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2010年9月

NO.104 政文堂書店(福島県福島市)

長らく更新が途絶えておりました。現在、本業を執筆中。おまけに引越しが突然決まったり、眼病を患ったりしてパソコンを2週間使えなかったり。
なので、頭がそっちに行ってしまって、なかなかこちらに向きません。すみません。

で、福島のいちおし会に行った翌朝、ふらりと立ち寄ったのがこのお店。時間があまったので駅前をふらふらしてここを見つけた。10坪くらいで、もうここで40年50年商売していそうな古びた看板、店構え。駅前の商店街で、家族経営だからなんとかやっていけている。だけど、後継者がいないので、老夫婦が辞めたら店じまいする、というような匂いがぷんぷんと漂っている。
だけど、ここいいかも、と思ったのは、店の表に飾ってある雑誌の並べ方。一番目立つ雑誌スタンドの雑誌の点数が少なく、置かれているのはNHKのテキストとか女性誌の「LEE」とか。いわゆる定番のものではなく、この店のベストなんでしょうね。それも、投げやりな感じではなく、角を揃えてきれいに陳列されている。で、定番の「週刊文春」とか「週刊新潮」は隅のスタンドにあったりして。場所が狭いから、あれもこれも置いてしまう、というのでなく、いるものだけ、正しい場所に置く、という意思が感じられたのでした。

で、入ってみると、真ん中に一列だけ奥に長い、裏表背中合わせの陳列台。あとは壁一面の棚、と、これもなつかしいような配置だ。平台には単行本とか文庫が1~2冊づつゆとりを持って面出しされている。大型書店の、これでもかという平積みの高さを見慣れていると、これはなかなか新鮮だ。しかもそれが、「一千五厘の旗」(暮しの手帖社)とかだったりするので驚きます。暮しの手帖社って、買い取りじゃなかったっけ(後で聞くと、現在は委託もやっているそうだ)。福島なので、「天地明察」は5冊くらい入っていたかな。棚はコミックとか文庫が主流。だけど、奥の棚は古本コーナーだったりして。新刊と古本といっしょに売るのは最近のトレンドだけど、地方のこんな小さな店でそれをやっているなんて。
棚自体も、こういう小さな店にありがちな、何年も前の本が売れ残って背が日焼けして、という感じではなく、ちゃんと手入れが行き届いている感じだ。

で、つい平台に面陳されていた文庫を買って、お金を払いながら「こちら、古本も置いてあるんですね」とかなんとか、店番しているおばさんに話し掛けた。そうしたら、「そちら、版元の方ですか?」と聞き返された。「いえ、実は著者で」と自己紹介すると、「そうでしたか。普通のお仕事の方には見えなかったので、どういう方かと思っていたんですよ」
それから話がはずんで私の本のこととか、経歴とか、昨今の書店状況とか、行ったばかりのさわや書店さんのこととか。年齢もやってることも違うけど、同じ本関係だし、共働きの主婦ってことでも共通する。で、いつのまにか子育ての悩みとかを人生の先輩に聞いてもらう、みたいな感じになったりしておりました。その間、たまにお客さんが来ると、「ちょっと待っててね」と言われて、おばさんがレジを終わるまで待ったりして。いや、福島のおばさん、明るくて、楽しい。それに、話好き。立ち話で4時間超え。次に予定があったのだけど、なかなか話が途切れませんでした。

でもまあ、それが出来るのも、お客さんが少なかったから。1時間にひとりかふたりというところ。平日の朝だったこともあるけど、それにしても少ない。これで大丈夫か、と思わないでもない。で、ぶしつけにも「こちらの店は持ち家ですか?」と聞いてみる。たぶん、家賃がいらないのでやっていけるんではないかという、うがったこちらの予想に反して「いえ、賃貸です」との驚きの答え。「昔に比べると苦しいけど、仕事できる間は仕事していきたい。そっちの方が張り合いがありますから」

おそらく、こちら、外商のウエートが大きいのだろう。ダンナさんが昼過ぎまで外回りだと言っていたし、昔ながらの外商とお客さんの関係が、ここでは生きていそうだ。少なくとも、いい常連さんがついているのは間違いない。私が店にいる間に訪れたあるお客さんは、陳列されたコミックを1万円分以上買って、配送の手続きをされていた。
「あの方は、実は有名な作家の方で、時々見えて、いろいろ買っていかれるんですよ」
とのこと。その人が買った本も、「あの人なら買いそうだ」とおばさんが予想して仕入れていたものだそうだ。ほかにも、毎週「週刊新潮」を買いに訪ねてくるおばあさんがいて「あの人、すごいインテリですよ。お元気ですしね。ああいう人になりたい、と私も思うんですよ」
そんな風に、お客さんと顔の見えるつきあいをしているのだ。で、身の丈にあった商売をする。無理な仕入れはしない。そんな昔ながらの本屋さんが、ちゃんと存在しているのは嬉しかった。
にしても、「一銭五厘の旗」、渋い本が並んでますね、と話をしたら、
「営業に見えた「暮しの手帖社」の方が感じよかったので、1冊入れてみました」
とのこと。ほかにも岩波書店の営業さんも来られたとか。
えっ、こんな小さな店にも、東京から営業マンが周ってくるの?というのは驚きだった。
「暮しの手帖社は今年からだって言ってましたねえ」
いずれにしろ、黙っていても注文が入る時代じゃないってことなんでしょう。経費節減で営業部を縮小したり、外回りを減らしたりする版元も多いけど、これだけ点数が多いと本も目立たない。営業マンの力が大事なのは、昔と変わらないんだろうな、と思ったことでした。

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