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NO.127 リブロ吉祥寺店(東京都武蔵野市)

地元シリーズ第二弾、リブロ吉祥寺店。
さて、ここは私の本屋ライフにとっても忘れがたい大事な店だ。
「書店ガール」の舞台を吉祥寺にしたのも、この店があるから、というのも理由のひとつである。

前にも書いたと思うが、もともとリブロには思い入れが深い。私が初めて「東京の本屋」を意P4020430 識したのが、リブロ池袋本店の前身、西武ブックセンターだったのだ。受験で上京した際、なぜかここを訪れ、名古屋には全然、置かれていない(当時)ようなお洒落な本が集められているのを見て衝撃を受けた。図書館でしか見たことがないような本も、普通に売られている。
「やっぱり東京に出なきゃだめだ」
と、その時、強く思ったのである。
その後、志望校に合格し、東京に住むようになった。と言っても、住んだのは中央線のサバンナ西国分寺(当時)だったから、池袋まではなかなか行けない。吉祥寺が一番、身近な都会だし、ここリブロ吉祥寺店が生活圏内の素敵書店ナンバー1になった。家庭教師のアルバイトで週二回、吉祥寺に通っていたこともあり、その行きがけに、よくこの店を訪ねていた。貧乏学生なのであまり本は買えず、うっとり眺めるばかりだったけど。

大学卒業後は都心に住んだのでこの店の存在は遠くなっていたが、再びここが私の意識にP4020440 上るようになったのは小説デビューしてからである。
デビュー作「辞めない理由」の親本はパルコ出版から刊行された(文庫版は光文社)。そのため、パルコ内に多く店を持つリブロが売り出しに協力してくださった。なかでもこの吉祥寺店の矢部潤子店長(当時)が気に入ってくださり、ワゴンで展開してくださった。
その効果もあって、全国で一番「辞めない理由」を売ってくださったのは、リブロ吉祥寺店だったのだ。
「書店ガール」の親本である「ブックストア・ウォーズ」のネタを考えていたのは、ちょうど「辞めない理由」の営業をしていた頃。舞台を吉祥寺にしたのも、矢部さんのいるリブロがあるかP4020446 ら、ということが大きく影響している。

私がそんな話をすると、店長の栗田克明さんも、
「実は僕も同じです。はじめてリブロを知った時、衝撃を受けました。故郷は群馬なんですが、馬場の予備校に通うようになってはじめて池袋のリブロを見て、本屋の概念が変わりました」
栗田さんは私よりうんと年下だが、やっぱりそうなんですね。いまは多様化してお洒落な本屋P4020443 も増えているし、リブロという店もいろんなところに出店されたのでカラーが薄まっているが、つい10年位前までは、「お洒落な本屋=リブロ」だったのだ。
だから、栗田さんは就職試験についても、
「書店の試験はリブロしか受けなかった」
という。それほど、リブロという本屋の衝撃が大きかったのだろう。
しかし、それで最初に勤めたのは大阪の八尾店。郊外型のお店なので、リブロ色は薄かった。その後も転々として、こちらが5軒目。こちらは、リブロの前身のパルコブックセンターの1号店なので、リブロの中でも老舗である。そのため、リブロカラーがいまでも感じられる。栗田さんとしたら、最初に思い描いていた東京の書店のイメージに、ここは比較的近い店なのではないだろうか。

「書店ガール」に書いたのと同様、この店も平日と休日では客層が変わる。平日はお客様も年配の方が多い。午前中に早起きしてバスでこちらの店に来て、午後、バスで帰って行くというパターンだ。夫婦で月イチくらいで訪れ、山ほど買い物をして宅配便で自宅に配送される、そういう顧客もいる。
土日は近隣から吉祥寺に遊びに来る若者、パルコの中という立地条件から、とくに若い女性が多い。
しかし、そうした女性はもちろんだが、年配の常連さんにしても、「人とはちょっと違う本をもとP4020450 めていらっしゃる」のだという。たとえば、雑誌にしても「ブルータス」とか「Pen」が売れる。ファッション雑誌も、最近流行りの付録付きだけでなく、「palm maison」なんてとがった雑誌が壁一面に展示され、バックナンバーも平積みにされている。
もちろん、美大生やデザイン関係者も多い。それを象徴するように、
「うちは写真家のサイン会に人が集まるんですよ」
とのこと。リブロの面目躍如、である。

それから、店内を案内してもらった。エスカレーターで地下二階にあるこの店に降りてすぐのP4020431 ところにアート関係や洋書の売り場がある。いわば、リブロの顔というべき場所だ。
ここの飾りつけがいい。棚一列を使って写真を展示している。「ミュージシャンと猫2」という写真集の中身を、ポスターにして紹介しているのだ。坪効率を考え、少しでも本をたくさん詰め込もうとするのが普通の書店だが、こういう展示は嬉しい。写真集なのだから、中身を見せてくれるのが一番効果的だ。そして、こういう見せ方をした方が高額な写真集も売れるのではないか、と思う。

それ以外にも、ここのコーナーは面陳が基本になっている。「本屋は本のショールーム」といP4020433_2 うのは「書店ガール」にも書いた私の持論だが、こういう置かれ方をしてると、これだよ、と思う。本の特性は、書かれている中身の情報だけでなく物としての価値、つまり表紙のデザインとか版型とか紙の材質とか手触りとか匂いとか、そうした全てをあわせてできるものだと思っている。ことに、美術書とか写真集の類は、物としての価値の比重が高い。だから、表紙を見せて展示するのは正しいやり方だと思うのだ。
もちろん、スペースを食うことなので、すべての本屋でできることだとは思わないけれど。

その先の「趣味・生活」のコーナーには「日本のおまもり」のコーナーが。おまもりだけでなく、P4020437 日本の玩具の紹介本、こけし本も併せて展示されている。
お守りの写真を壁に貼るだけでなく、版元から借りたというセワポロロという木彫りの人形の展示も。ちょっと楽しいコーナーになっている。
ほかにもいろいろ工夫されたコーナーが目に付くのだが、たとえば「ローリーズファーム」のムックの横に、このブランドのシャツを飾ってみたり。
「このビルの上階に『ローリーズファーム』のお店が入っているんですよ。それでタイアップし たんです。ファッションビルならでは、ですね」

だが、一番びっくりしたのは、文芸書の奥のコーナー。「1Q84」の上に、「書店ガール」の大P4020441 きなコーナーが。
うわっ、。「1Q84」より目立っているじゃん。
ありがたいし、嬉しいのだけど、同時にびくびくしてしまう。日頃、自分の本のフェアなどあまり見たことがないので(どころか、1冊も置いてないこともままある)大丈夫だろうか、と思ってしまう小心な作家。

まともにそこを見られなくてささっと前を通り過ぎると、料理本のコーP4020442 ナーでなかしましほさんの新刊が出ているのを見てはしゃいだり、旅行本のコーナーでは栗田さんお薦めの関西の出版社エルマガジン社の作ったガイドブック「Meets」や「ひとりで歩く 京都本」を紹介してもらったり。
このエルマガジンの京都本、こちらの店は「るるぶ」とかより売れている。
関西にも長く住んだ栗田さんが太鼓判を押す内容の充実というのもあるが、やはりこの店には「普通と違う本」を求めるお客さんが多いからなんでしょうね。
たとえガイドブックひとつとっても、こだわりがある。

そんな店内が楽しくて、取材を忘れて一顧客になって楽しみました。
もちろん、「ひとりで歩く京都」はお買い上げ。「palm maison」の表紙の美少女にも惹かれたけP4020448_2 ど、お金が足りなかったので我慢する。銀行に行き忘れたので、財布に千円しか入っていなかったのだ。
でも、それがラッキーだった。もしお金があったら、いろいろ散在してしまっただろう。
自分、ファッションには興味ないのに、壁一面に美しくディスプレイされてたら、そら欲しくなりますがな。
ああ、楽しい。だけど、お金がいくらあっても足りないよ。
そう思いながら、そそくさと退散しました。
ここで好きなだけ散在できる財力と本棚の空間が欲しい。
ここに来るといつも思うことだけど、今回もまた思いました。

ところで、リブロでも老舗ということは、吉祥寺でも大型店としてはここが一番の老舗。
ということは、「書店ガール」に出てくるペガサス書店に一番近い店である、ということにいま、P4020444_2 気づきました。
昔からのいい顧客がついているとか、平日と土日では客層が変わるとか、考えてみれば小説に書いたことと似ている。
そうか、ここがモデルだったのか。
と言っても、あんなダメ書店のモデルと言われても全然、嬉しくないですね。
はい。失礼しました。

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