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2011年8月

No,118 みどり書房イオンタウン店(福島県郡山市)

さて、7月は21日に福島へと出掛けた。友人宅の震災見舞いと、前にも書いたいちおし会へ参加するためだ。
だが、福島に行くからには書店にも行きたい。時間はないが、行ける範囲で行こうと思って訪れたのが、ここみどり書房イオンタウン店。こちらに、以前お会いした浅田三彦さんがいらっしゃるからだ。
地図を見ると、郡山駅から徒歩で6,7分で行けるはずと思ったが、方向を間違えて15分ほどうろうろしてやっと見つけたイオンタウン。東京近郊に在るイオンのイメージから、3階建てくらいの大型ビルのショッピングモールを予想していたら、これが広い駐車場を取り巻くような形で平屋の店が並んでいる(一部2階建て部分もある)オープンモールのショッピングセンター。そう、ハワイの郊外で見掛けるようなタイプだ。
しかも、みどり書房のある場所を間違えて、敷地の中を行ったり来たり。辿り着くのにえらい手間が掛かった(帰りは正しい道を教えてもらったので、ほんとに5分で駅に着いた)。
「ここが出来たのは11年前。イオンショッピングセンターでも初期のものなので、この形ですP7210220_2 が、今はクローズドタイプが主流になっていますね」
と、迎えてくださった浅田さんに伺う。そうだったんですね。あけっぴろげなアメリカンな形はやっぱ日本人には好まれないんですね。
「でも、このタイプだったから、震災の時も被害が少なかったんです」
なるほど、今回の震災では、郊外のショッピングモールにある店はどこも再開が遅れた。ビル自体の損傷のためや、その店だけでなく、ほかの店の復興と足並みを揃えなければならない、という事情があったからだ。しかし、ここの場合はオープンモールであるから、自分の店の都合だけで開店することができる。
とは言うものの、郡山市全体が断水、停電、ガスも止まっており、この店も天井が落ちて50P7210230_2 センチほど隙間が空いていた状態だったため、再開まで3週間を要した。しかし、敷地内のスーパーが震災後2日目から外で売り始めたため、お客は集まっていた。
「どこがガソリン不足なの、っていうくらい駐車場もいっぱいでした」
こちらのお店も、再開と同時にすごい人手だった。
「出版輸送が止まっている間、とにかくめちゃめちゃ売れた」
という。前年比180%増だとか。あらゆる種類の本が売れたが、とくに週刊誌がすごい売れ行きで、入荷されて半日持たずに完売したという。
今はもう震災関係は落ち着いたが、やはり福島、原発関係が変わらず売れ続けている。ここ郡山は、原発から避難してきた人も多いので、とくにそうなのかもしれない。
ところで、みどり書房と言えば、桑野店のことが気になっていた。こちら、震災が酷かった店と して噂に伝え聞いていたから。ほんとはそちらにも行きたかったが、以前お会いした山本雄P7210226_2 治さんが多忙のためお会いできそうになかったので、あきらめたのだ。
「あちらは確かに酷かったですよ。天井の石膏ボードが落ちたうえに、スプリンクラーも起動してしまいましたから」
しかし、6月8日にはなんとか店を再開させたそうだ。文芸関係にも力を入れているとてもいいお店なので、再開されて本当によかった、と思う。

さて、ここイオンタウン店、ワンフロアで333坪ほどの手ごろな広さのお店。浅田さんに言わP7210227 せると、
「駅近のショッピングセンターにある店なので、普通の店ですよ」
と謙遜されるが、いまどき珍しいことに、コミック雑誌売り場が入ってすぐのところにある。ワンピースの平台がレジの横に大きく取ってあり、レジ前に「ワンピース」のお菓子コーナーがある。本以外のものを置く店は増えているが、レジ前でお菓子コーナーを作っているのは初めて見た。親子連れが多いショッピングモール店ならでは、だろP7210229_2 う。
ほかにも、時代小説に大きなコーナーが取ってあったりもするので、お年寄りも多い。つまりは幅広い年齢層が訪れる店ということなのだろう。確かに桑野店や噂に聞く白河店ほど文芸関係に凝った品揃えの店ではないかもしれないが、ポップで多くの人に愛されるお店なのだろうと思う。
さて、ここにも「ハルヒ」の谷川流さんの跡を見た。ポスターに直筆のサインを残している。丸善仙台アエル店のところにも書いたが、谷川さん、ほんとにマメに被P7210235 災地の書店をまわっているなあ、と感心する。浅田さんが谷川さんにお会いした時、私の話を振ったら反応されたそうなので、私が作家デビューしたことも知っておられたらしい。まあ、話のタネにしていただけたのなら、光栄です。

ともあれ、久しぶりに浅田さんの元気なお姿も拝見し、ほどよく混雑した店内を見て、なんとなくほっとする気持ちで福島一軒目の訪問を終えた。

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No,117 紀伊國屋書店仙台店 再び

さて、仙台最後のお店がここ紀伊國屋仙台店。震災での被害がひどかった店として噂に伝P5040211 え聞いていた。その後の状況が気になっていた店のひとつである。

しかし、訪問した6月26日には、紀伊國屋書店の入っているモールというショッピングビルも通常営業しており、お客様も普通に出入りしていた。震災の跡形もない。ほっとして、紀伊國屋のある三階に行き、以前にもお会いしている山口晋作さんを呼び出してもらう。山口さんは私の顔を見るといきなり、
「大沢軍団にお会いになったそうですね。たいへんでしたね」
と言われて、ちょっとびびった。ツイッターには書いたけど、ほとんど反響がなかったので、みP5040199 んなにスルーされたと思ってたんだよ。その事実、忘れていたんですけどね。
で、大沢さんは、もちろんこの店も訪問済み。当然と言えば、当然か。谷川流さんも、やはり訪れたそうです(右は、控え室にあった谷川さんのサイン)。

で、まず震災の時の状況を伺った。
もともとこの地区は地盤が緩かったところに地下鉄を通したため、震災の被害も大きかったのだそうだ。震災当日、山口さんは非番だったが、あまりにも大きな揺れだったので、その日のうちにお店の方に駆けつけたところ、ビルには入れず、スタッフは駐車場に集まっていて、なかには泣いている人もいた。本棚が倒れたため、床に散乱。3日後には、棚から崩れた本の山に、水道管から漏れた水が染み、一千冊ダメになったという。
その後はビルの安全管理などの問題で、立ち入ることができなくなった。それで、しばらく自宅待機になるのだが、当初はキャッシュディスペンサーも止まっており、電子マネーも使えないため、現金が無くて困ったという。それから、店が開いていないので、食料品を手に入れるのもたいへんだった。
「僕の場合はツイッターとかで情報を得ることができましたが、お年寄りなど、情報を得る手P5040205 段を持たない方はたいへんでした」
それから、ガスがなかなか復旧しなかったため風呂に入ることができなかった。電気ケトルでお湯を沸かして身体を洗ったりしたそうだが、右顎のところにアレルギーが出来、それがなかなか治らずに困ったのだそうだ。
「でもまあ、店の方に物資とか届きましたし、そんなにたいへんではなかったですよ」
山口さんの場合は、単身でこの地に赴任してきたという身軽さもあり、親類が被災地にいないこともあって深刻にならずにすんだ。それに、やはり紀伊國屋という大きな組織にいることの安心感もあったと思う。これで店が潰れるかもしれないというような心配とは無縁だっただろうし、ほかの支店からの援助も期待できた。奥の控え室には、全国の紀伊國屋書店から送られてきたP5040198 この店への応援メッセージが書かれた色紙があった。壮観だった。これだけの仲間がいればなんとかなる、そう思わせるような光景だ。
「当初は再開の目処が立たず、撤退するんじゃないか、あるいは再開しても7月とか8月になるんじゃないか、と言われていました。そうなった時、今まで働いてくれていたアルバイトの方たちが残ってくれるのか、あるいは、新しい人を雇って一からやり直さなきゃいけないんじゃないかということが心配でした。結果的には、辞める人がいなかったので助かりましたが」
この店は、結局、震災後1ヶ月以上休業を強いられる。再オープンしたのは4月28日、ゴールデンウィークに何とか間に合わせた形だ。オープン直後はすごいお客で、再開が待たれていたことを実感する。その後、売り上げはずっと30%増しの状況が続いている。

ところで、山口さんは震災後、「何を売るか」ということについて、以前より考えるようになったという。P5040208
たとえば小説とか学習参考書にも良し悪しはある。だが、それらは悪くても実害はあまりない。しかし、放射能関係はそうではない。今すぐ命に関わるということはなくても、将来的にどうなのか。間違ったことが書かれているものを置いてもいいのだろうか。
一方で、やみくもに不安を煽るような雑誌を置くことも抵抗がある。小さい子供などに、いたずらに恐怖心を与えかねない。
「だから、置く本を選ぶべきかと思うのですよ。だけど、それを選べる高い見識を持った人ばかりではないですしね」P5040210
なるほどな、と思った。商売としては、売れればいいと考えるべきかもしれない。お客さんが欲しがるものを売る。それが書店の役割だ、という考え方もあるだろう。だが、これだけたくさんの本が売られている昨今、置くべきでない本は置かない、という選択もある。もちろん、小さなお店ですでにやっているところはあるが、紀伊國屋書店ほどの店がそれをやるというのは、書店としての見識を打ち出すことになるかもしれない。
そんなことを考えさせられた。

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