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2012年1月

124 .ブックボーイ 夢商店街店(岩手県大船渡市)

正直、ここに来られるとは思っていませんでした。Pb270360
岩手県大船渡市。
ブックオカに行った時、西日本新聞の記者の方が誘ってくださらなければ、来られなかったと思う。
ほんとは12月と2月に「銀盤のトレース」(実業之日本社)の文庫が出るし、3月には「ブックストア・ウォーズ」改め「書店ガール」(PHP文芸文庫)が出るので、11月はその作業の大詰め。書店周りをしている場合じゃなかったりもするけど。
だけど、せっかく声を掛けていただいたし、それはこうしてお金にならない(むしろ持ち出し)書店ブログをせっせと書いてきたおかげだと思うし、無理やり時間を調整しました。Pb270373
今回の旅、実は大船渡以外にもいろいろまわったのだけど、それは西日本新聞の子供記者の記事に詳しい。私自身はここでブックボーイさんを訪れた時の話を書こうと思う。

西日本新聞の方たちがここを訪れることになったのは、ブックオカがこのブックボーイさんを支援しているからだ。ブックオカの売り上げの一部を被災地支援にまわすことをブックオカの実行委員が決めたのだが、どこかの組織にお金を委ねて何に使われたのかわからないのではつまらない。どうせだったら同じ本屋仲間を援助したい。それもあちこち分散するのでなく、復興に向けて頑張っている本屋に渡したい。
しかし、お金は無尽蔵にあるわけではない。いろんな書店に渡すのでなく、どこか一店に絞ろPb270361 う。
そうして選ばれたのが、このブックボーイだった。
そして、西日本新聞の子供記者たちが、ブックオカの名代として支援金を届ける。
それが今回の一番の目的である。

なぜ、このブックボーイが選ばれたのかは、ブックボーイさんも西本新聞の方もご存知ではなかった。だが、ブックボーイさんのお話でなんとなくわかったのは、津波でダメになった書店というのはすごく多いわけではない。さらに、復興に向けて活動してPb270363_2 いる店はさらに少ないのだ、ということ。津波の被害を受けた場所は中小都市の、それも海辺だったから、小さな本屋が多い。だから、資金力がなくて震災と同時に閉店してしまったところが多いし、津波で店主も亡くなられて、そのまま店が消滅してしまったケースもある。
だから、復興に向けて歩み出そうというお店は少ない。こちら、ブックボーイのように、5店舗あるうちの4店舗まで流され、それでもまた新しく店を立ち上げようというのは稀なケースなのだ。そういうことから、ここが選ばれたのだろう、となんとなく納得する。

さて、今回訪れた夢商店街、というのは、大船渡駅西側に作られた仮説商店街だ。3850平Pb270364 方メートルの施設に33区画、飲食店、衣料品、食料品、スポーツ用品から理容・美容、和・洋菓子など30業者が集まっている。もとの大船渡駅周辺の商店街の業者が中心になっており、駅近くに店舗を構えていたブックボーイも、それに参加することになったのだ。二年という期間限定だが、この場所の土地代、建物の建築代などは国や民間の支援で支えられている。

おりしも訪れたのは12月1日のオープンに向け、急ピッチで準備が進んでいる頃。ま新しい木の香りが漂い、ウッデッキを作るカンカンという音が鳴り響いている。
「これこそ、復興の槌音だね」
西日本新聞の記者の方と話し合う。
お会いしたブックボーイの佐藤勝也さんは、とても明るい笑顔で一行を迎えてくれた。わざわPb270370 ざ福岡から、それも福岡の書店仲間からの支援金を持って訪ねたのだから、嬉しくないはずはない。だが、それ以上に、
「これから店が始まることにわくわくしている」
と言う。津波の後、4軒もの店が流され、自宅も流され、正直もう商売はダメだ、と思ったそうだ。しかし、そんな中でも、本を求めに店を訪ねるお客さんが来る、「早く大船渡にも帰ってきて」と頼まれる。版元や取次ぎやほかの書店の人たちから「頑張って」と激励される。そうしたことが、少しづつ佐藤さんの力になっていったのだ。
「本当に、みなさんには助けられています。つい2日前にも、日販さんの東北の大会があって、被災地の書店支援のことが話し合われましたし、震災直後の、ガ ソリンや物資がないとPb270366 きにも、瓦礫の中、リュックをしょって届けてくれた人もいました。ほんとうに、みなさんに足を向けて眠れないです」

我々が行った時はオープンを目前に控え、取次ぎから届いた真新しい本を書棚に詰め込んでいる真っ最中。店舗面積は約30坪、以前の5分の1だ。それでも、開店できる嬉しさが勝る。小さいなりに、子供たちや家族が喜ぶ本を充実させようと棚作りをしている。
ブックボーイという店名は、もともと「少年少女に夢を与えるような店にしたい」ということからPb270372 名づけられた名前だ。震災直後、多くの子供たちがブックボーイに一軒残った支店の方に訪れた。大人たちが自分の子供や孫のために、と児童書を買って行った。テレビゲームなどに押されて子供の本への関心が薄れていたと思っていた佐藤さんは、これほど多くの人が本を求めているのか、と実感されたそうである。そうして、改めて、少年少女に夢を与える、ブックボーイ本来のコンセプトに立ち戻った店を開くことにしたのである。

話をしている最中に、わらわらと人が店に入ってきた。みな、青いジャケットを着込んでいる。Pb270371 そして、一斉に棚に本を入れる作業に取り掛かった。
「あれは、日販の方たちなんです。日曜休みを返上して、うちの手伝いに来てくれているんです。ありがたいことです」
我々が到着した時は昼休みの時間だった。食事が終わって、一斉に戻ってきたところだったのだ。こちらも思わず絶句した。500坪1000坪の店ならよくあることかもしれない。しかし、わずか30坪の店では普通はありえないことだ。
それからこっそり佐藤さんに、
「今回の津波で流された本の代金を、版元や取次ぎが全額かぶることになったという話は本当ですか?」
と、訪ねてみた。
「ええ。最初は3分の1とかそういう話だったのですが、結局は全額持ってくださるということにPb270375_2 なりました。おかげでこうして店を出すことができます」

ああ、素晴らしいことだ。
みんなが、自分のできる範囲で被災地の人を助けようとしている。
その事実も素晴らしいが、それを笑顔で受け入れる佐藤さんの心根も素敵だ。
実際のところ、もう隠居してもおかしくない年頃で、商売がこれだけダメージを受けたことで、佐藤さん自身はどれほどショックだっただろう。店だけでない、自宅も全壊し、避難している孫たちとはいまでも別れて暮らしているのだ。それに、この街で生活しているのだから、友人や親類の何人かは確実に喪ってもいるだろう。
実際のところ、現地では震災のショックで何もする気になれず、義援金を使ってパチンコ三昧の日々を送っている人もいるという(だから、現地ではパチンコ屋が繁盛している)。これだけの被害だ。そんなふうに心が折れても仕方ない。というか、そちらの方がむしろ普通の反応だろうと思う。
それでも佐藤さんは、ほんとうに、とびっきりの笑顔で私たちを迎えてくれた。
こうして来てくれることが力になる、とおっしゃってくれた。
その事実に、我々の方が慰められるのだ。

後日、西日本の記者の方のところに佐藤さんから電話があったという。
オープン直後は大盛況で、みんな喜んでいたが、2ヶ月も経つと、結構、お客様も不満を口にするようになった。
曰く、八百屋と魚屋はあるのに、肉屋がないとか、子供服の店が欲しい、とか。
だけど佐藤さんは、
「わがまま言える場所があるって、素晴らしいね」
と笑っていたそうだ。
そんな人だから、応援しないではいられない。
幸多かれ、と祈らずにはいられない。

またいつか、この店に行けたらいいね。
西日本新聞の方とは、そんなふうに話している。

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No,123 さわや書店 上盛岡店

さて、西日本新聞の方に誘われ、大船渡に行くことになった。 Pb250308_2
それに合流する前日に、盛岡へと行く。
どうせ岩手に行くのであれば、大好きな盛岡に行って来ようと思ったのだ。盛岡には二回行って、すっかり気に入ったのに、まだちゃんと街を見ていない。雑誌「てくり」で見た光原社に行きたかったり、丸善仙台の鈴木さんに薦められたコッペパンを食べたかったり。そんなことを思って盛岡に泊まる事にしたけど、やっぱり行く直前に予定を変更、宮古にまた行くことにしたので、結局、街中はあまり見られませんでしたけれども。

で、ともあれ、さわや書店上盛岡店に行きました。その、店に行ったというより、本店から異動Pb250310_2 になった松本大介さんに会いに行ったのだった。今回は大船渡行きがメインなのでそれほどガツガツ営業するつもりはなく、会いたい人に会えればいいくらいのゆるい心構えだ。
さわや書店と言えば、以前にもブログに書いた駅前商店街の中にある本店、そして盛岡駅の駅ビルにあるフェザン店が有名だが、ここは駅からタクシーで10分ほど行った所にあり、市内ではあるが郊外店の位置づけになる。広さは三百坪弱。本店やフェザン店に比べると通路も広く、ゆったりとした雰囲気である。平台も楕円形をしていたりして、広々としている。 Pb250313_2 平日は年配の男性客、土日はファミリー層が多い。また、近くに本屋とは相性のいい総合病院があるため、その患者や見舞い客も多く訪れるそうだ。

そうしたことから、目につくのは郊外店に多い実用書や雑誌、アイドル本、歴史や時代小説の類だったりするが、男性向けのコミックやライトノベルの充実ぶりが目立つ。郊外店というよりコミック専門店に近い匂いがある。コミックをレーベルごとに仕分けし、一冊ごとに発売日を表示するというあたりPb250316_3 に、小さな工夫も見られる。以前、ここで働いていた男性スタッフのこだわりの表れだそうで、そうしたことも男性客が多い理由なのかもしれない。

文芸の棚をじっと見ていたら、松本さんに「ここは普通の棚ですよ」と謙遜されたが、中には手描きイラストつきの大きなポップがあったり、「団志が死んだ」コーナーがあったり、ちゃんとスタッフの工夫も見 られる。
ただ、誤解を恐れずに言えば、それがまだそれぞれのコーナーのスタッフのこだわりに留まっPb250319 ている感じがして、店全体の統一感になっていないのが、この店の課題というか、伸びしろの部分なのではないだろうか。いまでも、それなりに感じのいいお店ではあるが、もっとよくなる気がする。

私が訪れた時は、松本さんがここに異動して来てまだ2週間足らずの頃。ずっと本店勤務 だった松本さんは、
「まだ客層を見ている段階です。どんな感じか探りつつ、これから自分なりのやり方を出して行きたい」
と言う。そもそも「雑誌とコミックの店」であるこの店に、文芸に強い松本さんが呼ばれたのは、文庫・文芸を上げてほしい、という会社の思惑があったのではないだろうか。少なくとも、松本さん本人はそれが使命だと思って頑張ろうとしている。
異動してきたばかりでお忙しい松本さんとはあまり話をする時間がなかったが、Pb250317
「もうちょっと時間が経ってから、この店をまた見て下さい」
と、言われた。
よっしゃー!
半年後か1年後か、また必ず来るよ。盛岡観光しそこねてるし。
その時、松本イズムがどんな形で表れているか、楽しみにしているよ。
と、勝手に心の中で挑戦状を突きつけて、店を出た。

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No,122 丸善 博多店

そして、新幹線まで時間があったので、丸善博多店を訪問する。
こちらお店、JR博多シティビルの8階にある。天神戦争が一段落して、今度は博多戦争にPb050332 なっているが、そこに再び参戦した形になる。さらにここは丸善がジュンク堂と同じ系列になってから後にオープンしたお店でもある。どんなふうになったか、気になっていた。閉店した丸善福岡ビル店にいらした徳永圭子さんが、こちらに移っていることも知っていたし。

そして、ひと目見て、やっぱりこれはジュンクだ、と思った。図書館のように背の高い書棚、平台が少なく、面陳も少なく、一冊でも多く本を置こうというやり方だ。
好き好きがあると思うが、私自身はあまりそういう店は好みではない。背の低い什器で辺りPb050333 が見渡せ、そこかしこに平台があり、ミニフェアが組まれている。そういう旧丸善福岡ビルの店の方が、タイプとしては好きだ。
とはいうものの、ここはいい、と思った。それはここが特殊な立地だからだ。駅ビルの上にあり、店舗が異常に細長い。その真ん中に長い長い通路があり、その両側に本棚が垂直に並んでいるので、実にわかりやすい。
私が大型店舗を苦手なのは、広すぎてわかりにくい、探すのに疲れる、高い什器に圧迫感がある、という、はなはだおばさん臭い理由なのだが、ここであれば大丈夫だ。ワンフロアだし、通路をまっすぐ歩いていれば、どこかで自分の目的の本棚にぶつかる。それに、真ん中に長く伸びた通路があるので開放的だ。私的にはとても気に入った。

さて、迎えてくださった徳永さん、老舗丸善の中堅管理職と聞いてこちらが勝手に妄想するイPb050335 メージを裏切らない、知的できびきびとした物腰の書店員だ。ブックオカにも参加されているので何度もお会いしているが、前回の福岡行でダメダメなところも見られているし、お会いするのはちょっと気後れしていた。それでご挨拶だけのつもりだったのに、こういう方はやっぱりお話が面白く、途中から慌ててメモを取り出した。
「こちらのお店は800坪、以前より1.5倍の在庫があります。それに、こうした什器になりましたから、以前の店のように面陳はできませんし、特殊性はあまり出せませんね。だけど、そのかわり全ての棚にエンド台を置いて、これを推したいというものを単品で展開しています。言ってみれば50本のワゴンがあるようなものです。ここに置くものは厳選して、ものすごく絞っPb050346 て置いています」
本につけられているPOPは大型で、書き文字ではなく印刷された文字で統一されている。手作りの温かみというのはないが、
「そちらの方がぱっと目立つし、わかりやすい」
そういう判断でこの形態が選ばれている。確かに、普通の平台と違ってここのエンド台はぶらぶら通路を歩きながら見るのだから、小さくごちゃごちゃ書かれているより、ぱっと見てわかるものが望ましいのだろう。

さて、移転して変わったのは、店の作りだけでない。以前の店は、中高年層の支持が高い、Pb050349_2 雑誌の記事よりも新聞の書評、「王様のブランチ」よりも「週刊ブックレビュー」で紹介された本の方が動くという、老舗丸善の面目躍如といった感じだった。しかし、ここは駅ビル。制服姿の学生や子供から高年齢層まで、あらゆる年齢のお客様が来店される。徳永さんとしても、日々発見があると言い、
「こんなにも携帯小説の受容があるとは思いませんでした」
下は小学5,6年から中学生、上はおしゃれして博多に出てきたという主婦やOLにまで広がっている。彼女たちは、同時に少女漫画や青い鳥文庫、みらい文庫もPb050358 見ている。もちろん、それはランキングに上がるほどの数字ではないが、それでも、「携帯小説は終わった」という世間の風潮とは違う現実がここにある。
そうした変化を見ながら、日々手探りで方向性を模索しているという。それが少しづつ手ごたえが出てきたか、と思えば、やっぱりダメか、と思ったり。この作家のこのシリーズならこれくらいいけるはず、と思ったものが読みどおりに行かなかったり。
「もっとアピールしていかなければ、と思います」

だが、変わったというものの、やっぱり丸善と思ったのが、徳永さんにお薦めの棚を伺ったとPb050337 き。徳永さんが嬉しそうに紹介してくださったのは、「ノンフィクションと文学」という棚。ノンフィクションとフィクションの境界にあるような、かつ「文章的に優れたもの」を集めたという。
「もともと丸善の分類ではノンフィクションは文芸に分類されるものなんです。だけど、ここでは文芸の棚に並ばないもの、社会や医学などの棚にばらばらに置かれるものも集めています」
だから、ノンフィクションと一口に言っても幅広く、医学的なもの、震災関係や風土誌的なもの事件もの、戦争関係と、コーナーごとにさまざまだ。
たとえばある棚をピックアップしてみよう。社会主義的なリアリズムで知られる詩人谷川雁のPb050338 詩集「原点が存在する」から、多大杉栄と伊藤野枝の遺児の精神的な成長を追った松下竜一「ルイズ~父に貰いし名は」、大岡昇平の裁判ノンフィクション「ながい旅」と同じ作家の法廷小説「事件」、五味川純平「人間の條件」そして沖縄返還の裏に隠された史実を描く澤地久枝「密約」若泉敬「他策ナカリシヲ信ゼムト欲ス」といった流れ。戦後の日本、人が人を裁くこと、そういったテーマで集められた本であろう。
ああ、正しく丸善の棚。そんな気がします。こうした奥行きの深さに惹かれて、丸善には愛書Pb050342 家の中高年が集まるんだよね。
で、なかでも徳永さんお奨めなのが医学書院の本だという。医学系の専門書の出版社だが、なかには素人が読んでも興味深いノンフィクションがあるのだとか。そういって「コーダの世界~手話の文化と声の文化」という本を教えてくれた。

で、そんな本を嬉々として紹介してくださる知的な徳永さんだが、店を出ようとしたとき、店頭に飾られていた「謎解きはデイナーのあとで」のテレビ化フェアのPOPを見て、私がふと
「執事役は櫻井翔よりマツジュンがよかったな」とつぶやくと(嵐ファンの人、すみません)、徳Pb050353 永さんが、
「マツジュンは、『きみはペット』がよかったですよ」と受けてくださる。
うっ、そんな話題もフォロー。徳永さん、懐深い。
隙のない感じの徳永さんに、意外なお茶目さを見つけて、ちょっと嬉しくなって店を後にした。

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No,121 ジュンク堂書店福岡店

そして、佐賀から福岡に戻ったその足で、ジュンク堂に向かう。
このお店、一昨年の西日本大横断営業の最終地点だったのに、体調崩したために、アポを取りながらPb050290 訪れることができませんでした。
なので、今回はそのリベンジ。
ここで待っていてくださったのは、文芸書担当の下妻久美さんとや彌益陽子さん。活気のある書店には必ずといっていいほどいる、若くて本好きで仕事に前向きな、キュートな書店員女子コンビである。こういう女子は大好き。たちまちテンション上がります。

ところで、数年前、福岡は天神に大型書店が一斉に進出し、凌ぎを削った。天神戦争と呼ばれた激しい本屋生存競争の中で、唯一勝ち残ったのがここ、ジュンク堂福岡店である。そして、戦場は博多近辺に移るのだが、それはそれとして。

私が訪れた時は、ここは1600坪(今頃は地下一階にもスペースを広げてさらに大きくなってPb050305 いることと思う)。もともとは若いお客が多く、文庫が強い店だったのだが、天神から丸善が撤退したことで年配のお客がこちらに流れ、時代小説や雑学系の売り上げもよくなったという。ほかにもエンタテインメント系が強いことも特徴的で、メディアミックス関係がよく動くそうだ。
ここの文芸書売り場で目に付いたのは、文芸書が立てて置かれてあったこと。普通は寝かせてあるよね。どうしてか、と聞いてみると、
「うちの文芸売り場は新刊棚が少ないんです。だから、せめて新刊が目立つように、エスカレーターを上ってきたお客様の目にすぐ留まるように、立てて本を置いたんです」
と、下妻さん。なるほど、小さな工夫だが、仕事においてはそういうことが大事だと思う。Pb050301どうしたらお客様に本をよく見せられるだろうか、そういうことを常に考えているから、既成概念にとらわれない置き方を思いついたのだろう。120数軒まわって、こうした置き方を見たのは初めてだ。この一点をとっても、下妻さんの、売り場に対する熱意がよくわかる。
そんな話をいろいろ聞きたかったが、売り場は夕方。お客様も多い時間だから、早々にふたりの人柄に触れる質問へと移る。

「書店員をやっていて、楽しいと思うことは?」
彌益さんの方は、
「お客様が探している本のタイトルを、少ないヒントで言い当てたとき。それから『選んで欲しPb050303 い』と頼まれて選んだ本を、次にいらっしゃった時、『よかったよ』と、言ってもらえるときですね」
一方、下妻さんの方は、
「人は本で救われるということがあると思うんです。私自身がそういう経験をしたことがあって、その本を棚に置いたところ、たまたま友人が手に取ってくれて、『私も感動した』と言ってくれたときは、置いてよかったと思いました。そもそも、そういう本を求めている人に紹介することがしたくて書店員になったのですから」
下妻さんとお友達が感銘を受けた本というのは、「ガール・ジン フェミニズムする少女たちのPb050314 参加型メディア」(太田出版)。アメリカの無名の女性たちによる参加型メディア(手作りの小冊子)、ジンの実態と社会的意義を書いたものだ。
そのほかにも昭和初期に活躍した幻の作家尾崎翠の文庫(ちくま、河出等)など、
「マイナーというか、こんな小説あったんだ、と思われるような本を置くのが好きです。こんな地味なもの、好きな人いるのかな、と思っていた本が売れると、すごく嬉しいし、お友達になりたいと思う」
うーん、なんてキュート。大好きだよ、そういう書店女子。そして、その下妻さんが「自己満棚」Pb050306 と下げて言うのがフェアの棚2列と、件の「ガールズ・ジン」が置かれているサブカルの一角だ。とても素敵な本並び。
そうなんです。ジュンク堂って、本を積んだり、大きなフェアをやったりしないから、書店員のこだわりってすごく見え難くい。だけど、よくよく話を聞くと、こんなふうにこっそり書店員さんが力を入れている部分ってあるんです。福岡ジュンク堂に行ったら、ぜひこのサブカル棚を探してください。

そして、もうひとりの女子、彌益さんも負けてはいない。人文書担当の細井さんと組んで、HP上で「本のオオギリ」というコラムを連載している。これは、たとえば「石」とか「猿」とか、ひとPb050321 つのテーマに沿って本を紹介しあう、というものだ。訪れた月のテーマは「穴」。そのお題に添って「おへそのあな」「マンホールからこんにちは」と言った子供の本から、「鼻ほじり論序説」「穴と境界」といった学術書まで紹介する。
そしてそれはもちろん売り場でも展開しているが、それがどこかというと、一階の、入り口を入って突き当たりの壁面。お客の目にはとまりにくい、実は売り場としてはデッドスペースにあたる部分だ。こういPb050324 うところだから、好きに使っていいと上の人からもお許しが出ているのだろう。
これを見て思いだしたのが、ジュンク堂の住吉店。店の外の壁に沿ってミニフェアをやっていた。普通ならあまりやらない場所だったので印象に残っている。ジュンクで書店員のこだわりを見たいと思ったら、店の真ん中でなく、案外はじっこにこそ真価が見られるのかもしれない。
そして、私のような書店好きの人間は、そういう部分を発見して、ほっとするのである。

ところで、このふたりはブックオカの実行委員でもあるライターの高倉美恵さんのご紹介。ブックオカ仲間なのだそうだ。
「プライベートな時間を割いて参加するのは、結構たいへんです。裏方はやることがいろいろPb050329 あるし。だけど、始まると楽しいし、知り合いもできるし、参加してよかったと思います」
ブックオカは、書店イベントの中でも規模が大きく、内容も充実している。しかし、専門の居ベンターではなく、書店員や関係者が手弁当で働くのだから、その労苦は察せられる。
ブックオカほどのイベントでも、福岡の多くの書店員が参加している、というわけではない。むしろ、そんな時間があったら自分の本業に力を入れた方がいい、と思う書店員の方が大多数のようだ。
確かにそれは正論だ。本業以外に割く時間がとてもない、そういう人もいるだろう。家族がいPb050331 たりすれば、なかなか思い通りに自分の時間は使えないことは、ワーキングマザーとしてずっと仕事をしてきた私にはとてもよくわかる。
だが、このたいへんさをたいへんと思わず、楽しむことができれば、それは幸せだ。その瞬間、労働は作業ではなく、遊びとなる。そして、真剣に遊ぶことができる人間の方が精神的な豊かさを手に入れることができると思うのだ。

そして、このブックオカの宣伝ちらしやポップも、店のはじっこに飾られていました。素敵なPOPつき。彌益さんの仕事だそうだ。
「POP作るの、実は好きなんです」
という彌益さんだが、もちろんジュンク堂ではその力はそれほど発揮する余地はない。
うーん、ジュンク堂、有能なPOP職人を無駄にしているよ、と内心思わずにはいられませんでした。

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No,120 積文館書店伊万里店

さて、ブックオカの一箱古本市の翌々日に、伊万里駅前の積文館書店に出掛けた。Pb050273
こちらの堀田さとみさんとは、BOOK-LaというSNSで知り合い、私の個人フェアを始めてやってくださった方でもある。奇しくも伊万里は親の出身地。親戚はいまでも住んでいるし私にとっては、とても縁の深い土地である。今は東京に住む私が、その土地の書店員さんとネットを通じてこうして知り合いになれる縁を、とても有り難く思うのです。

さて、ここ積文館伊万里店は、伊万里駅の目の前にある200坪(目算)ほどの店。8年前、平成16年1月にオープンした。しばらく伊万里を訪ねていなかった私Pb050275 は、こんな立派なお店が、ここ伊万里にあるということに、感慨深い思いだった。私が知っている頃は、これだけのお店はなかったよ。
駐車場もあり、家族連れや年配客が多い。文具も扱っており、児童書が充実している、いまゆる郊外型のお店。そこで働く堀田さんは書店員歴約18年のベテランだ。
「郊外型の店ですから、ランキングの上位にくるものを揃えています。上位300位以内に入る 本はなるべく切らさないようにしていまPb050277 す」
訪れた時にも、やはり東野圭吾さんの新刊や山田悠介さんなど定番が平積みされていたが、目を引いたのは棚の面陳。直木賞を受賞した「下町ロケット」(小学館)の隣に「NASAより宇宙に近い町工場」(ディスカバー・トゥエンティーワン)というノンフィクションが大きなPOP付きで飾られている、それだけでもやるな、と思うが、そのすぐ下の段に「はやぶさ」関係の本を集めたのは気が利いている、と思った。小説とかノンフィクションの枠にとらわれないのも実にいい。
ほかにも、クリスマス本コーナーが美しく飾られていたり、平台やワゴンに緑色の布を敷いたPb050278_2 りと、郊外型の店ながら、目を凝らすとここ独自の工夫も見られるのだ。実は私のミニフェアをやっていただいた時も、レース模様の紙を敷いて造花を飾り、表紙のイラストをボードに貼るなどしてそれは美しくディスプレイしてくださっていた。著者としてはもう、感涙ものでした。これは堀田さんの仕事だと思うが、細かなところにセンスの良さが感じられる店なのです。

そのほか、お年寄りが多いので柴田トヨさんの新刊「百歳」(飛鳥深社)がレジ前の目立つとPb050280 ころに大きく展開されているのが目に付くが、土地柄、筑豊炭田の記録を絵や文章で残して昨年世界記憶遺産に登録された山本作兵衛関係の書籍も好調だとか。やはり、地元の誇りですものね。私もここで買えばよかった、と後で思いました。

お忙しくされていたので、堀田さんとはあまりお話する時間がなかったが、この店を訪ねることはこの旅の目的のひとつだったので、来られただけで嬉しかった。
伊万里は縁のある土地なので、また機会があれば来ようと思う。

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