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No.17いまじん碧南店(愛知県碧南市)

さて、今日からはまた遠出する。友人の和美が再び車を出してくれることになった。
碧南、知立、荒尾。
Img_0428 同じ愛知県内、三河までは行かないが、ふたりとも初めていくところばかり。まったく見当がつかない。和美の車にはカーナビが搭載されていないので、地図を見ながらの旅。地図の読めない女にして猛烈な方向音痴の私、碧野がナビだから、心細いことこのうえない。
もっとも、和美はちゃんと前日に予習をしていてくれたので、大丈夫のはずだったんだけど、やられました。国道23号線。和泉インターチェンジの標識がない。あとでわかったのは、工事中で標識が隠れていたんだね。ちょっとひどいんじゃないの。みんなカーナビつけているから大丈夫だと思っているんだろうか。だいぶ先まで行って引き返し、適当なところで高速降りて、4人ばかりに道を尋ねてようやく辿り着きました、いまじん碧南店。

Img_0430 そんなしんどい思いをしても、ここには行った甲斐がありました。
磯部雅弘店長。この方ともうひとり、今日はお休みだった杉浦智世さんのおふたりが、フリーペーパーに協力してくださった、そのお礼をしたかったというのが来訪の一番の目的だったけど、それ以上に、磯部店長のお話はいろいろ勉強になりました。これだけでも、今回の名古屋営業に来た甲斐がある、と思ったくらいだ。
お店は一見、普通の郊外店。170坪の書籍スペースに50坪のCD売り場を併設。ファミリーや学生が多く集まりそうな店。
1.仕事で気をつけていらっしゃることは?
データをあてにしない、ということですね。自分たちの目で見て、装丁力とか帯のコピーとかでひらめいたものを平台で展開するようにしています。
それから、お客様の言葉に耳を傾けるということですね。たとえば雑誌などの場合、女性のお客さんに聞かれるので増やしたものはたびたびあります。思っている以上に女性のお客様は「ここにある」ということがわかると口コミで伝わるようですね。
もっとも、取次ぎの数字は2から3に増えることはあっても、2から10ということはなかなかないんですね。そういう時は、2,3ヶ月黙ってこうしてくれ、と伝えます。それで数字がだんだん上がっていく。
Img_0434_2 僕は3ヶ月か4ヶ月に1度は東京の取次ぎの担当者に、直接交渉に行くんです。電話のやり取りだけでは姿が見えないし、営業さん経由ではなかなか聞いてもらえない。継続してやっているので、いまでは東京に行くと「ようこそ、今日は何があるんですか?」と言ってもらえますよ(笑)。
もっとも10ある案件のうち増やしてくれというのは、せいぜい2か3。あとは減らしてくれ、というものですね。それで返品率が下がっているから聞いてもらえるんだと思っています。
僕は数字は作るものだと思っているんです。ただ送られてくるものを受け取るのではなく、いらないものについては「これは不要です」と言わなければ、と思います。僕はそれを非常に多く言う。圧倒的にそっちの方が多いのです。
最近では商品が増えて、たとえば年末になると年賀状の本などすごく多くて、お客さんは選ぶのに苦労している。出た商品のすべてが置いてあるのがいい本屋かと言うと、そうではない。お客さまは4つか5つ選択肢があればそれでいいんだと思うのです。
うちは狭いというのもあるけど、自分の中でベストと決めたものを棚に2種類置くというようにしています。いらないものはおかない。たとえば岩波新書は注文以外、入れない。人文専門書も置かない。無理なものはごめんなさい、としている。だから、お客様の上2割とした2割は、ここではまかないきれない。専門書とかを必要とするような上2割の方は無視するしかない。
Img_0433 あと気をつけているのは、レジ前の商品を大事にするこということです。本屋は商品に目を向けさせ、手にとってもらうことが大事ですから。今展開しているのは手相の本。実用書の方に置いてあったのですが、去年から異常な動き方をした。それでレジ前に持ってきました。占いの中でも手相は男女問わずいろんな年齢の方に合っているようですね。
2.印象に残る営業マンは?
日販の吉島さんですね。今は首都圏営業のトップになられた方なんですが、この地区に赴任された時、名古屋の本屋に直に足を運ばれた。課長ひとり連れて、土曜半日使って周られるんです。やっぱりそういうことをされる方だと説得力がありますね。
最近では版元の方でも、店を見ずにデータだけでものを言われる方が多いですね。だけど、現場を見て、今の時期にこれを入れたら駄目だ、とか、これの隣にこれを置いた方が いいとか、見た感想をこちらは言って貰いたいんです。現場に足を運んで、これとこれは不要、これを返してこれを置いてくれ、と言うならわかりますが、ただ置いてくれというのは駄目ですね。
今は出張費も削られて、東京から来た人はなかなかここまでは回れないみたいですけど、営業さんはいろいろ情報も持っていますし、こちらもアドバイスしてほしいんです。
僕はここまでみえる営業さんには、熱意があればあなたに棚をあげるよ、というんです。まあ、ワンスパン分くらいなら空けられますからね。それで、あなたがベストと思う品を置いてみて、というんです。それで、実際に並べると、なかなか売り上げは思っているのとイコールにはならない、そういうこともわかってほしいんです。だけど、営業さんも転勤が多くて、やり始めたらすぐに担当が変わったりするので、なかなか定着はしないんですけど。
3.意識している書店は?
東京に行くと寄るようにしているのは、立川のオリオン書房さん。高田専務と昔から親しくさせていただいているのと、本の並びをチェックさせていただいています。
それから、上野の明正堂書店。それほど広くないけれど、こちらは全国で一番売った文庫というのをたびたび出している。千冊とか売ることもある。すごく参考になります。
あとは東京駅の丸善。こちらは各出版社が商品を展示しているコーナーがあるので、その時、推している商品、売りが何かがわかるので。
Img_0436_2 4.接客していてよかった、と思うことは?
お客様に、普通にありがとう、と言われるときですね。あたりまえのことですけど、他人を喜ばせるような人間でありたい。何かの本で、子供を教育する時、「ありがとう」と言え、とは教えるけれど、「ありがとう」と自分が言われることをやるのが大事だと書いてあったんです。なるほどなあ、と思いました。「ありがとう」と言われるような行動は、自分で意識しないとできない、それができる人間になるのがベストだ、と。その行動にマニュアルはない。それを考えることが大事なんですね。
本屋の場合、たとえばお客様に本を尋ねられて、1冊しかない本を棚から出してくる。すると「よく探せるね」と言われる。「ここにありますよ」「すごいねえ、ありがとう」そういうやりとりが自然にできるようでありたい。
これくらいの規模だったら、どこに何があるか、全部把握できる。たとえば、自分が外出しているとき、留守番しているバイトの子から問い合わせが入る。「その本だったら、レジから2番目の棚の上から3段目になければ、置いていない。取り寄せになる」と、即座に言えるわけなんです。これ以上大きかったら、それは無理ですね。これくらいが限界ですけど。
Img_0431_2 5.これからやってみたいことは?
ささやかな望みなんですけど、5年後10年後もこの店を継続させたい。この規模の店が生き残るのが今は一番難しいですから。でも、都心の大型店だけでなく、地域には身近に利用できる店も必要だと思うんです。子供たちなどは、身近なお店が大事ですからね。
もっと大きな店に移らないかと言われることもあるんですが、このくらいの店で管理しているのが僕は一番楽しい。あらゆるジャンルが見られますからね。一部では面白くない。大型店に移りたいとはまったく思わないですよ。

いらないものは置かない。目から鱗の言葉でした。これだけ出版点数が多くなると、本屋もいらないものを断る勇気が必要だ。いろいろ置くことよりも、ある程度選択を狭めて、選びやすくすることが逆にサービス。上2割のお客様はうちでは相手にしない。
地方の中規模の書店が生き残るためには、そういう決断が必要なのだろう。わざわざ東京の取次ぎまで出掛けるその行動力にも驚くが、それで話が聞いてもらえるのは、やっぱりそれで返品率が改善されているからなのだ。本屋の利益を上げるというと、ついヒット作を作るということに目を向けがちだが、実は返品率を下げることも大事なのである。むしろそういう地道な努力の方が、継続的かつ効果的なのかもしれない。

にしても、5年後、10年後もあり続けてほしいお店です。そんな風に地道に努力しているお店が続けられないとしたら、やっぱり今の状況はおかしい。
磯部店長は「自分が子供だった時のことを考えると、お小遣いを握り締めて都会の大型書店に行く、というイメージがわかないんです」と言う。そうなのだ。行動範囲の狭い子供にとって、身近な本屋というのはとても大事だ。自分自身もそうだったが、身近な店に置いてあった本が、将来のその子の趣味にも影響することだってある。都会の大型書店はもちろん素敵だ。だけど、身近な地元のお店だって大事だ。磯部店長はじめスタッフが頑張っているこのいまじん碧南店が、いつまでも続くように、と願ってやまない。

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