんとに嬉しいです」
なるほど。地元に根ざした書店だけに、リピーターも多いし、書店員の仕事もよくチェックしている。カバー掛けを褒めてもらった、という話は、これだけ取材していても、あまり聞いたことがない。
「ほかにも、作家が来てくれたり、ツイッターで紹介した本を面白いと言ってもらえたり。やっぱり人に感謝されることが、一番嬉しいじゃないですか。そういうことがあるから、この仕事は楽しいです。好きだから、やっているんです」

その後、同僚の鈴木慎二さんを紹介してもらった。鈴木さんとは、実はツイッター上で会P4020418 話したことがあったので、挨拶したかったのだ。そして、本屋大賞の話から、「舟を編む」が映画化されたときのキャスティングの予想になった。私は堺雅人を挙げたが支持が得られず、その後ほかにもいろんな候補を各自出し合って、最終的にはピースの又吉がいい、ということで落ち着いた。
上田さんにしろ、鈴木さんにしろ、初対面とは思えないノリのよさ。
それはたぶん、この店の人間関係の明るさがなせるわざなのだろう。もしかしたら、店を見て「感じがいい」と思った一番の理由はそこにあるのかもしれない、と思いながら店を後にした。

にしても、ほんとに、どうですかね? ピースの又吉。
原作そのままではないけど、雰囲気はあってるし、話題にもなると思うんですけどね。
って、私が言うことでもないんですけど、いいよ、又吉。

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