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No,114 横田やと「こどもとあゆむネットワーク」

この日は仙台の本イベント「Book !Book!仙台」の一箱古本市が開催されていた。アーケードP5030151_3 のあるサンモール一番町商店街で、それぞれ工夫を凝らした店がいくつも並ぶ。それを眺めたり、神社の一角を借りてイラストやおみくじの売り子をしているジュンク堂仙台ロフト店の佐藤ジュンコさんに会ったり、イベントの主催者である「火星の庭」という古本屋でお茶をしたり。それはそれで楽しい時間だったが、早々に切り上げ、タクシーで横田屋という児童書専門店に出掛けた。横田やの店主で、ボランティアグループ「こどもとあゆむネットワーク」の代表をされている横田重俊さんに会うためだ。
実は前日、東松島図書館の重い現実を知り、本を巡るボランティアというものをもっと知りたくなり、帰る道中で横田さんに急遽、アポを取ったのだった。「こどもとあゆむネットワーク」は、先の東松島図書館にもかなり早い時期(4月17日)に9千冊もの本を寄贈している。ほかにも、保育園や学校に、本やおもちゃ、備品などを届ける運動をしている。

同行するのは佐藤店長、それからこの日東京から来たばかりの空犬さん(吉祥寺の書店関 係者の集まりである吉っ読むの仕掛け人)のふたり。佐藤店長は前にも書いたが、広島で本を送る運動を進めており、空犬さんも吉っ読むの集まりで募金を集めたりしている。私自身も、横浜会という大崎梢さんを中心とした横浜近辺の出版関係者の集いで集めた募金を預かっていた。空犬さんも私も、募金先は佐藤ジュンコさんや横田やさんなど、書店関係者が関わっている「こどもとあゆむネットワーク」がいいのでは、と考えていた。だからこそ、話を伺うのはここがいい、と思ったのである(なお、「Book !Book!仙台」や火星の庭については、空犬さんの空犬通信に詳細なレポートがありますので、そちらを読んでください。http://sorainutsushin.blog60.fc2.com/blog-entry-1629.html
横田やについても、碧野とはまた違った側面からレポートしてくださっているので、そちらもぜひチェックしてくださいね
http://sorainutsushin.blog60.fc2.com/blog-entry-1636.html)。

さて、横田や。こどもの本とおもちゃを売っているお店だが、店構えがとても素敵。年季の P5030155_2 入った木造の古民家風の建物で、「横田や」という木の看板が掲げられている。縁台もあるし、外観見ただけで、三人ともテンションあがりまくり。写真をばちばち撮りました。
店の中も、外観同様わくわくします。右半分は子どもの本、左半分がおもちゃ。おもちゃといっても、いまどきのキャラクター物とかじゃないんだよね。木で出来た、しっかりした造りの、昔ながらのおもちゃ。流行に左右されないので、10年も20年ももちそうなものばかりだ。実際に遊べるコーナーもあって、小さい子がひとりで遊んでいたり。部屋のあちこちに、絵やぬいぐるみが飾られていて、それを見ているだけでも楽しめる。
ここはもともとは140年続いた味噌と醤油のお店だったそうで、横田さんの代で文具と絵本の店に転業した、それが30年以上前。その3,4年後にはおもちゃを始め、だんだん文具が減り、今の形に落ち着いたという。取材がなければ店をずっと見ていたいと思ったが、そうもいかないので、店内の読書用のテーブルでお話を伺った。

横田さんは震災後、10日目くらいに石巻に渡り、現地の保育所を見た。そして、避難所以外P5030159_2 にも本を必要としているところがあることに気がついた。学校、保育所、さまざまな公共施設。
津波の被害はもちろんだが、津波に流されなかった場所でも、たとえば図書室の隣でボヤが起こり、そのために1万冊の本が煙で燻されてダメになったとか。
それで「こどもとあゆむネットワーク」を立ち上げた。子どものために「絵本」「おもちゃ」「文房具」「遊び」を届ける、というのが最初の目的だった。
「いままでこういう仕事をしてきたので、いろいろ繋がりがあり、いろんな情報が入ってくるんです」
送った本は約4万冊。そして、本を届けながら、御用聞きをしていった。すると、本やおもちゃだけでなく、現地で必要とされている物がいろいろわかってくる。パソコンとか、電子ピアノとか、プリンターとか。学校の授業や保育所の活動を支えるさまざまな備品も足りないのだ。
それを集めたり、寄付金を使って購入したり。
「被災地の状況は刻々と変わっているんです。今必要なのは絵本よりも、辞書や調べ学習のための本、授業で使うための本なんです」
寄贈も受け付けるが、寄付金を使って購入する時は、地元で買うようにしている。それが地元への貢献になるからだ。
実に細かい、草の根的な活動だ。こういうやり方であれば、確かに必要としている人に必要 なものが届くだろう。だけど、それをやる横田さんやボランティアスタッフの手間もたいへんなものにちがいない。
「30年も、こういう商売で食わせてもらいましたから、少しは恩返しをしたいと思うんですよ。それに、本とかそういうものは、今のお役所の予算からはなかなか周らないものですからね」

そして今、力を入れているのは、本棚を贈る運動。せっかく本を届けても、届けた先には本棚P5030163 がない。段ボールに入れたままの状態で廊下や部屋の隅に置かれ、そこから取り出して読む、という形になっている。あるいは置き場がないので段ボールから取り出せず、そのまま放置されている。
それで、地元の会社とタイアップし、木製並みの強度がありながら、使用後はリサイクルとして活用できる段ボールの本棚を開発した。それを一般の人に買ってもらい、必要なところに届ける「本棚プロジェクト」を進めている。

http://www.ayumunet.jp/?page_id=304

さらに、物の支援だけでない。今は保育士を支える活動を考えている。
「震災時から公立の保育所はそのまま避難所になった。そこで働く保育士たちは(自分も被P5030156_2 災者なのに)そのままそこで働いている。彼らの疲労はたいへんなものだ。その人たちを誰かがケアしていかないと」
そう語る横田さんは、しかし、決して悲壮ではない。むしろ活動自体を楽しんでいるようにさえ見える。
「だけど、こうした活動をすることで、(本屋である)自分の首を絞めているんですけどね」
深刻なことをさらりと言って、笑い飛ばす。
このおおらかさが、人を集め、こうした活動を実り在るものにしているのだろう。
「僕らはこの活動を3年と決めているんです。3年経っても、まだ僕らの支援が必要だというのなら、それは社会が悪い。そして3年後、僕らは日本一の図書館を造りたい。建物は公共で、中の本はお金を集めて地元の本屋から購入する。それが実現するまで頑張りますよ」

その明るさに救われた気がした。被災地に入ってからは自分たちの無力を痛感することばかりだったが、横田さんの話を聞いていると、まだまだやれることがあるかもしれない、そんな思いが沸いてくる。横田さん曰く、
「今回の震災では、被災地以外の人も傷ついている。だから、その気持ちも受け止めなければと思う」
だから、「役に立ちたい」とやってくる被災地以外の人たちを拒むことなく、本の仕分けなどの仕事を与える。そうすることで、彼らの気持ちが慰められることを知っているからだ。もしかしたら、我々のために時間を取ってくれたのも、同じ想いからだったからかもしれない。
実は横田さん自身も被災し、家屋の破損こそなかったものの、停電や断水などの被害を被った。もちろん商売的な打撃も受けている。にもかかわらず、この思いやり。優しさ。そしておおらかさ。
人はこんなにも優しくなれるんだな。
その事実に感動し、こういう人と出会えた縁に感謝しつつ、店を辞した。
これだけでも、仙台に来た甲斐がある、と思いながら。

後日、横浜会で集めた募金47,086円を全額こちらに振り込みました。本棚と本購入資金に使ってくださいというコメントを添えたので、そちらに利用してくださることと思います。
ご協力くださった横浜会のみなさんに、あらためてお礼申し上げます。

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コメント

詳細なレポートを、また、文中で当方のblogにもふれてくださり、ありがとうございました。
当日の横田さんのお話やお店の様子がリアルによみがえってきました。

投稿: 空犬 | 2011年7月22日 (金) 00時00分

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